解除
「まぁ、それは良い。話を戻すが、この冒険者、あぁ~、ルイスの呪いについては解除可能なんだよな」
ギルマスは未だ横たわっている、ルイスを見ながら俺に問いかける。
「はい。鑑定では解除可能となってましたし、多分大丈夫だと思います」
「今から解除することは可能か?」
「それは‥‥‥」
解除出来るか、出来ないか、と言われれば前者だ。
けど、解除の方法については創造魔法を使うことが必須になるはず。
だって、俺はそれ以外に解除の方法を知らない。
聖属性魔法は人の目がある中では使いたくない。
それを鑑みれば最善の策だと思える。
けど、絶対にできるか、と言われれば正直自信はないんだよな。
でもそんなことを言ってられる状況でもないし。
「大丈夫です。けど、今からの事は他言無用でお願いします」
「分かった、約束しよう」
俺の言葉にギルマスやハンギュさんは安堵した表情を浮かべると、同時に緊張した面持ちになる。
その顔にもし、期待に応えられなかったらどうしようという感情が心の中で渦巻く。
「ツバキさん、肩の力を抜いてください。あなたは今から何百、何千という年月をかけても誰にも成し遂げることができなかったことを実行しようとしているんです。誰も失敗してもあなたを咎めたりはしません」
「アレンさん‥‥‥ありがとうございます」
アレンさんは俺の肩に手を置き、ゆっくりと俺を落ち着かせるように励ましてくれた。
その言葉に心に渦巻いていた不安の感情がスッと消えていったような気がした。
毒消に付与した時に想像した魔法をもう一度想像する。
一度創造した魔法は、頭の中に術式がある程度構築され終わっているので創造して使うのは簡単だ。
頭の中に万能治癒の術式が作り上がっているのだから。
「‥‥万能治癒」
早く消えるように、後遺症が何も残らないように願いながら魔法をかける。
一度魔法での治療を止め、鑑定してみると〝支配の呪い〟の項目が完全に消えていた。
それを確認した瞬間、俺は緊張していたのだろう、糸が切れたようにへたり込んでしまった。
「き、消えました。‥‥‥呪い‥‥消えました」
「よくやった!出来したぞ、ツバキ」
「やりましたね、ツバキさん」
「ツバキくん、きみは一体何者なんだ」
消えた事を辿々しく伝えると、ギルマスやアレンさんはへたり込んでいる俺に駆け寄り、頭を撫でたり、背中を摩ってくれたりする。
が、その行動はハンギュさんの言葉で止まった。
俺の正体を確かめようとするその質問に、周囲の空気が重くなる。
「ツバキくん、言いたくないか?」
ハンギュさんの言葉に俺は小さく頷く。
「そうだよな。だがきみにもし、重大な秘密を隠していると分かった場合は最悪冒険者免許の剥奪になるということは分かっているか?」
「でも、冒険者の身の上を詮索するのは暗黙の了解に反しますよね」
「それは出生に関わることや、今までの経歴をお互いに詮索するな、という決まりだ。だが、その秘密がギルドだけでなく、国家を延いては世界中を巻き込む可能性だって場合もある。今回はそれに該当すると俺が判断した、独断だがな」
アレンさんの質問に対してハンギュさんはギルドの暗黙の了解となっている冒険者同士の詮索不可についての重要な決まりであろうことを話す。
ハンギュさんの言っていることはきっと、冒険者ギルドや国のためを思う発言なんだろう。
ギルドは国家に属さないが、全てにおいて協力しないわけではない、ギルドがピンチの時は、領主や国の騎士を使うし、逆に国家、街がピンチの時は冒険者たちが助ける。
それが分かっているら、余計に自分の考えが正解かと迷ってしまう。
ある程度の秘密を話すか、それとも全て話すか、‥‥大人しく冒険者を辞めるか。
三つに一つだ。
「ハンギュ、お前はツバキの能力が、国家を脅やかすと思うのか?」
「いいや、逆だ。ツバキくんの力は国家にとって有用だろう。俺が懸念しているのはツバキくんの力が悪用されないかだよ」
「だったら、冒険者免許の剥奪は駄目じゃないですか?国はギルドには手出しできない。ギルド所属という肩書きが、ツバキさんを守る盾になりますよね」
「確かに、盾にはなるだろう。だが、国に目をつけられた以上はギルドへの所属条件の一部が欠落する。最低でも、活動の幅を大きく制限されるだろうな」
ハンギュさんやアレンさん、それにギルマスが俺の話を俺が口を挟む隙もなく話し合い続ける。
当の本人が置いてけぼりって‥‥‥‥。
「あの、所属条件の欠落ってなんですか?」
「あ、済まない。ツバキくんに一番聞かせなければいけないのにな。で、所属条件の欠落の説明だが、まず冒険者ギルドには所属するため三つの条件があるのは知ってるか?」
ハンギュさんの言葉に俺は首を傾げる。
登録してもらった時にそんな説明受けたっけ?
