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その頃:四皇位の緊急招集

久々の魔族側のお話です。

詰め込み過ぎて文章が長くなっちゃいました‥‥‥。

ツバキが〝支配の呪い〟を解除して、一時間ほど経ったころ、魔王国、リーブヴェンでは四皇位たちが円卓の間に集まっていた。


「おい、スス。俺たちを集めた理由を聞かせてもらおうか」

長い沈黙に耐えかねて創建の皇、ハイナが声を発する。

「皆んな忙しいのに急に招集して申し訳ないんだけど、今回ばかりは僕一人の手には余るんだ」

「ススがそこまで言うなんて珍しいわね」

申し訳なさ気な支配の皇、ススメートがいう言葉に対して大輪の皇、ローズマリアが驚いた表情で言う。

それもそのはずで、基本的にススメートは自分の管轄内で起こった仕事や問題などは他の皇やその部下に頼らずに全て自らの部下と共にこなすし、解決させる。

確実に他の皇を頼らなくてはいけない事案が出てくるはずなのに。

だからこそススメートがここまで言うのはほとんどないのだ。


「それだけ重大なんでしょう。話していただけますか?」

驚いているローズマリアの横に座っていた鮮血の皇、ヨハンが冷静に言い、ススメートに説明するように促した。

「もちろん。じゃあ、まずは確認なんだけど、僕が操る支配人は知ってるよね」

「えぇ」

「他の皆んなは?」

ヨハンに促されて話し始めたススメートは手始めに支配の皇という名前の由来にもなっている支配された人間のことについて確認する。

「知ってるぞ」

「私も存じています」

三人の返事を聞き、ススメートは本題に入るために手を机で組み、深刻そうな声で話し始めた。


「実はその支配人が倒されて、僕のかけた〝支配の呪い〟も解かれたみたいなんだ」

重々しく言ったその言葉に聞いていた三人の表情に緊張が走った。

「おい、それは本当の話なんだろうな」

「本当だよ。僕も驚いているんだ。まさか解かれるなんて思っていなかったからね」

ハイナの質問に淡々とススメートは答える。

「あり得ないわ」

「はい、信じられません。スス、確か支配人は各国にいだはずですが、どの国ですか?」

驚きの情報に戸惑いながらも、状況を整理したいヨハンは服のポケットから紙とペンを取り出しつつ、ススメートに質問する。


「えっと、ナズラタン王国だったよ」

「待ってください。確か勇者が現れた可能性のある国でしたよね。まさか、勇者が‥‥?」

「それはないと思う」

ヨハンの緊張に満ちた声で発した言葉に、ススメートは否定する。

「言い切るのね。何か根拠でも?」

「根拠は力だな!勇者にしては力が弱いと判断したんだろ?はははっ、俺にチャンスをくれたんだな!」

「黙ってなさい、この脳筋バカ」

「あぁ?なんだよ、この石頭クソ眼鏡」

ローズマリアの質問にハイナが大声で自信満々に答える。

それに苛つきを覚えたヨハンが下劣な者を見る目でみながら、ハイナに言い放つ。

ハイナもそれに対して言い返すものだから今まで緊張感があった円卓の間の雰囲気は緩み切っていた。


「二人はもう良いわ。で、スス、根拠はあるの?」

ハイナとヨハンの言い合いを呆れ顔で見ていたローズマリアは諦めたようにススメートにもう一度質問をした。

「ううん。根拠らしい根拠はないんだ」

「じゃあ自信なのかしら?」

「自信って言えばそうかな。アミュ家は代々支配の皇の役職についてきたけど、その延長線上で勇者の力の研究をしてきたんだ」

「では、エルヴアルトを倒した勇者の力も?」

「様をつけろ様を、エルヴアルト様だ」

「なぜです?あの無能魔王につける敬称などありません」

「てめぇ!」

「はいはい、いちいち喧嘩しないで。うるさいわ」

何かにつけて喧嘩を始めようとする二人を止めると、ハイナとヨハンは互いに睨み合いながら息を吐きつつ、ススメートの方を向いた。


「続けるね。ヨハンが言ったように前魔王様を倒した勇者の力も研究していたよ。それであまり詳しくは言えないんだけど研究を進めていくうちに勇者の弱点となり得る力があることがわかったんだ」

