四皇位が一皇①
でもそれはほんの少しで、彼は冒険者が回復するまで何度も何度もかけ続ける。
だけど、目に見えるほどの効果は見られなかった。
「これ以上は危険です!」
彼は何度も何度も魔法をかけるうちに、彼の体は魔力枯渇を起こしかけており、俺は慌てて魔法をかけるのを無理やり止めた。
「でも、助けなきゃいけないんです!」
「ダメです。助ける人間がいなくなってしまったらどうするんですか?」
「それは‥‥っ!しかし、そのために目の前の人を見殺しにするのは嫌なんです」
諭すようにいうが、彼は激しく反対する。
「‥‥‥」
俺だって分かっている。
人は死んだらもう、戻ってこない。
どんなに高位の聖属性魔法だって効かない。
「‥‥本当は分かってるんです。見殺しにしたくないなんて、綺麗事だって。助けられない人だって大勢いるし、その事実から目を逸らしてはいけないと。だけど、心がそれを認めたくないんです」
彼は悔いいるように視線を落とした。
治療のために冒険者の体に触れていた手のひらをギュッと握りしていた。
その手は冒険者の血かと思ったが、実際は彼が強く握りすぎたせいで自分の爪が食い込んでしまったための血だった。
だけど彼はそれを痛むようには見えない。
それほどまでに自分の情けなさを感じているのかもしれない。
今の俺が何かしてあげられることはないだろうか?
あるにはあるのだが、それは俺の余計に迷惑をかけてしまう行為に繋がりかねない。
ここで聖属性魔法による魔法を行使したとして、俺が倒れてしまったらそれこそ危険だ。
俺自身もそうだが、病み上がりの冒険者が多い上に、治療している人たちの体力も限界に近い。
ギルマスやハンズさんがいるとはいえ、二人が俺たちを必ずしも助けられるわけではない。
何か‥‥。
聖属性魔法による治療以外で可能な治療法は‥‥‥。
「あっ!」
「ど、うしましたか?」
方法が天啓のように降りてきたことに、驚きのあまり座っていた体を立たせてしまた。
彼はそんな様子の俺に困惑していた。
「あの、その毒消貰っても?」
「え、えぇ。どうぞ」
念の為に彼が持ってくるように指示を出して、集められた毒消の数本もらう。
ここにある毒消は下級から中級にかけてのものばかりだ。
ギルドに数本あるだけの上級毒消とは違い比較的安価で、手に入れられる。
それでも、効能は上級毒消にかなり劣るので、正直なところ使い所があまりないらしい。
でも、今は格好の隠れ蓑だ。
「それ、どうするんですか?」
興味深そうに彼は聞いてくる。
魔力回復薬を飲んだおかげで大分、安定しているように見えだが、彼は相変わらず冒険者に浄化をかけ続けている。
「その、止めないんですね」
「はい、可能な限りは尽くしたいので。それに、何か妙案を思いついたのでしょう?」
「‥‥まぁ、はい。俺が今からすることは絶対に他言無用でお願いします」
俺の真剣な様子に彼も何かを察したように静かに頷いた。
俺が今からすること、それは創造魔法で新たに魔法を生み出すことだ。
ほとんど掛けの状態ではあるけれど、聖属性魔法以外で可能性があるとすればこの方法しかない。
俺は一呼吸おくと、頭をフル回転させる。
創造魔法で解除を使った時のように、いや、それ以上に。
聖属性魔法の理解が不足しているのもあるだろう。
現状で必要なもの、不必要なもの、取捨選択しながら、流れてくる情報を組み合わせる。
ぼんやりとしているが、確実に魔法が出来ている。
もう少しだ‥‥‥。
そして、頭の中で最後のピースがハマった気がした。
作り上げた魔法の全容が明らかになった。
「ばん」
「ツバキっ!」
魔法名を口に出そうとすると緊迫したギルマスの声が聞こえてきた。
ハッとして声がした方を振り返ると、ギルマスたちが相対していた異常な冒険者が凄い勢いで向かってきていた。
「反射結界!」
創造魔法で魔法を作り出していたおかげで頭が冴えていた。
一瞬で結界を作ると、攻撃を防ぎ、その攻撃は自らに向かっていく。
それが俺が作り出した魔法だ。
正直どう作ったのかは覚えていない。
無意識のうちにできていたのだ。
数十秒が経ち、攻撃が止み静かになった。
異常な冒険者の攻撃が停止したことにより余裕のでたギルマスとハンズさんによって他の魔物たちは一掃された。
「今のは一体‥‥‥」