「いいえ」
「そうか。‥‥ザフレ、ちゃんと説明しろよな」
「仕方ないだろ。判別の鏡に何も反応なかったら、大丈夫だと判断出来たし。説明する必要がなかったんだよ」
ハンギュさんの呆れた声にギルマスは頭を掻きながら答える。
「判断の鏡ってなんですか?」
「冒険者登録の際に手を触れた鏡がありますよね。その鏡のことを判断の鏡というそうですよ」
ハンギュさんとギルマスに変わって隣に座っていたアレンさんが答えてくれた。
「判断の鏡には三つの所属条件が欠落すると、あの鏡に何が欠落しているのかと表示されるんだよ」
「へぇ~」
「本当に知らなかったのか‥‥。まぁ、いい。所属条件は三つあると言ったよな」
ハンギュさんの確認に俺は同意するように頷く。
「その条件の一つ目が過去に冒険者資格を剥奪されていないか。二つ目が年齢が十歳以上であるか。三つ目が王侯貴族又は王侯貴族の深い関わりがないか、国家に悪用されないための術を持っているか。この三つを満たしていれば、冒険者にはなれる。逆に言えば、この三つの中一つでも欠けたら冒険者資格の剥奪されることもあるという事だ」
「今の俺が欠けてしまいそうなのは、二つ目の国家に悪用されないための術を持っているか、ですか」
このまま進めば失ってしまうであろう条件を確認する。
もし俺の秘密を話さず、それでいて、冒険者として活動できるのならばそれが一番理想的だ。
だから、その方法が少なからずあるのならそれを見つけたい。
「あぁ。その条件は高ランク冒険者にのみ適用されるんだが、ツバキくんは正直、高ランク冒険者の粋ですら超えてるからな」
「それはそうだ。二つしかランク上げられなかったからな。各支部のギルドマスターの権限の限界を感じた」
ハンギュさんの言葉にギルマスは腕を組みしみじみと言う。
「分かるぞ、その気持ち。ギルドマスターの職に就いていると何年かに一度とんでもない逸材が現れるのに、毎回絶対に実力に見合っていないであろう、ランクしかやれないからな。あれは何か申し訳ない」
「本当に。俺たちが逸材を潰しているようで、どうも、な」
ギルドマスターの地位にいる二人はお互いの思いに共感し合うように話を進めていく。
アレンさんと俺はその様子に呆れと驚きが混じった感情になった。
「おほっん、お二人とも本題からそれていますよ」
「おっと、済まない。つい盛り上がってしまった」
止まらない二人のギルドマスタートークにアレンさんが流石に痺れを切らし声をかける。
声をかけられたハンギュさんとギルマスは話を止め、俺たちの方を向いた。
「話を戻すが、国家に悪用されないための術を持っているか。ただ、今のきみではこの条件を満たすことが出来ないだろう」
「術というのは、具体的にどんなもの何ですか?」
「そうだな。簡単に言えば後ろ盾だ、ギルドは国家に属しないが、一部例外が存在していてな、それがギルド認定国家だ」
面白かったら、ブクマ、いいね、お願いします




