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天使達の軍勢と霧のガラクタの魔人達の軍勢の激突が始まった!
「全員ネッカイでアプサーまで一気に行く! アプサーと花は俺とネッカイで対応するから、皆は後ろを頼むっ!」
「了解!!」
全員、ネッカイに飛び乗った。
(我輩が蓄えたジェムの3割は使うぞっ)
「任せた!」
ネッカイは、体内のジェム類を組み合わせ、全身を震わせて『ジェム合成・超無属性波動砲』を放った。
ドォオオオゥゥッッッ!!!!
霧のガラクタの魔人群の中央に風穴を開けた。
(いざっ!!)
そこを一気に駆け抜けるネッカイ。後半、霧のガラクタ群は立て直しだしたがネッカイの背や頭に乗った俺達は遠距離攻撃で撃退し、前方に残った天使達の攻勢もあり、アプサーと巨大花に迫った。
「・・・」
無言で虚空から発生させた槍サイズの針を連発してくるアプサー! この針は触れても近付いても『吸われる』っ。
従えた巨大花も毒気を含むらしい蔓の鞭を連打してくる。単体ならどうってことないが、この状況だとかなり邪魔だ。
両者共に霧のガラクタ群に命中しようがまるで頓着が無い。魔族ってそういうとこあるよなっ。
避けて捌いて撃ち落とし、さらに迫る!
「アプサーっ!」
「気安いですよ?」
俺はアプサーに多数の蔓をドリル化してアプサーに打ち掛かりっ、ネッカイは巨大花に襲い掛かり、飛び降りた他の仲間とカボチャの使い魔達は後ろにした霧のガラクタ群達に対峙した!
近接になり、俺以外無視するアプサーの針は大幅に精度を増すっ。
最初は攻勢を掛けたが、スピリットランス抜きじゃ相殺するだけで手一杯だな。
実は俺は前回人間の身体だった頃は、アプサーは魔王から俺以外の仲間の足止めを指示されていたこともあって、ほとんどまともに交戦する機会がなかった。
コニから手の内は一応聞いているが・・
(警告、アプサーは今の形態でも倒し難いです。機械の左腕もアレはルググメヴィスの部位でしょう)
「ヤバそっ! スピリットランス! 5倍っ」
俺は魔力を高め、ドリルも巨大化させて針の連打を砕き、アプサーとの間合いを詰めだした!
炎の属性を纏ったネッカイは孔雀のような尾羽根を閃かせながら、毒粉、毒液、毒の蔓を多様する巨大花と激しく交戦していた。
「ガウゥッ?」
問題無く巨大花を引き裂き、焼き払い、爆ぜさせるのだが、いくらダメージを与えてもあっという間に再生してしまうことに、ネッカイは手こずっていた。と、
「ネッカイ! アホっ。そいつ、根を張ってるだろっ?!」
押し寄せる霧のガラクタ群と後ろで戦っていたミミルが叫んできた。
(っ! アホは余計だっ。だが、我輩やってみるぞ?!)
ネッカイは属性を雷に変えた。両肩甲骨の辺りから展開していた孔雀の尾羽根は鹿の角のような器官に変形した。
「ワオーンっっ!!!」
凄まじい電撃を巨大花の根元に放つネッカイ。
「ベェネネェエエエッッッ!!!!」
これに絶えかね、床を割り、噴出するようにして巨人の姿をきた巨大花の『根』が姿を現した。
(ワハハッ、大物が釣れたぞっ?!)
