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トロル農園近くの森の先には『エルフ族』のテリトリーがあるらしい。

活動していた森でチラホラ見掛けた、エルフ族の痕跡を地道に鑑定しまくった結果、その情報をどうにか掴んでいた。

トロル族と違って交渉可能な、概ね友好的な種族と推測できた。

いくら鑑定スキルを取得したといっても、モンスターしかいない森の中をウロウロしてただけの俺はこの世界の一般常識がスコッと欠けている。

とにかく詳しく現状を把握したい俺はエルフのテリトリーを目指していた。


「ふんふ~」


まぁスキルをあれこれ盛って姿を隠してヘタジャイロで飛べばすぐなんだけどね。

ハミングしちまうぜ。


「お? 林道がある。なんか光ってるし」


しばらく進むと森の雰囲気が変わり、まだ昼間なのに蛍かと思うような小さな発光が、眼下の森に無数に見えるようになり、空からだと緑の溝って感じの林道も見え始めた。


「降りてみっか」


降下して鑑定してみると、発光しているのは森の魔力が強く、森がしっかり管理されて大地の祝福を受けているかららしい。

サバイバルした森ではあまり見掛けなかった。精霊の『ブラウニー(土)』と『ドリアード(植物)』をちょいちょい見掛け、小妖精の『グリーンピクシー』や『ブラウンピクシー』もいた。

レベルの高いモンスターが多いようだが、いずれも安定している様子だ。


「林道にはやっぱ魔除けが利いてるな。鑑定!」


魔除けは『悪意あるモンスター』を退けるタイプ。俺は、少し様子を見て、問題無さそうなのでそのまま魔除けの林道に着地した。


「へへっ、何しろ『中の人』はピュアな男子高校生だかんなっ!」


俺は、おどろ帽子を被り直し、機嫌好く林道を歩きだした。


「ふぁ~、林道とはいえ整備された道! 文明感じるわ~」


しばらく野生暮らしだったかんな。

俺はいちいち感心しながら、完全に観光気分で林道歩いていた。

すると、


「っ!」


スキル『気配探知』で林道の先に気配を感じた。モンスターの気配じゃないが、姿勢が低いな? 止まってる。かなり落ち着いた気配だ。

俺は今、歩いてる林道を鑑定した。足跡を見る。人型の生物の足跡。単独。靴を履いている。軽装。ある程度、訓練された身のこなし。前方の気配と想定される体格が一致。たぶん若い女性だな。

エルフ族は耳がいいという。俺は耐久潜行や迷彩がまだ掛かってるのを確認してから、林道から脇の森に入り、林道に沿って素早く移動を始めた。



林道の先に、エルフ族がいた! 座って、保温効果のあるらしい魔法道具の陶器の水筒から注いだ茶らしい物を飲み、クッキーっぽい物を食べて休憩しているらしかった。

十代後半くらいに見えた。女子だ! 耳が横に長い! うおおっ、エルフ族だ! アニメとかゲームで見たことあるヤツ。

スタイルも良くて美人だが、俺は今、茄子だからか?『造形のクオリティ半端無い』とは思ってもそれ以上の感情は涌いてこなかった。

相手は軽装だが武装はしていた。小剣と弓を持ってる。この世界の住人ならスキルや魔法も使いそうだ。

鑑定すると『鑑定された』とバレるからできないが、たぶんレベルは11前後かな?

最大の特徴は左目だった。眼帯をしていた。特別な魔力は感じないから普通に左目が不自由なんだろう。

繁みから見ていた俺はしばらく考え、


「・・・」


俺は繁みから立ち上がり、


(警告、無策(むさく)


ナビに怒られつつ、スキルを全て解いた。エルフの人とめっちゃ目が合う。


「ぶっふぅっ?!」


お茶とクッキーを吹くエルフの人っ。

俺は構わず、ずんずんと魔除けの林道の中に足を踏み入れ、エルフの人に歩み寄り始めた。


「ななななっ???」


仰け反って弓を手に取るエルフの人! 近付く俺っ。


(警告、不審者)


ナビの言い方っ!


「俺は、悪のキラー茄子じゃない。弓を下ろしてくれ」


「喋った??」


「まずは聞いてくれ、俺の今日までの苦闘の日々を」


俺は一方的ながら、なるべく手短に、たぶん『転生』してからの経緯をエルフの人に話した。

ほぼ森でサバイバルしてただけだから意外とすぐ話し終えてしまって、自分で拍子抜けしてしまったがっ。


「・・というワケだ」


エルフの人は途中で弓をつがえるのに疲れて、引くのはやめたが弓は手離さなかった。


「その『道の駅』とか『トラック』とかステータスとかスキルとかなんとか、というのはよくわからないけど、君は『チキュウ世界』からの『来訪者(らいほうしゃ)』なのかもしれないね。嘘でなければ!」


「チキュウ世界や来訪者って、概念はあるんだ」


「ごくたまにあることだから」


エルフの人は立ち上がり、軽く飛び退いて距離は取ったが、弓でつがえる手前の構えの体勢を取るのはやめた。


「でもキラーナスに転生? するってのは聞いたことないよ」


「そっかぁ。この世界的にもレアケースなんだ」


ほんと、なんなんだろうな? 俺。


「・・私は、ユッカナ・ブロッサムウィンド」


「英語?」


「エイゴ? 何??」


言語が変換されてるのか。共通語より古い言い回し?


「なんでもない。えーと、ブロッサムウィンドさん、でいいか?」


「いや、うん・・ユッカナで構わないけど」


「じゃあ、ユッカナ! 俺の方は・・どうも茄子になった時に名前、忘れちまったみたいなんだ」


ソロ活だったからこれまで特に不自由はなかった。


「君、『自分は元人間だった』って思い込んでるだけじゃないよね?」


ジト目で見てくるユッカナ!


「怖いこと言うなよっ?」


そこそこあり得るところが恐怖っ!


「フフフ、じゃあ・・仮に、来訪者の勇者の名前にちなんで『ダイスケ』でいいんじゃないかな? 有名だし」


何ぃ?! 俺以外に既に地球から来た勇者がいたのかっ!


「勇者ダイスケ! やっぱ、魔王とか倒したのか?」


「え? 倒してないよ? 1年くらい前に、魔王に深手を負わせたみたいだけど負けちゃったんだって。だからもう、今、世界は場所によっては不安定になってるんだよ?」


魔王に、負けたんだ・・


「なんだ。ダメじゃん、ダイスケ」


「友達みたいに言ってるよっ、というか、君の名前はダイスケでいいの?」


「ん、それでいい。なんか凄いしっくりきた。俺、名前はダイスケにするっ!」


というワケで、俺の名前はダイスケになった!!

よっしゃ、場合によっては『(しん)ダイスケ』の無念は、この『茄子ダイスケ』が晴らしてやろうじゃないのっ?!

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