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水の魔力を含んだ泡があちこちに浮かんだ結晶化した縁取りの浅い水場がいくつも続く『一の試練の島』で、ユッカナは砂塵のマント+2を使って巻き起こした砂嵐を構えた弓につがえたミスリルの矢+1に集めた。
「穿つ!『烈・サンドスター』っ!」
砂塵の矢は彗星のように水棲モンスター達の群れを撃ち抜いていった。
白魔のコート+2を着込んだミミルも怪魚殺しのロンデルを構え、吹雪を巻き起こした。
「犬が居なくても打てるっ!『ノーザンブロウ』!!」
冷気を纏った範囲斬りを放ち、水棲モンスター達を切り裂き凍結させていった。
ゼノロオンもルググメヴィス失った愛用のポールアクスの代わりにミミルが以前6本腕の七闘将から盗んで調整していた『鬼神の大戦斧』を大きく構えた。
「クセ強いんだよなっ、この武器!『凶・大震斬』っ!!」
派手に水飛沫を上げて地を打つと、分裂した振動の刃が大型の水棲モンスター複数体を切断していった。
執事とメイドコンビも続く。
「ノンノン! 我らもっ」
「ボボさんっ、心得ました!」
やはりルググメヴィス戦で武器を失っていたボボとノンノンもミミルが盗んだ『鬼神シリーズ』の太刀と金棒を構えた。
「荒重ね・夜叉会っ!!!」
2人で武器を振り抜き、発生した斬撃と衝撃波を合わせ、大型の水棲モンスター複数体を粉砕した。
雑魚は粗方片付いたが、超大型個体『レイククラーケン』は健在だった。
イカともタコともつかないモンスターに、星形の光の台座に乗ったトトシ王子が寄り合う星々のタクトを振るって応戦している。
「余は、ダイスケの足手まといにはならんのじゃっ!『スプライトビッグソード』っ!!」
トトシ王子は巨大な光の柱を5本造りだし、レイククラーケンに突き刺して焼き払い打ち倒した。
他のモンスター達も早々に駆逐された。
これに呼応し、一の試練の島の高台に転送祭壇が迫り出して出現する。
ここ試練の島々はその名の通り13の浮遊島で、天宮を目指す選ばれた修行者が段階ん踏んで試練を乗り越えて進んでゆく、聖地だった。
ユッカナ達は柱の森を出発した時点でダイスケのステータス判定で全員レベル30台には成長していた。
だがダイスケとネッカイとの差は大きく、このまま同行して運命連鎖スキルよって導かれた戦闘に突入すると今度こそ全滅しかねないと、ショートカットルートに向かったダイスケとネッカイと一旦別れ、特訓を兼ねてこのルートに挑んでいた。
「はぁ~っ、まだ1個目の島なのに超疲れたんだけど? というかスケジュールおかしくない? 柱の森で魔女っ子にちょっかい掛けるヒマも一切無かったしっ。凄いストレス! ファーっっ!!!」
嫌過ぎて奇声を上げるミミル。
「ダイスケ達も上手くやっているといいけど・・」
ミミルに構わず、空の向こうを見上げるユッカナだった。
俺は本性の巨体になったネッカイの頭に乗って空間のねじ曲がった積乱雲の空域、『飛竜海』に突入していた!
柱の樹の琥珀を食いまくったネッカイは『グランツリー・ガルム』というもう神獣と言ってもいいようなモンスターに進化し、レベルも57に上がっていたが、突入して既に丸1日飛びっ放しだ。
内部は暴風雨に雷、雹と荒れまくりで、この空域は飛行する竜族の巣でもあるらしく、竜系モンスター達ともかち合いまくり!
ユッカナ達と一緒に飛行ハウスで突っ込んでいたら大変なことになっていただろう。
「ネッカイ、大丈夫か? 超回復また使ってやろうか?」
(いい、何度も使うと余計バテる。それより我輩、どっかで仮眠を取りたいぞ? ん、また来おったっ、竜ども!)
雷属性の下位竜『イエローワイアーム』の大群が迫ってきていた。電撃のブレスもバンバン撃ってくる。
ある程度は覆っている風の結界で防げるが、ネッカイは当たるの面倒がって回避した。
(居ねっ!!)
ネッカイは視線に威嚇の魔力を込める『獣王魔眼』を使い、イエローワイアームの半数を昏倒させて落とし、残り半数は追い払った。
(推奨、ネッカイに睡眠)
「キリがないな。一度大きな漂流物で休もう。結界は俺が張る」
(うむ・・)
飛竜海にはジェム原石ベースの小さな浮遊島や、大破した飛行船が集まった物等がよく漂流していた。大きな物は館2つか3つ分はある。
飛行船は他のモンスターの巣になってる可能性が高いから俺はジェム原石ベースの浮遊島の内、状態のいい物の1つでネッカイに休息を取らせることにした。
島に着陸して、俺が見付かり難い『秘匿結界(200P)』を張ると、ネッカイは収納魔法の空間から出した食料や必要な素材を山盛り出し、ガツガツ食べて満腹になると。
(5時間は寝る! 絶対起きないぞっ?!)
と宣言してそのまま爆睡してしまった。
「・・ふう」
俺は原石島の尖ってない部分に座ってため息をつき、亜空マントから柱の森で魔女達にもらった『柱の実』を取り出して囓ってみた。
「苦っ?!」
衝撃の苦さっ!!
「え~っ?? なんだよっ、もう・・」
だが滋養はとんでもなくありそうだ。普通の人間なら『普通の範囲』で不死に近いHP最大値まで回復してしまうだろう。
ユッカナ達と別れてから俺も何も飲み食いしてない。仕方が無いからそのまま囓り続け、種も芯もヘタも全部食べた。
「・・ナビ。いや、コニか。龍の魔女とは仲間だったんだろ? どんな人なんだ?」
(冷たい人です。でも、合理的で、私より優しいのかもしれません)
「冷たいのか優しいのかどっちだよ?」
(私は苦手でした。彼女は正しくて、ああいう人が『コニ』であったらよかったのに)
ややこしいこと言ってんな。
「役割、自分で選べたら皆、苦労しないんじゃねーの?」
俺もトラック跳ねられてくなかったし、茄子にも別になりたくなかったし・・
(そうですね。推奨、忘れて下さい。何もかも、運命の連鎖です)
「便利なスキルだな」
(はい)
俺は暫く黙って、ネッカイの寝息を聞きながら、秘匿結界の向こうの大荒れで竜達が騒ぎ続ける積乱雲の世界を見ていた。
それから2日後! 堂々巡りを疑いたくなる飛竜海を飛び続けた俺達は竜達の骨と、そこに引っ掛かったジェム原石と飛行船の残骸てできた浮遊島に着いた。
(気味の悪いところだぞ? 飛ばして、さっさと天宮への転送門のある島にゆきたいっ!)
「龍の魔女に会え、って言われたし、会ってこうぜ? 元勇者の仲間だぜ?」
(負けたヤツの仲間なぞ知らんっ)
「お前はほんと今だけで生きてんなぁ」
俺は呆れつつネッカイから骨の島に飛び降りた。
途中、竜のアンデッド『ボーンドラゴン』に何度か襲われたが今の俺達の敵じゃない。軽く退けて進み、彼女、の前まできた。
「いい姿だ。新鮮そうだね」
不敵な笑みを浮かべる長身で豊満な魔女は巨龍の骨でできた祭壇の前にいた。
祭壇には小さく奇妙な光の渦が逆巻いていた。