「大発見じゃない。一体なんなの?」

ススメートの言葉のあまりの衝撃さに今まで睨み合っていたハイナとヨハンが睨み合いを止め、こっちを見ていた。

それは魔王となることを掲げている二人にとっては有益な情報となり得るからだ。

ススメートの言葉を聞き取り、理解し、実行できたものが魔王の座を手に入れる。

それだけアミュ家が代々秘密裏に進めてきた情報は価値があるのだ。


「勇者の力だよ。互いに力が反発しあって相殺されるんだ。だから勇者は何人も生み出されるのに一人しか魔王討伐のパーティにいないんだと思う」

説明をするススメートの言葉を一言一句聞き逃すまいと、ペンを片手にメモを取っていく。

「ってことは理論上、支配人は人類最強と謳われる勇者でも解除は不可能ってことよね」

「そう。それに支配人には魔王の力も混ぜているから強力な魔物でさえ、倒せないだろうね」

「それもう世界最強じゃないの‥‥‥」

反則のような支配人の力に呆れた様子でローズマリアは息を吐いた。


「まて、それを使えばエルヴアルト様も崩御されずにすんだじゃねえのか?」

抗議するような目でハイナがススメートを見つめる。

「そんな目で見ないで。僕だって前魔王様のために完璧な支配人ができていたなら使ったよ。支配人が現在の完璧な状態に至るには前魔王様を討った勇者ヤナセの力が必要だったんだ」

