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大海溝神殿での後始末をつけ、イソラルルベで罪は問わないとされたがヨーナと使い魔以外で国賓として歓迎された後、俺達は天宮に集まっていた。

前より結晶化の進んだ神命のゴブレットを持ったコニ本体を前にする。コニはゆっくりと瞳を開けた。


「務めを果たしてくれましたね、ダイスケ。良かった、無事で・・」


結晶の涙を溢すコニ。


「コニ。早速だが、『スキルリセット』と『レベルリセット』を行いたい」


「はい、獲得したスキルポイントは事象と今のダイスケを改変してチキュウに使います。レベルの方は『次の勇者』の為に取っておきましょう」


「とにかくリセット!」


「はいはい、そんなに早くチキュウに帰りたいんですか?」


コニは苦笑して俺のスキルリセットとレベルリセットを承認した。


シュウウゥゥ~~~ッッッ!!!!


俺の蓄え、高めた膨大なスキルとレベルが2割減ではあるがポイントに変換された。

俺はレベル1になり、クラスも普通の『キラーナス・亜種・食用体』に戻った。

久し振りにオドロ帽子と草編みのリュックも戻った。懐かしっ。

仲間達もちょっとどよめくやら、ややウケるやら・・ま、いいけどな。


「よしっ、経験値の方は丸ごと!『コニの実存の回復』に使う!」


「え? でも」


「次の勇者は次勇者でなんとかするさ、俺なんて『2回も』もなんとかしちゃったぜ?」


「ダイスケ・・わかりました。では、いいのかな?」


「いいよ。ダイスケの願いだから」


「いいんじゃないの~?」


「女神様もよくやったさ」


「良いのじゃ!」


「勿論ですぞ?」


「良いと思います」


「わたしは別にぃ」


「ボクもまぁ」


俺は蔓の手で、ゴブレットとほとんど一体化してしまったコニの結晶化した手を取った。


「コニ」


「・・うん。スキル『私の実存の回復』の獲得を確認」


コニは光に包まれ結晶化が解けた。


「ああ・・ダイスケっ!!」


抱き付いてくるコニっ、凄い腕力っ!!


「ぐぇ~っ? 中身出る! 俺、レベル1だからっ」


「あっ、ごめん」


「へへっ、お帰り。コニ!」


「ダイスケぇ」


コニはまた俺を抱き絞めようとしたが、ユッカナによって引き離された。


「もういいでしょう。何? 神力を独占してっ、さらにさらにと! 欲張りだからっ!」


「・・・」


不穏な空気になる2人。そこへ、


「いや~、ズルいというのは確かにだね」


天宮に中心部の間に、やや透けた姿の龍の魔女が輝く小さな龍と魔女のネリとバジを引き連れて現れた!


「ダイスケ!」


「お、ホントに弱体化してやんのっ!」


ネリがコニにナチュラルに突き飛ばして尻餅をつかせ、抱き付いてきたっ。バジはニヤニヤしている。


「おいっ、ちょっと、というか龍の魔女! 墓から出られたのか?」


「今の私は『生命の龍王』のオマケさ。まぁ、ダイスケがチキュウに帰るのを諦めて私にポイント使ってくれるなら別だがね」


輝く小さな龍を撫でながら言ってくる龍の魔女!


「いやっ、え~っ?」


「ふふっ、冗談だ。もう何百年も生きた。飽きたさ」


「まぁ、うん」


「生命の龍王、産まれたのですね」


ネリとほぼ0距離でにらみ合いを始めながら言うコニ。


「ああ、ダイスケが帰ってしまう前に御披露目くらいはしておこうと思ってな。それも、済んだ。・・ほら、行きなさい」


「トゥウウーーーーイィっっっ!!!!」


小さな生命の龍は吠えて、大きく温かな光の帯の姿になると、広間を一周し、天井を透過して天宮を飛び出していった。


「真っ先に地球との繋がりは回復させるが、他は数十年は掛かけて世界の傷を癒しすことになる。さて、私はここまでだ・・」


姿がさらに薄らぐ龍の魔女。


「龍の魔女様!」


「もう消えちまうのかよっ?」


動揺し、駆け寄るネリとバジの頭を撫で、俺とコニを見る龍の魔女。


「延長戦になってしまったし、誰かの台詞じゃないが、いい旅だったよ? 私は産まれついて万能だったが、充実を知らなかった。ありがとう、コニ、ダイスケ」


「龍の魔女・・」


「ううっ、ありがとうぅっっ」


龍の魔女は穏やかな光の中、消えていった。ネリとバジはその場に泣き崩れてしまった。



・・小一時間後、俺達は天宮の『勇者召喚の間』に来ていた。

やたら立派な転送門に、俺は1人で立っていた。持っていったら面倒になるから、オドロ帽子と+のついてる草編みのリュックは置いてゆく。


「鳴らしますね」


デレデッデデェーッ!! めでたい音楽!


「おめでとうございます。チキュウとの繋がりの回復が確認されました。お別れですね、ダイスケ」


「おう。こっちの世界で、死ぬ程・・いや、結構何回か死んじゃってたし! 結構大変なこともあったけどさ」


改めて皆を見回す。さっき『記憶を消さない』選択をしていた。だよな、って話だ。


「楽しかった。これから先でも一番だと思う。それで、良かった。皆に会えて良かった」


「ダイスケ、アプサーの言っていたキープされた転送門の調査を続けます。この門は次の世界の危機まで使えないので・・」


服装が格闘スタイルに戻ったコニはボロボロ泣いていた。


「忘れないよ」


「じゃ、な!」


泣き過ぎて倒れそうなユッカナと、それを支える(てい)で尻を触っているミミル!


「正直、命を懸けるつもりだったが、案外生き残っちまった。また、できることを探すよ」


柔かく笑うゼノロオン。


「今後のこの世界の平和は余に任せるのじゃっ!」


「王子と共に頑張るよっ!」


「私はそろそろ引退だが、やれるとこまでは頑張るよ・・」


トトシ王子とボボ、ノンノン!


「ダイスケ帰っちゃうんだ? わたしはこの世界、また色々見るよ。わたし達もママ達も、わたしの中にいるからさぁ」


「まぁ、洞窟でトカゲ取ったりキノコ取ったりするよりはいいかもしれませんねぇ」


ヨーナ・ハミングハートと綿のふわふわ使い魔!


「ダイズゲェぇえっっ」


「取り敢えず、ネリはあっしに任せとけ!」


柱の森の魔女達!


ヴゥウウウンッッッ!!!!


俺のスキルポイントを使い、チキュウへの転送門は起動した。


「皆、ありがとうっ!!」


俺は光に包まれた。



光の中で、俺の茄子の姿と人の姿が重なり、茄子の姿が薄れてゆく中、俺の中に四季の槍が残っていることに気付いた。


「あ」


どーすっかな? ユッカナに返さないと。


「・・いいよ」


「っ!」


マルシさんが現れた、茄子と人の俺の胸に片手を置いた。


「持って行きなよ。だって、君は」


光が強く人の俺だけを引っ張り上げだす。


「勇者なんだから」


俺は、内なる四季の槍だけを持って、光の先へ還っていった。

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