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今回の聖ニザァール武闘大会の予選はABCDの4つのグループに分かれる。

1つのグループに3名ずつのグループが数十組もいるが、これは纏めてサバイバル戦をして残った2組が本戦に勝ち残りとなる!

チーム・茄子ボンバーとチーム・プリンスマスクは同じBグループだった。


「ここは共闘じゃっ!」


「いいですよっ」


どうやらユッカナと王子達は予選では手を組むことにしたようだ。大乱戦の中、互いに背を守るようにして対戦相手をボコボコにしてゆくっ!

大会のルールは、『武器、魔法、特別な装備や道具類の仕様は禁止。3人1組で戦う』とわりとシンプル。ユッカナ達も布の胴着を着ていた。

ユッカナは『砂使い』と『風使い』スキルを体得していたので、砂と風を利かせ、パワーが足りない分、蹴り技や投げ技で戦っていた。

ミミルは『水使い』と『軽業(かるわざ)』と高速化のスキルを体得している。素早く身軽に立ち回りつつ、水を使った強打技で応戦。

ゼノロオンはシンプルにパワーファイターだった。ガイアス族自体が近接戦優位の種族だ。地力の違いのゴリ押しで次々撃破していた。


「『超執事拳(ちょうしつじけん)』っ!」


魔力を込めた溜め打ち拳打で纏めて対戦者達を吹っ飛ばすトトシ王子の護衛執事、ガストンっ!


「『疾風メイド手刀(しゅとう)』っ!」


魔力を込めた手刀の連打で纏めて対戦者達を叩きのめしてゆくトトシ王子の護衛メイド、ミドリコっ!


「ふぉおお~っっっ、『気まぐれ女神真拳(めがみしんけん)魔破旋風脚(まっぱせんぷうきゃく)』じゃっ!!」


光を纏って回転回し蹴りを放って対戦者達を蹴散らしてゆくトトシ王子っ!


(・・あんまりしつこいから適当に教えたのに、完璧にマスターしてますね)


(ん?)


(いえ、なんでもありません・・)


激闘の末、予選Bグループは問題無く、チーム・茄子ボンバーとチーム・プリンスマスクが勝ち残った!

VIP席にもそれなり動きはあったが、宰相のズェイスは席を離れない。が、取り巻きの一人に何か促すと、その取り巻きはその場を離れた。


(ネッカイ)


(よしっ)


ネッカイに追わせ、俺は引き続き宰相の監視を続けた。尻尾を掴んでやるぜっ。



勝ち残り8組は抽選で振り直され、チーム・茄子ボンバーとチーム・プリンスマスクは上手くすれば決勝で当たる組み合わせになった。

控え室に戻ると王子達と一緒になるから通路で人気が無いのを確認して、俺は汗だくのユッカナ達に声を掛けた。


「ポーション+1ずつとブラウンジェムとスカイブルージェムとブルージェムだ。ゼノロオンはポーションのボトル大きめな」


手早く回復アイテムを渡す。


「助かるよ」


「やったぁ~、何味これ?」


「酒が飲みたい!」


ガブ飲みして回復してゆく3人。


「この大会は連戦だ。1回戦後用に+2、準決勝後用に+2・改のポーションとジェムを渡しとく、控え室に置いとくといいぜ? 王子達も自前で用意してるだろ」


「そっちはどうかな? やはり宰相は怪しい?」


「今のところ。見てると魔族探知に掛かりそうな感覚があるし、警戒し過ぎてるし、取り巻きの様子もおかしい。ギルドもかなり怪しんでた。間違いないと思う」


ギルドの連中は交戦前提で開場のあちこちで備えて貰っていた。


「どのタイミングで行くかわからないが、戦闘になったら装備の確保や回復をまず優先してくれ。わかってると思うが、上級魔族は半端無いかんな!」


3人と段取り確認も済ませ、俺は姿を隠したまま、会場に戻った。



元のVIP席を見渡せる通路の壁の上に戻ると、ネッカイが既に戻っていた。


(ネッカイ)


(大当たりだっ。席を外した宰相の取り巻きは魔族だったぞ? 闘技場の裏手の3階の西側に宰相専用のバルコニー付きの部屋があってな、そこに転送門をこしらえていたぞっ)


(手下はどこへ?)


(情報を魔王軍の本営に伝えようとはしていた。だがダイスケの能力で阻害されているようで、何人かの手下が行ったり来たりしておった。手下どもはだいぶ弱っていたな。どうする?)


(推奨、熟考)


(うーん)


俺が考え込んでいると、1回戦が2試合ずつぼちぼち始まりだし、歓声に紛れるように苛立った様子の宰相が席を立った。


(ネッカイはギルドに伝えてくれっ、俺は宰相を追う!)


(わかったぞっ)


俺達はまた2手に分かれ、俺は宰相の部屋のバルコニーへと先回りした。

窓に近付くと探知される結界が張られていたのでカーテンの死角を考慮して伸ばした蔓の先に『目』を発生させて中の様子を伺う。

なるほど、中には確かに小型の転送門の台座と何人かの潜行系スキルで身を潜めたほとんど正体を表した。人型種族に化けた魔族達がいた。

ちょっとキモいが伸ばした死角の蔓にいくつも『耳』を発生させて中の声を聴く。


「術掛けられてんだから、情報覚えてられなくても俺らのせいじゃないじゃん?」


「さっさとこんな国、引き上げて自分でアプサー様に報告しにいけばいいのに」


不満が溜まってるらしい魔族達。そこへ、宰相ズェイスこと七闘将のたぶん最後の1体、ワハクが入ってきた。


「撹乱耐性を付与したはずだっ」


半ば本性を出しているワハク。これまでの七闘将の中で一番魔力が強いなっ。


「あの『対策の対策』をされたのでは?」


「・・っ!」


突然、ワハクは見えない刃を振るって手下達の身体を浅く切り刻んだ!


「ギャーッ?!」


いや、違うっ。これは、文字だ。魔族の言語を手下達の身体に刻み付けていた。


「呪いを持って刻み付けた! 例え記憶を失っても、その傷をアプサー様にお見せしてこいっ!!」


「は、はひぃっ」


手下達は青や緑の血でまみれたまま、慌てて転送門に入り、テレポートしていった。


(警告、認識への干渉で、刻まれた文字自体に妨害が入ってはいますが、ユッカナ達の大まかな情報は魔王軍に伝わったと考えるべきです)


(わかった。対策を)


「誰か、いるのか?」


ワハクがバルコニーへと歩み寄りだした。


(念力・強っ!)


俺は慌てて蔓を引っ込めつつ、各階の建物の隙間あたりをチョロチョロしていた鼠を引っ張り上げて自分がいた場所に置き、自分はミミルが得意な壁這いのスキルでバルコニーの下に隠れ、蔓の多数の耳はもう一度出し直した。


「・・なんだ、鼠か」


気配と足跡は遠ざかり、どうやら部屋から出ていったようだった。


(隠れず戦った方が早かったか?)


(いえ、転送門で逃げられる可能性が高かったかと)


(あー、それな)


なんにしても冷や汗かいた。鼠君もごめんなっ。

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