四皇位が一皇②
「あ、すみません。ただツバキさんの鑑定能力はとても高位のものだと思います。彼に何があったのか、それを調べるには最も最適だと思いまして。もちろん、単に提案なので断ってもらっても大丈夫ですよ」
「ルイスさん、それは本当ですか。ぜひ、えっとツバキさん、協力して下さい」
アレンさんの言葉を聞き、シリアンさんは俺の方を向いて切実そうに頭を下げた。
どうするべきなんだろうか、正直なところ面倒ごとには関わりたくないし、俺の鑑定が周りと違って色んなことを知れるこは既に俺の鑑定結果を聞いた人は知っている。
もしかしたら、何か加護を得ているのではないか、と想像をするのも容易にかもしれない。
そうなったら自分の正体がバレる可能性だってないわけではない。
このガジリスクさんを助けた時も、秘密の保持者をアレンさんだけに絞ったりもした。
まぁ、鑑定なら二、三回、人前で使っているし大丈夫だろうけど用心に越したことはないのだ。
だけど、このまま俺がなんの鑑定もせず断ってしまったら分かるはずだった事実をみすみす手放すことにもなりかねない。
それは嫌だ。
後悔するくらいなら、今助けた方が良いはずだ。
何度も苦悩して、結局出る答えはいつも誰かを助けるという選択肢ばかりだな。
だけど、それが今は最善なのかもしれない。
「分かりました。協力させていただきます」
「ありがとうございます!早速こちらへ」
俺の返事に顔を明るくさせると、アレンさんは手でくるように指示した。
その指示についていくと、争いがあった場所とは思えないほどの簡易的だが、立派なテントが立っていた。
その中に入ると、何人もの冒険者たちの中心に一人の男の人が横たわっていた。
どんどんと近づいていくと、確かに俺が結果を作ってぐったりとさせてしまった冒険者だ。
攻撃の威力自体があまり強くなかったことが幸いしたのか、それとも別の理由かは知るよしもないけれど、とりあえず無事でよかった。
「ツバキさん、この方の鑑定をお願いします」
アレンさんの声に頷くと、周りにいた冒険者が静かに後退りをする。
俺が鑑定するのに他の結果が入らないように配慮してくれたのだろう。
そんな行為に感謝しながら鑑定を発動させる。
「‥‥‥っ!」
今までにないほどの情報量が頭の中に入ってくる。
そもそも今まで鑑定は結果が目の前に現れるものだったのに今回はなぜか頭の中で情報が現れた。
俺の頭が許容できる範囲ギリギリで収まった情報を整理する。
整理し終えて、改めて確認するとそこには、〝支配者の呪い、解除可〟と書いてあった。
何重にも重なり合った中にあったようで何がなんでも隠したかったように思えてならなかった。
だが、解除は出来るようで、一安心だ。
「——キさん、ツバキさん!」
鑑定内容に気を取られ何度も声をかけていたアレンさんに気付かなかったらしく、アレンさんは心配そうに俺をみていた。
「すみません。少し考え事を」
「そうでしたか、良かったです。何かあったのかと心配しました。それでどうですか、鑑定の結果は?」
「えっと、色々な情報の中で原因の可能性のあるものだけお伝えしますね」
「それで構いません。それ以外は個人情報に触れるでしょうから」
アレンさんの言質をとったところで今、俺が分かった鑑定結果を伝えた。
その表情は話しを進めていくごとに硬くなっていく。
「——以上です。少し分かりにくいところもあったかもしれませんが」
「い、いいえ、大丈夫です。それよりも‥‥‥」
言いかけた言葉を飲み込みアレンさんは視線を彷徨わせる。
まるで言っても良いのか迷っているようだった。
「アレンが言わないのなら、俺が言うが?」
突然声がしてテントの入り口を見ると、ギルマス、ハンズさん、そしてライザイの街、冒険者ギルドのギルドマスターであるハンギュさんが立っていた。
三人が揃っているとなんとも言えない迫力がある。
「ハンギュさん‥‥。ですが、この情報は‥‥」
「分かっている。今ここにいる者、あ~、ツバキくんとアレン、そして俺たち三人以外はテントの外に出ていてくれ。まぁ、面倒ごとに関わりたいのなら残っても良いが?」
ハンギュさんの言葉に俺たち以外の冒険者は次々にテントから出ていく。
「冒険者は面倒ごとにを嫌うからな」
慌てて出ていく冒険者に驚いていると、ギルマスが可笑しそうに言う。