彼の戸惑った声が片耳から聞こえてくるが、今はそれどころではない。
とりあえず今できた魔法を使わなければ。
「はぁ、万能治癒」
そうして毒消に魔法を付与する。
効能が劣るのであれば上げてあげればいい。
それが俺が思いついた方法だ。
その時にこの毒消は丁度いい媒体だった。
もし、俺がここで聖属性魔法を使えば俺の身体がどうなるかもそうだが、実際に彼に見られるのは避けたかった。
けど創造魔法ならその問題が発生しない。
ここまでの経験で創造魔法はまだ構築が遅いが、それなりに扱えるようになったし、もし創造魔法の存在に気づかれてもいくらでも誤魔化しはききそうだ。
「えっ‥‥と、特級?」
付与を終えると一度鑑定をしてみる。
元々中級毒消だったものが特級毒消と名称が変化していた。
毒消にしろ治癒薬にしろ俺が知っている階級は上級までで、特級になるとは思わなかった。
だって俺自身上級もしくはそれに付随する効能を持ってくれればいいと思っていたのだから。
まぁ、でも多分これで大丈夫だろう。
今回のことは嬉しい誤算だ。
「これを飲ませてください」
「はい」
鑑定を終え彼に特級毒消を渡す。
すぐさま負傷した冒険者に彼は飲ませると、体にまわっていた毒が嘘のように消えていく。
鑑定して見ても目に見える結果と同じだった。
その結界に彼は目を見開きからになった毒消を見つめていた。
「あ、あの‥‥ルイスは‥‥」
負傷していた冒険者は長時間、毒がまわっていたせいか、辿々しい口調で言葉を発す。
その言葉に毒消の瓶を見つめていた彼は我に帰ったように、その言葉を聞き逃すまいと負傷していた冒険者の首を持ち上げて聞く。
「ルイス?」
「僕の‥‥仲間で」
「分かりました、確認してみます。あなたの名前は?」
ルイスという人物がどうなっているか確認するように手の空いている者に頼むと、彼は負傷した冒険者か声をしっかりと聞き取れるようにはっきりと聞く。
「ガジリク‥‥です」
「ありがとうございます。カジリクさんですね。ゆっくり休んでください」
名前を確認すると彼は静かに持っていた首を枕がわりにしている布に戻した。
彼はその言葉に安心したようにまた眠りについた。
「大丈夫そうですね」
「ツバキさんが言うのなら間違いないんでしょうね。あの、この毒消は一体‥‥」
「そうですね。先ほども言いましたが誰にも喋らないと約束出来るのであれば話します。その代わり俺の味方になってください」
俺が今から話そうとしていること、それは俺の本来の力を明かすことになる。
もし、この力が権力者によって悪用されかけた時、誰か一人でも味方になってくれる人がいるのは心の支えとなるはずだ。
「味方ですか‥‥。分かりました、喜んでなりましょう。自己紹介が遅れましたが、私はアレンです」
「では改めて、俺はツバキです」
彼、アレンさんの了承を確認し、説明を始めようとすると負傷した冒険者ことガジリクさんの仲間のルイスさんの事を調べに行っていたアレンさんの仲間が戻ってきた。
「アレンさん」
「シリアン、どうでしたか?すみません、ツバキさん話は後ほど聞かせてください」
「それが‥‥その」
言葉を渋るシリアンさんにアレンさんは訝しげな表情で見ていた。
「言いにくい事ですか?」
「はい、かなり。探していた冒険者のルイスさんですが、あの異常な行動をとっていた冒険者だと確認が取れました」
顔を歪めながらシリアンさんはいった。
その事実に結界の外でぐったりとしている異常な行動をしていた冒険者に目をやった。
「本当に⁉︎そう、ですか。そのルイスさんは何かの状態異常に陥っていたということですか?」
「実はそんな形跡が見当たらないんです。ですがそうでなければ、元々、ルイスさんは温厚な人物だったそうでここまで凶変するのは考え辛くて」
「口を挟んですみません。魔族という可能性は?」
一つ疑問に思っていたことを聞くとシリアンは首を横にやり否定した。
「我々も周囲の評判からその結論に至りましたが、ルイスさんを鑑定しても魔族という表示はなく」
「そうですか‥‥‥」
「ツバキさんが鑑定すれば良いのでは?」
アレンさんの突然の提案にまじまじとアレンさんの顔を見てしまった。
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