第1話 山田ではなく山由です!
短編作品を長編に書き下ろします。短編の時と若干変わっている部分はあります。
短編の時の魔王様とのエンディングエピソードは当分出て来ません……それも変わるかもですが、出てもストーリーの後半を予定しています。
下の☆☆☆☆☆から評価いただけたら幸いです。
女子高生 山由 花子
死神に名前を間違えられ死亡する。何よそれ!?
いつもの学校の帰り道、神社の前を通りかかった時のことだ。
後ろで何やら奇妙な予感めいたものを感じた。ん? 振り向いた先にはトラックのフロントガラスが視界いっぱいに広がっていた。
あっ! ガンッという今まで受けたことが無い強い衝撃を頭に受けた。痛いとかは感じない。
ただただ、大きな音と視界が大きく揺れる、その感覚。それだけだった。
あぁ、そうだ。フロントガラスの向こうは無人だったな。
――――
はっ!
ここは? 見渡す限りの青い空。
いやー遠くまで見えるな。あれは、富士山かな、一度は登ってみたかったんだよなぁ。
うん、きっと明日もいい天気だよ。
……はぁ、ごまかせないよ。何で街中から富士山が見えるのさ。何で足が地面について無いのさ。あぁあ、足元みたら見えちゃったよ。横倒しになったトラック。
「嫌だな、見に行きたくないしな。これから、どうしよう。何か天使のような人が迎えに来てくれるのかな?」
「はい。天使でなく死神のような者ですが」
「そうなのですねー、じゃぁ待って……え! えぇっと、どちら様で?」
急に背後から声が聞こえて、びっくりして振り向くと、黒服の普通の青年が立っていましたよ。
ん、ん? さっき変なことを言ったような?
「初めまして、わたくし死神をしておりまして。名前はありませんので悪しからず」
「は、はぁー」
「では、早速ですが、身元を確認させていただきますね。まずお名前ですが、山田花子さんで間違いないですか?」
「いえ、違いますが」
「…………」
「へ? いやいや。変な勧誘とか売りつけたりしませよ? あなたさまは既に死んでいらっしゃいます。今更名前を偽っても仕方がないのです。だから、本名は山田花子さんですよね?」
「だから、違いますって。私は山由 花子です」
「……はい? で、では生年月日ですが……90歳? ですか??」
「ちょっと! 喧嘩売っているの!? 何で私が90歳よ。高校一年生で15歳よ! って言うか、あんた、何を見ながら言っているのよ。ちょっと見せなさい!!」
「あ、あ、ちょ、ちょと、取らないでくださいよ。乱暴だなー」
「…………あ、あんた。まさか、これ見ながら言っているの?」
「はい、そうですよ。亡くなる予定の方が記載されている指示書です。わたくしたち死神は、この指示書に従って、毎日、亡くなる方を決めているのです」
胸を張って答える黒服の男。
ど、どうしよう。たぶんこの人、馬鹿だわ。
でも話出来る人は、この人しか居ないし、私が頑張るしか無い!
「えぇっと死神さん、ここに書いているのは例文です。良いですか? 名前欄の『山田 花子』というのはあくまでも、このように名前を書きましょうねっていう、あくまでも例です。生年月日もです。住所は、えっと、たぶん、そこの神社の住所ですね。要するに、これは書き方の例です」
「霊?」
「ちっがう! 『たとえ』の方の例だ! で、あなたはこれが正しい指示書と思って、名前も生年月日も違う私を死なせてしまったの?」
「え? えぇぇ!! 違うんですか! 山田さん!!」
「だから、山田じゃあ無いって! 山に由と書いて、やまよしだって。漢字は似ているけど、読み方は全然違うでしょうが! そんなの事よりも、私は生き返らせるんでしょうね!」
「えぇぇ!! いっやー。あれーー、おっかしいな??」
あぁぁ。何だか回答を聞く前に分かってしまった気がしてきたよ。だって横倒しになったトラックの下にいるよ私。これで蘇ったらゾンビもびっくりだよね。
あぁーあ。もう警察まで来ちゃってるよ。今から甦るのって無理がありそうなんだけど。
「コラ!! 貴様は何をチンタラやっているんだ! とっとと魂を回収してこんかい! 悪霊になったら、どうすんじゃ!」
うぉっと。ヒョウ柄のワンピを着た。ちょっと怖い系のお姉さまがいらっしゃいましたが……
「あ、あ、そ、そ……」
あぁぁ、黒服の死神さん、こりゃ駄目だわ、完全にテンパっているよ。
しかし、私もこのままでは困る。何とか生き返れないか確認しないと。
「あ、あのすみません。私、山由 花子といいます。それで、おそらくですが、この黒服の方、この例文の指示書を見て、似たような漢字の私を間違えて死なせたようなのですが、私って甦れますか?」
「あ? どれ、見せてみろ! あぁん!! 貴様は馬鹿か! これは書式の記載例だろうが! 一枚目は例で二枚目以降が本当の指示書だって教えただろうが!」
怒鳴り散らしながらも黒服の男を蹴付けていらっしゃいますが、えっと、それより私は?
「はぁはぁはぁ。ったく! で、すまんな。やまよしさんだっけ……えぇっとだな」
ペラペラめくる紙の音、しかし、そんなに枚数は無いですよ。いや、もう一度初めから見直していますが、見直す程の枚数は無いですって。
はい。わかりましたよ。無いんですよね。私の名前。
「と、とにかく此処では駄目だ。一旦、霊界に一緒に行ってもらって、そこで話そう。な」
「え? うん、まぁ良いけど」
なんで此処では駄目なのか気にはなったが、焦っているようだから、とりあえず従うことにした。普段なら危ないから、簡単には付いていかないけどさ。この状態だから素直に従うしかないよね。
私は、お姉さんに手をつながれて、空高く昇って行った。
お、目の前に雲がある。大きな雲だなって思っていると、その雲目掛けて飛んでいるようだ。
ちょっと怖いけど大丈夫なんだよね?
お姉さんに連れられて雲の中に入ると、スポって感じで雲を突き抜け、建物が立ち並ぶ空中都市のような場所に出た。龍の巣だったのかな? なんか、アニメで見たことがあるような気もするが、霊界って言っていたから違うんだね。手の長いロボットも歩いて居ないよね。
※ 作者からのお願い
「面白い」「続き読みたい」など思った方は、ぜひログインしてブックマークと下の☆☆☆☆☆から評価いただけたら幸いです。よろしくお願いします!
つまらないと思った方は、☆一つでも評価つけてくれると勉強になりますので、よろしくお願いします。
毎日更新できるように、頑張ります。
よかったら、他の作品も見に来てくださいね。