ようやく倒せそうな本体と対峙できて、尻尾を振る勢いで上機嫌になるネッカイだった。
ネッカイに忠告したいくらかカボチャの使い魔を引き連れたミミルはやや苦戦していた。
霧のガラクタ群は属性は様々であったが基本的には金属の塊である為、ミミルの水と氷の力はイマイチ通りが悪い。
まごついてる内にカボチャの使い魔達が減らされだしていた。
「単純に斬撃扱いでコアを狙った方が良さげっ。あんた達、盾形態!」
ミミルはカボチャの使い魔達に半端な攻撃を辞めさせ、盾の姿に変化させて自分を守らせ、魔力を溜めた。
「・・『ドルフィンスプラッシュ』っ!」
大量の水の塊をいくつも発生させて霧のガラクタ群達にバラ撒き、怯ませるミミル。
「『ノーザンエッジウェイブ』っ!!」
怪魚殺しのロンデルで床を突き、津波のような冷気を放って水浸しになった霧のガラクタ群達を氷漬けにし、その鋭利な氷の刃で体内の核を砕いていった。
「よ~し、これでいっとくかっ!」
ダイアモンドダストを纏いながら、ミミルは野性的に笑っていた。
ユッカナはカボチャの使い魔達に前衛を任せ、聖霊眼で見切った集団の重なったポイントに魔力を乗せた矢を射ち貫通させていたが、カボチャの使い魔達の消耗が激しかった。
「ああ、良くない・・皆は馬か何か、乗れて速く動ける物に変化できない?」
これにカボチャの使い魔達は1体に合体し、『かなり装飾された浮遊するカボチャの木馬』に変化した。
「え? 木馬?? 普通の馬じゃダメなの?」
何も言葉は発せず寄ってきて乗るように促す装飾されたカボチャの木馬。
「う~っっ、わかったよ!」
やや赤面しつつ木馬に跨がり、ユッカナは素早く飛行しながら魔力を込めた矢を射ち霧のガラクタ群を蹴散らし始めた。
ゼノロオンと組んだカボチャの使い魔達は2体に集約し、長巻を装備のカボチャの鎧武者の姿に変化した。
「おっ、いいな! 後ろは頼んだぜ?」
楽しげに言って、竜殺刃を構えるゼノロオン。2体のカボチャの武者は頼まれた通り長巻を振り回してゼノロオンの背後を守った。
「『真・大震斬』っ!!」
得物を振り下ろし、床に這う引き裂く震動を広範囲に放つゼノロオン。霧のガラクタ群は粉砕されていった。
ボボと組んだカボチャの使い魔達はボボを上回る体躯のハンマーを持った1体の大男の姿に変化していた。
「ゆくぞっ? 仮の相棒っ!」
カボチャの大男のハンマーとシュテンの金棒を重ねるボボ。
「『荒重ね夜叉会・仮』っ!!」
ボボはやや手加減した振り抜きで衝撃波を放ち、それなりに眼前の霧のガラクタ魔人の群を消し飛ばした。
一方、死の都のヨーナは、綿の使い魔をお供に都から『天井』まで繋がったいつくもある柱の1つ刻まれた階段を駆け昇っていた。
イソラルルベで着ていた姿隠す衣を2人とも羽織っていた。その下のヨーナ衣服は変わらず件の奇妙な花嫁衣裳のままだった。
「あ~、走るのダルいよぉっ。昇りだし! 飛ぼうよ?」
「ダメです。柱の天井近くに監視する像があって、飛来した者は攻撃されるんですよ。都の死者どもを警戒しているので」
「走っては昇れるよ?」
「この柱、アンデッドが触れるとダメージが入るんですよ」
「も~っ。というか、君は飛んでるじゃんかぁ?」
綿の使い魔は浮遊してついてきていた。
「階段の上を沿う形で飛ぶ分にはギリセーフ判定なんですよ」
「何それ、小手先ルール・・あっ、そっか!」
ヨーナは走るの止め、その場にふわりと浮き上がると、『階段の上を沿う形』で飛び始めた。
「これでセーフっ! 楽ち~んっ」
「さすがヨーナ様。セコいアイディアを思いつくことに関しては冴えてますねっ」
「ばーんっ!」
振り向き様に綿の使い魔を破裂させるヨーナ。
「ギャースっ?!」
「ふふん」
機嫌好く、柱の周囲を螺旋になっている階段の上を飛んでゆくヨーナだったが、再生した綿の使い魔が文句をいいながら追い付く頃に、
「ヨーナっ! 無事じゃったかぁ?!」
星型の光の台座に乗ってトトシ王子と不機嫌顔のノンノンが近くまで飛んできたが、即、柱の天井近くに設置された石像から熱線攻撃と石像兵の大群をけしかけられ大慌てさせられだした。
「おわーっ?!」
「王子っ、お守り致します!」
それを面倒臭そうに見下ろすヨーナ。
「トトシ~、この柱、階段の上以外を飛んで近付くと攻撃されるよ~っ!」
「なんじゃーっ?!」
「それ、先に言って!」
2人はあたふたしたままガーゴイルと熱線に追い立てられて、死の都の地表近くまで降下していってしまった。
「・・ま、いっかぁ」
「ですね」
ヨーナも綿の使い魔は特に構わず先を急ぐのだった。