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デレデデッテテー!! めでたい音楽!
(おめでとうございます。シークレットクエスト『名無し卒業』をクリアしました。報酬として経験値200ポイント、スキルポイント400、『スキル・強固な自我』を贈呈します)
大盤振る舞いだ。
「よし。おかげで名前も決まったし、色々ボーナスもたんまりもらったし・・お礼にその左目、単発スキルで治してやるよ」
「単発スキル?? 治療魔法とか、能力?」
微妙にゲーム的な言語が通じたり通じなかったりすんな。
「ああ、そんなもん、そんなもん? ちょうどいい媒介も、ほら、確認してみ」
俺は草編みリュックから、素焼きの瓶に入れた『ポーション+2』と『精霊石の欠片』を取り出し、ユッカナに見せた。
「これは・・ポーションの、+2はあるぞ?! 精霊石の欠片までっ! こんな高価な物を一体どこで??」
「いや、作ったんだよ。レシピ覚えたし、どっちも材料集めんのも精製すんのもメチャクチャめんどくさくて、1つ造ってすぐやめたけど」
「こんな高価な物を使うのは困る! 私は君に名前を付けただけだっ。テキトーだし」
テキトーかよ。
「じゃあ、この世界の一般常識を俺に教えてくれよ」
「う~、その程度じゃ・・」
そんな価値あるの、コレ?
「わかった。じゃあ、この世界の案内をしばらくしてくれよ? ここらの地域だけでいいから」
「いや、まぁそれなら。・・ただ、ダイスケ。君はモンスターだから形だけでも使役契約が必要だ。私が魔物使いとして君を連れ歩く形じゃないと」
「ふん? リスクは?」
「一番簡単な契約なら、体に契約の紋章と私の名が刻まれ、私に居場所が知れ、拒否できるが私が求めると私の側に召喚される」
「そんな感じか。うーん、・・いいぜ! 契約しようっ」
実はさっきからユッカナに『悪意探知』を掛けているが問題無かった。
「いいの?! 軽いね。ええと、待ってよ」
ユッカナは収納化のスキルを掛けているらしいポーチから巻物を取り出した。即、巻物を鑑定すると、確かに契約の道具だった。内容は改変可能な仕様だ。
「滅多にしないから緊張する・・よし!」
念力で浮かせた巻物の内容を魔力で改変させ、俺に見せるユッカナ。
「内容に問題が無ければ署名欄にサインを」
「ほほう」
改変後の内容を読み、さらに鑑定でも確認したが問題は無かった。俺はダイスケと、魔力で署名した。すると、
「おっ!」
俺の丸い紫ボディの左の横っ腹に紋章とユッカナの名が浮かび上がり、そのまま印された!
「なるほど。ユッカナ! 次は左目だっ! 治すぞぉ~っ、ふふふふっ」
ポーション+2と精霊石の欠片を手に歩み寄る俺。
「ちょ、ちょっと待て! 大丈夫なのか? こんな高価な触媒が使えるなら普通の魔法医に診てもらった方が・・」
「安心しろ、治療系の『実習』はバッチリだ!」
「実習?! ちょっ、待っ」
「ナビ! ポーション+2と精霊石の欠片を対価に『単発発動・古傷の再生(100P)』を取得し、ユッカナの左目に使う!」
(視覚とはいえ、呪いや病等と無関係なただの古傷の再生です。このエルフは若く、健康。スキルの発動だけでも回復可能ですが?)
「ケチケチするないっ! どーんっ、と使っちゃえ!!」
(・・いいでしょう。スキルの獲得を確認。発動しますっ)
ポーション+2の蓋が取れ、中身の霊薬が溢れ、精霊石の欠片も砕け、ユッカナの眼帯も取れた。左目の上下に傷痕があり、目は白濁していた。
「ふぅあっ??」
砕けた精霊石と霊薬が混ざり、輝き、ユッカナの白濁した左目の前でゆったりと渦巻きだす。
(どーんっ! と回復よっ。ケチじゃないもんっ!!)
ナビ? キャラ変??
全てが輝き、ユッカナの左目は紫色の輝きを取り戻し、傷痕も消え、さらに左の瞳の中に何かの紋章が輝いていた。
「っ?! えっ?? 見える? 見え過ぎる!」
戸惑うユッカナはポーチから鏡を取り出し確認し始めた。
「紫? この紋章は??」
右目は明るい緑色だった。紋章等は無い。
(過剰な回復とシークレットクエストのクリア報酬により、彼女はレアスキル『聖霊眼』を獲得しました。ダイスケの諸々の報酬は後程・・)
お? 元の調子に戻った。
「聖霊眼スキル、・・能力を手に入れたんだってさ」
「聖霊眼?! あの伝説のっ、全てのまやかしを見破る聖なる瞳が、って! うわぁあっ?!!」
ユッカナは突然っ、側にいる俺を見て仰天して腰を抜かし、尻餅をついた!
「ななななっ??」
「どうした? ユッカナ」
ユッカナに近付く俺。
「全裸にリュック帽子の変態男ぉーーーっっ!!!!」
ユッカナは丸い紫ボディの俺の下腹部の『丸み』に全力で右ストレートを打ち込んだ!!
「ごっふぅぅーーーっっっ??!!!!」
俺はブッ飛ばされっ! ダウンしたっ。
(7ポイントのダメージ。『下腹部ショック』の状態異常です)
「あばばっ、なんで??」
(聖霊眼は真実を見通します。ダイスケ、の魂の姿を見破った結果です。因みに今の貴方は人間としては鍛えられた身体なので、よりケダモノに見えたのでしょう)
「ケダモノて・・ユッカナ、今見たのが俺の本当の姿だ。服着てないのは茄子的にしょうがないだろ?!」
「ううっ・・そ、そうだな! ごめんよ。『ヒール』!」
温かい光が俺の下腹部を覆い、痛みが消えた!
「っ?!」
(回復魔法です。HPと下腹部ショックが全快しました)
「なんか癖になりそう!」
(警告、不審者。見た目通り)
「・・悪かったよ」
反省はする!
「とにかくっ、治してくれたのはありがとう! 慣れないからしばらくはまた眼帯するが・・」
いそいそとまだ持ってた眼帯を付け直し、立ち上がるユッカナ。
「まずは私の郷に案内するよ。改めてよろしく、ダイスケ」
「おう、よろしく。ユッカナ!」
こうして俺は聖霊眼を得たユッカナの使役モンスターとして、エルフ郷に向かうことになったのだった。