冒険者ギルド
「失礼、します」
恐る恐る、冒険者ギルドの中に入ると、沢山の冒険者がいた。
緊張するなぁ。
何やら、すごい視線を感じる。
俺、そんなに変なの?
不安を抱えながらギルドの受付に向かった。
「あの~、冒険者登録したいんですけど」
俺が声をかけると、受付には、女の人がいた。
「ふぁぁ」
ん?受付の人は、何やら上の空だった。
本当に何!
「あの?」
「あ、はい。ぼ、冒険者登録ですね。では、こちらへ」
「は、はい」
もう一度声を掛けると受付の人は、ようやく気づいたらしい。
ただ、少しおどおどしている様だった。
移動するにも周りの視線が纏わりつく。
怖い、異世界怖い。
受付の人に付いて行くと大きな鏡があった。
「では、こちらの鏡に手を触れてください」
そう言われて鏡の前に立つと、俺は有り得ないものを見た気分だった。
何故なら、碧目、茶色の髪のイケメンで簡素な服を着た俺らしき人が映っていたからだ。
俺が立ってそして映っている以上、このイケメンは俺なんだろうけど。
「どうしたんですか?」
「あ、いえ。何でもないです」
目の前に映る自分について考えることを放棄して取り敢えず受付の人の言う通りに鏡に触れた。
すると、鏡に文字が現れた。
名前 ツバキ
レベル 11
種族 人間
年齢 15歳
属性 土、水
固有スキル 鑑定
恐らく、力を具現化することが出来る鏡なのだろう。
あれ?魔王とか勇者とかないじゃん。
神様が消してくれたのかな?
年齢も何歳か若返っている。
でも、干渉できないって言ってたような気がするけど?まぁ、いいや。
なんか、普通に暮らしていけるかも。
そう、普通が何よりなんだよ。
そう考えながらふと、鏡の下の方を見ると、まだ、文字が続いていた。
名前 ツバキ
レベル 1375
種族 人間?
年齢 15歳
職業 魔王、勇者
属性 火、水、土、風、光、聖、闇
固有スキル 空間魔法、創造魔法、鑑定
偽装、隠蔽、古代魔法、剣鬼
称号 異世界人、魔王、勇者
加護 レミリアの神、レリクス神
すいませんでした!
普通に暮らしていけるかもと思って。
無理です。
なんですか、〝人間?〟っておかしいでしょうが、確かに魔王だし勇者らしいけど、でもハテナはないでしょ。
とんでもない、力が鏡に映し出されていた。
大丈夫かと思い、横を見ると受付の人は頻りに鏡に映し出された力を紙に書いていた。
受付の人がこの馬鹿みたいな力を見ても何も言わないと言うことは見えていないのか?
あ!思い出した。
多分神様の仕業だな。
俺の容姿も力の偽装も。
地上に落とされる前ギリギリで言われたんだったな。
「はい。これで、登録完了です。おめでとうございます。今から、あなたは冒険者です。では、名前とスキル確認しますね。えっと、名前はツバキ様で、スキルは鑑定、属性は土、水ですね」
「‥‥‥はい」
「ん?では、受付までいきましょうか。ギルドカードを発行します」
俺は、ギルドカードを貰うために受付へと向かった。
受付の人に仕方なくとはいえ、嘘をついているという罪悪感が重い。
受付への方へ戻ると凄く周りから視線を感じた。
恐らく、この顔のせいだろう。
贅沢な事を言うかもしれないけど、こんなにイケメンにする必要な気がする。
神様!
俺、何のために貴方に会ったんでしょう?
目立たないと思ったのに!
何もしていないのに周りの視線が怖い。
目立ってるよメチャクチャ!
「ーーキさん。ツバキさん!」
「はい!」
「大丈夫ですか?」
「すみません。大丈夫です」
ヤバイ、周りの視線が怖すぎて意識飛んでた。
「それでは、こちらがツバキさんのギルドカードになります」
「はい!ありがとうございます」
ギルドカードは銅色で俺の名前やレベルなどが書いてあった。
「では、詳しい説明に入りますね。まず、ランクからで‥‥‥」
ランクの説明やギルドのルールなどを説明してくれた。
説明を要約すると
ランクは、F・E・D・C・B・A・Sで分かれていて最低ランクがFで今の俺のランク。
ランクごとに、できる依頼が決まっているらしくFランクの俺が受けられる依頼は、薬草採取が主で、他はたまに清掃依頼があるくらい、達成報酬は、依頼の証明となるものをギルドに提出して貰えるらしい。
そして、冒険者同士の喧嘩は御法度。
もし喧嘩をすると最悪の場合、冒険者資格剥奪されてしまうそうだ。
「‥‥‥説明は以上ですが、他に何かご不明な点などは、ございませんか?」
分からないところ‥‥‥?
「では、一つ。気になったんですけど、依頼に失敗した場合どうなるんですか?」
すると、女の人がにこやかに笑って答えてくれた。
「あ、それはですね、依頼に失敗した場合、その依頼に応じてですが、罰金をお支払いしていただきます。因みに、依頼を連続して三回失敗した場合はランクが一つ降格となりますのでご注意ください」
うぇー、依頼失敗でないな。
「説明、ありがとうございました」
「いえ。では最後に今回担当させて頂きました私の名前はヒーカと申します。見ての通りこのギルドで受付嬢をしております。今後ともよろしくお願いします。ツバキさん」
ヒーカさんはそう言うと可愛らしい笑顔で笑った。
「あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします。登録したてなので、何か困った事があったら聞いてもいいですか?」
「はい!もちろんです。冒険者のために私たちは、ここにいるんですから!」
おぉお、急にテンションが。
俺が驚いていると、クールダウンした、ヒーカさんが話しかけてきた。
「ツバキさんは、今から依頼を受けられるのですか?」
「はい。そのつもりですけど‥‥‥」
「そうですか。でしたら、補足して説明しておきますね。あそこにある緑の掲示板をご覧ください。もし、受ける依頼が決まったら貼ってある依頼書を受付にいる私たちに持って来て下さい。正式に、依頼を受理しますので」
「ありがとうございます。じゃあ、選んできますね。」
ヒーカさんに言われたとおり緑の掲示板を見に行った。
「へ~、本当に、Fランクってほとんど薬草採取なんだなぁ~。この中で、一番レベルが低いのは‥‥‥あぁ、これか」
俺は、掲示板の中に貼られている依頼の中でも特にレベルが低いのを選んだ。
内容は、"クリーン草"という薬草の十株採取してくること。
俺は、貼ってあった依頼書を剥がし、早速ヒーカさんのいる受付に持って行った。
「あぁ、決まりましたか?」
「はい。依頼に最初から失敗しても嫌なので一番レベルの低い依頼にします!」
俺が、思いっきり決意表明しているとヒーカさんが体をプルプル震わせて笑っていた。
「あ、あの?」
「ふふふ。申し訳ありません。確かにその心は大事ですね、最近の方は一刻も早くお金を稼ぎたいと思っている方が多くて問題になっていたんです。だから、まさかそれを言われるとは‥‥‥ふふふ」
また、思い出したように肩を震わせている。
「あの~、で、俺は、この依頼受けてもいいんですか?」
「あ、はい。では、受理しますね。初依頼頑張って下さい」
「ありがとうございます」
「ふふふ」
依頼を受け、受付からギルドのドアに向かっていると後ろからヒーカさんの笑い声がきこえた。
あれ、そんなに面白かったの?
そんなことを考えながら依頼書にあるクーリン草の群生地に向かった。
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