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旅路

アユリンの街を出発してから、ニ時間くらいたった頃に一度、お昼を取るために休憩することにした。

そういえば朝ごはんもまだだったっけ。

「ツバキ、食べるか?」

「いただきます」

俺はギルマスにエリナさん特製のサンドイッチをもらうと食べ始めた。

サンドイッチの中身はキャベツに似た、キヤライと呼ばれる葉物野菜とオーク肉が挟んであった。

オーク肉は豚肉のような食感で食べやすい。

まぁ、一度戦った後に食べたらあの倒した時の生々しい光景が思い浮かんできて、食欲がなくなったけど。


「ルイナスさんは食べないんですか?」

「俺はこいつに餌をやってから食べる」

俺が聞くと荷馬車を運んでくれていた馬を優しく撫でながら答えた。

「その馬、名前なんて言うんですか?」

「こいつか、こいつはラリーラン。古代語で疾風って意味なんだ」

「古代語分かるんですか?」

古代語とはこの世界の昔の言葉で読める人はあまりいないらしい。

日本で言う古語みたいなものだ。


「多少ならな。まぁ、弟の方がが古代語に詳しくてな。だからこいつを命名したのは弟なんだよ」

「弟さんがいらっしゃるんですね」

「あぁ、まぁな。今は実家にいるんだが」

ルイナスさんは少し気恥ずかしそうな、聞かれて嬉しいそうな顔で答えてくれた。

「おい、ルイナス。愛馬が愛おしいのは分かったから早く昼飯食べろよ。なくなるぞ?」

「あぁ、悪い。‥‥‥すまないがそいつにそこにある餌をあげておいてくれ」

ルイナスさんは少し迷い顔で俺に言いながら、馬、ラリーランの近くにあった木のバケツみたいな物を指して言った。


「えっ、あの」

馬の餌やりなんてしたことないんだけど、大丈夫なのだろうか。

が、任された以上やるしかないんだよな。

「ラ、ラリーラン。ご飯いるかな?」

「ぶぶっ」

「あ、えっ?」

恐る恐る聞くとラリーランは嫌そうな声で鳴いた。

「ハハハ」

その様子に困っていると後ろからギルマスの笑い声が聞こえた。

「おい、ザフレ。笑いすぎた」

「わ、悪い。ふぅ、ツバキ、馬はな。人の気持ちがよく分かるんだよ。だから怖がったり緊張していたりしたら馬も緊張してしまう。餌をやりたいなら緊張せずやることだ」

ルイナスさんの注意で一呼吸したギルマスはアドバイスをしてくれた。


落ち着いて、緊張せず。

「餌どうぞ」

なるべく落ち着いて餌を渡すと満足気に餌を頬張っていた。

「おぉ、やれば出来るじゃねえか」

「あぁ、上手いもんだな」

二人の感心したような声が後ろから聞こえてきて、少しこそばゆかった。

ラリーランに餌を上げ終えると、ちょうどルイナスさんも食べてしまったようで出発することになった。


「そういえば、出発の時聞きそびれたんですけど、ライザイってどこですか?」

荷馬車に再び乗って移動している時、俺はふっと思い出したことを聞いた。

「うん?あ、そういえばお前、この辺の地理知らなかったんだったな」

「はい。恥ずかしながら」

この国、王都、そして周辺諸国、大体地理に関して網羅したと思ったら、アユリンの街近郊の街のことを勉強することをすっかり忘れていた。

それに気がついたときにはすでに遅しの状態だった。


「ライザイはアユリンの隣街なんだよ。隣街と言ってもそれなりに離れているからな、アユリンから出発すれば、一日目必ずライザイの街に泊まるのが鉄則だな。もちろん、魔法を使う時は例外だがな」

「なるほど。名産とかあるんですか?」

「名産か?名産ねぇー。なぁ、ルイナス知ってるか?」

ギルマスは考えても出てこなかったようで、ルイナスさんに話を振った。

「ライザイの名産か。名産、名産‥‥‥‥」

「あ、ないならいいです」

そんなにないのか、名産。

一つくらいはあると思ってんだけどなぁ。

ルイナスさんもまた出てこないらしい。

「あ、いや、まて。キャロイの肉巻きは美味しかったよな。名産かどうかは知らないが」

「確かにな!あれは美味しかった‥‥‥。でも、あれは名産というか看板メニューな気がするが」

「う~ん。だよな」

二人とも頭を抱え悩み始めた。

なんか、そんなにないなら、もう良いのに。

申し訳ないことしたかも。

そういえば、キャロイって確かキャベツみたいな見た目の、というかそのものだよな。


「出てこないな。こういうのは地元民に聞くのが一番なんじゃないか?」

「だな。それが手っ取り早い」

そんな話をしながら、俺達はライザイの街に向かった。

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