これからそれだけの話をしようとしている雰囲気ではまるでなかった。
「アレン、音遮断魔道具は持っているか?」
「はい、一応。起動させますか?」
「頼む」
アレンさんは慣れた手つきで起動される。
音遮断魔道具はその名の通り、魔道具から半径一メートルの範囲においての音を外に漏れ出さないように使う魔道具のことだ。
良く、国の大事な会議などに使われているらしい。
「起動完了しました」
「ありがとう。じゃあ、始めるか」
ハンギュさんの言葉に若干緩んでいた空気が一気に引き締まった。
「まずはツバキくん、アレンに話したこともう一度話してもらえるかな」
「はい」
そして俺は全員の視線が集まる中、アレンさんに話したことと同じ内容の話をした。
鑑定で〝支配者の呪い、解除可〟という文字が現れたこと、それが複雑に絡み合った中にあったことなどを話した。
「——これで終わりです」
説明をし終え、四人を見るとその表情はより一層険しいものになっていた。
「ありがとう。ツバキくん、一先ずお礼を言わせてくれ」
「ん?は?」
ハンギュさんが急に頭を下げ、俺の思考ご一時停止してしまった。
「おっと、すまない。きみのその鑑定の精度の高さによって今まで頭を悩ませてきた問題に一歩近づけた」
「問題‥‥‥?」
俺の戸惑い顔にハンギュさんは小さく頷くと、俺たち四人を見渡した。
「今から話すことは、絶対に口外しないでくれ。音遮断魔道具が正常に発動しているから情報が漏れたとしたら今、ここにいる五人の中の誰かが口外したということになりえる。そのことを肝に命じて欲しい」
ハンギュさんの注意に俺たちは微かに頷く。
その反応を見ると満足したような表情をとった。
「説明はそうだな、ザフレ頼めるか?」
「お前が説明するんじゃねぇのか」
「そうしたが早いんだが、なにせ俺の説明能力は‥‥‥なぁ?」
「はぁ、分かった。まずはツバキの鑑定結果にあった〝支配者の呪い〟だが、実は過去に何例か見つかっているんだ。いずれも魔王側近、四皇位の部下からな」
「魔王‥‥」
その言葉に俺は思わず自分の拳を握ってしまった。
魔王、それは俺がこの世界に召喚された一つの理由でもあるから。
四皇位つまりは四天王の別称なのかもしれないけれど、ともかく俺は関わったことがないから現状、四皇位たちが何を考えて、こんなことをしているのか分からない。
なんの関わり合いもなく、過ごしてこれたのに‥‥。
「あぁ、そうだ。四皇位の中でわかっているのは支配の皇、大輪の皇のみだ。残りの二皇については全くと言って良いほど情報がない」
「支配の皇って‥‥もしかして」
「お前の思っている通り、過去に〝支配の呪い〟が見つかった者の親玉だ」
「教会では〝支配の呪い〟相手を縛り、記憶を混濁させて意図しない行動を取らせるものだと考えています。何百年もその解除の研究を進めてきました」
ギルマスの話に驚いていると、横からアレンさんが補足情報をいうように言った。
「このアレンはな、教会の者なんだ。今は治癒士として冒険者ギルドにも所属しているが」
ハンギュさんはアレンさんを差しながら言う。
「教会の方だったから光属性魔法が使えたんですね。一緒にいた皆さんも教会の方ですか?」
「はい。その、すみません、隠すつもりはなかったんですけど。教会治癒士派遣部隊という教会内の機関に所属していて、今は冒険者ギルドの方を中心に活動させてもらっています」
アレンさんは俺に謝ると、詳しく自分の所属している所を教えてくれた。
でも、イメージ的に教会と冒険者ギルドは仲が悪いって思っていたけど、そうじゃないんだな。
「お前、今なんか変なこと考えていないか?」
「え?いや特に。今考えていたことと言えば教会と冒険者ギルドって仲悪いイメージあるよなぁ、と思ったくらいですし」
ギルマスの言葉に不思議に思いながら答えを返す。
「どこからのイメージだよ。冒険者ギルドと教会の関係性は良好だ。お前はよくわからん知識を持ってるな、本当に」
ギルマスはため息を深々と吐くと、俺に諭すように言う。
「ま、まぁ、はい」
召喚前の世界のイメージです、とは当然言えないので曖昧に言葉を返す。
それを肯定と取ったのかギルマスはそれ以降なにも言わなかった。
面白かったら、ブクマ、いいね、お願いします