「それでも‥‥完璧じゃなくても、もし、支配人を使ってくれていればエルヴアルト様は‥‥叔父上は死なずにすんだかもしれないだろ‥‥」

いつもの威勢の良さはなく、大きな図体を縮こませて悲しみを堪えるように静かに呟いた。


実は前魔王エルヴアルト・ガレットはハイナの父の兄に当たり、魔王としての尊敬もあったが、それ以上に叔父としての姿に憧れていた。

なんでも完璧にこなし、性格も誠実そのもの。

魔王となってからも表では威厳のある魔王像そのものを体現しようとして見えないところで努力をしていたことも、裏では情けない自分に悔いていたことも知っている。

けど、それが返って傍若無人な態度だと、政策だと、捉えらていたことに怒りが抑えられなかった。

何も知らないのに好き勝手言う、ヨハンが憎くて憎くて仕方がなかった。


エルヴアルトの死と共に解散するように世代交代を行なった四皇位の座はハイナにとっては絶好の場所だった。

それは憎きヨハンを、思いを理解しなかった、ミルヴインガ家を絶望に落とすことができると思ったから。

魔王の座もそうだ。

何がなんとしてでも手に入れ、ヨハンに少なからずの傷跡を残してやりたいと考えているのだ。


「ハイナ、ごめん‥‥。謝ってもどうもならないことは分かっているけど」

弱々しいヨハンを見てススメートは申し訳なさそうに俯いた。

ススメートだって前魔王を救えなかったことは自らの心に強い後悔を抱かせている。

この場にいるヨハン以外の面々にはその後悔はあるのだ。

終わったことだと割り切れないのは現在、魔王国最高の地位を持つものとしては甘いことだと分かっていても、魔族だって、人間のように嘆き悲しむ。

「でも、これだけは知っておいて欲しい。前魔王様の二の舞に出さないため僕はこの研究を進すめたんだ。もう誰も傷つかないように」

俯いていたススメートは覚悟を持った目でハイナを見つめた。

「スス‥‥‥すまない。お前の気持ちを考えないで、俺は‥‥‥俺は‥‥!」

ススメートのその目を見て、ハイナは何かに触発されたように嗚咽を混じらせた声でハイナは縋り付くようにススメートに謝る。

その光景にローズマリアは母のような眼差しで見つめ、ヨハンは顔を顰めて見つめていた。


「さ、話し合いを再開させましょう」

ハイナが大分落ち着いたタイミングでそう発した。

「うん。と言っても、大方話し終えたんだけど。まぁ、結論をいうと〝支配の呪い〟は解呪方法を知っている僕と僕の側近たちにしか解けないんだよね」

「待ってください。それでは一体誰が解いたというのですか?ススは最も解呪した可能性のある側近たちとは思っていないようですし」

紙に今までの状況を整理していたヨハンが手を止めて、ススメートに確認するため質問をした。


ススメートには沢山の部下がいるが、側近と呼べるものは二人のみだ。

一人はススメートの右腕と称させる、ユリウス。

もう一人はススメートの左腕と称される、ラリウス。

ちなみにこの二人、双子の兄弟である。

「もちろん。僕の側近たちはそんなことはしないよ。それに、彼らには僕の側にずっていたから、アリバイは完璧さ」

笑いながらススメートは側近の無実を主張する。

「じゃあ、誰が解呪したっていうのよ」

「さぁね。ただ一つ言えるのは解いた人物は魔王と勇者の力を持っている可能性があるってことかな」

「それはありえないでしょう。魔王と勇者の力を同時に保有することができるわけありませんよ」

ヨハンはススメートの推測に訝しげに聞きながら、否定する。


「そもそもなんで魔王と勇者の二つの力を持っていたら呪いが解けんだよ。勇者の力が相殺されるなら、魔王の力も原理的にはそうだろ」

ハイナは不思議そうにススメートを見つめながら聞く。

「原理的にはね。ここからは僕の推測になるけど、勇者の力と魔王の力は根源は似ているけど、別物だと思うんだよね」

「それはそうだ。勇者は光で魔王は闇っていう別もんだろ」

ススメートはハイナの言葉に苦笑いを浮かべている。


「あなたの頭では理解できないでしょうから、ちゃちゃを入れないで大人しく聞きなさい」

いちいちハイナの意見に否定的な発言をするヨハンにローズマリアは流石にやりすぎ、と言いたそうな顔をしている。

「はぁっ?テメェだって理解できてねぇんだろ。人に言えた義理かよ」

「ですから、私は理解するためにススの話を聞いているのでしょう?いやはや、そんなことも理解できないとは‥‥四皇位としてどうなんでしょうね」

「ヨハン!それは流石に言い過ぎよ。確かに、エルヴアルト様の政策はあなたの家系にとってしたら、侮辱されたも同然だったでしょう。だから、あなたの言動も大目に見てきたし、ハイナも悪いと判断したから何も言わないようにしてたわ。でもね、今日のあなたの言動は度を超えすぎてる。あなたが恨むべき相手は前魔王エルヴアルト様であって、ハイナではないわ。それに、四皇位という地位はただの世襲制ではないことはあなたも知っているでしょう?」

怒りを含んだ声でローズマリアはヨハンに注意をする。

その言葉にヨハンは口を噤んだ。


そう、ローズマリアの言うとおりこの四皇位は単なる世襲制ではない。

いや、同じ家系の血を引くものが座を引き継ぐという意味では世襲制なのだが‥‥。

次代の四皇位を決定する際、四皇位の役割を担う四家には時期当主選定と呼ばれる選定会が行われる。

その参加資格は四皇位の血筋を引く者全員にある。

選定内容はその家によって異なるが、一つ共通しているのは最も優秀な成績を納めたものが、次代の四皇位となると言うことだ。

つまり、いまこの場にいる四人全員が有能だと言える。


創建の皇のハイナはガレット家の直系で父から引き継いでいるが、それ以外の皇たちは従姉妹、外戚の者、側室生まれの者たちだ。

だからこそ、四皇位たちは民により信頼されている。

家柄は少なからず関係してくるが、それでも能力のあるものを登用しているからだ。


「‥‥そうですね。今回に限っては私の発言を撤回しましょう。四皇位の侮辱はそれぞれの家系を侮辱することになりますし、それは我々一族がされたことと同じですから」

ローズマリアの言葉にヨハンはしばらく考えた後、不貞腐れたような表情をして弁解すると、口を噤んだ。

「はいはい、空気が悪いね。僕が伝えたいことはみんなに話せたし。これ以上の詳細は書面にして渡すから。今日はお開きにしようね」

周囲の空気感が明らかに重々しくなっていることに気がつくとススメートは空気感に似つかわしくないのんびりとした声で、半ば強引にその場をしめた。


ここからは余談だが、書面で渡すことになり、ススメートの部下が悲鳴を上げながら作成することになった‥‥‥。

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