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俺達は砂漠地帯の街の転送門、海辺の古びた転送門、海辺の街の転送門と経由して、世界最大の国家、聖ニザァール王国国土内の辺境の転送門へとテレポートしてきた。
海辺の転送門近くでは例によって修行と素材収集と持ち道具の生成を敢行していた。
俺のレベルは41、ネッカイは37、ゼノロオンはレベル28、ユッカナはレベル23、ミミルはレベル24、に上昇している!
「お、最初の頃の大草原っぽい」
と言っても、魔力の強い土地らしく果てないような草原のあちこちにジェム原石が露出していた。ここも門は高台にあった。
周囲の野良モンスターも強そうだし素材もゴロゴロしていたが、先を急ぐことにした。
七闘将を纏めて3体倒して既に5日経っている。状況が大きく変わる前にこの世界で一番発達した国で現状を把握しておきたかった。
戦いについてこれなくなったヒポちゃんことヒポグリフは海辺の街のギルドに預けて別れていた俺達は、全員ゼノロオンの東屋付き飛行絨毯に乗り込み、聖ニザァール王国の首都を目指した。
首都に入ると、目立ちそうな俺とネッカイは一応、フード付きのマントを羽織っていた。ネッカイは『服着せられた犬』状態になってるが・・
「俺もニザァール王国は初めて来たよ。今日は祭りか?」
首都は2頭引きの乗り合い竜車が専用道路を走っていたが、基本的にはヨーロッパの観光都市そのままのようで、人(人間族主体だが種族は様々)も相当多く、この世界の基準だとゼノロオンの『今日は祭りか?』となるのも仕方無いな。
「スリ放題じゃんかっ」
「ミミル」
ユッカナに威嚇されるミミル。
(臭いが混ざり過ぎて好かんぞ? この服も嫌いだっ)
服、嫌だったネッカイ。
「う~ん」
(疑問、どうしました?)
「取得し直した単発の上位魔族探知に引っ掛かりそうで掛からない感じだ」
(探知されていることを前提に対策されていると、さすがにわかりません)
「直接探知系スキルや鑑定スキルを使うと気付かれるからなぁ」
(魔族にとってもこの国は目障りですから、近くに上位の魔族が潜んでいてもそれ自体は不思議ではないですね)
「もう魔除けの障壁の中だぜ?」
(推奨、情報の更新)
「だな、精度を上げよう。いるのは確定だ!」
「・・ダイスケ、独り言が激しいじゃん?」
「独り言じゃねーしっ」
ミミルに反論しつつ、俺達は世界の冒険者の総本部があるというニザァール王国首都の冒険者ギルドへと向かった。
ギルドマスターは不在だったが、俺達が総本部にゆくと対応した職員の案内ですぐに念入りに魔力障壁の張られた部屋に通され、探知やら鑑定やら散々された挙げ句、質問攻めになり、参った。
だが一通り終わって納得してもらうと、装備や持ち道具を色々支給してくれた。俺には『上級薬師のレシピ』が支給だ。これは嬉しい!
「今、差し迫ってるのはかつて『女神コニ』住まっていた天宮と、勇者ダイスケの協力者であった魔女達の住まう柱の森の防衛」
先代のギルドマスターで今は顧問をしているという、老いたワーバード族が俺達に対応していた。
「天宮ってのは?」
「天使達の暮らす飛行島だ。魔族が地上に多く現れるとこれに対抗する使命を持っている」
「へぇ」
抗体みたいな?
「女神コニと仰いましたが、それは代替わりする守護者様のことですか? それとも教会の『コニ派』の神のことでしょうか?」
「どちらも合ってる。女神コニは代替わりする。世界を守護する使命は引き継ぐが人格は全く別物になる。信仰対象としては不安定過ぎるから正体は一般にはボヤかしてあるんだ。彼女達は勇者達をチキュウから喚び出し、代によっては共に戦うこともある。勇者ダイスケを召喚した『当代のコニ』も格闘士としてダイスケと共に魔王に挑んだよ・・」
「あのポンコツ、本物だとは・・」
(推奨、殴打っ)
「はいはい・・俺達はどっちに行った方がいいかな?」
「より被害が大きいのは柱の森の魔女達だ。だが、先にこの国の第一王子と第一王女に会ってくれないか? 君達を見付けたら連れてくるように強く言われていてね」
「そりゃまぁ、・・あ、そういや、この首都内で上級魔族の潜めそうな場所や、怪しい人物っていないかな? 俺の探知スキ・・能力で首都のどっかにはいる、って感じの反応はあるんだよ」
「場所や人物・・既に潜入されているという前提か。わかった、ちょっと調べてみるよ」
俺達は一旦、隠された控え室で下調べの結果を待つことになった。
日が暮れた頃、俺達は王城に向かうことになった。
ただし俺とネッカイはスキルを盛りまくって姿を消して、ユッカナ達にこっそり付いて行っていた。
ユッカナ達は『使役モンスター2体は砂漠の戦いで重傷で今は治療に専念させている』という体を取っていた。
俺は魔族に知られてるし、ネッカイも悪目立ちするどろう、と。
ギルドの調べでは怪しいのはいずれも王宮付きの3名。
1人目は騎士団長。先王が亡くなった戦いで死んだと思われたが奇跡的に生還! 以後、真面目に務めを果たしているが、多忙を理由に教会の神聖系の儀式にはほぼ不参加で、以前は無かった度々休暇を取る傾向もあり。
2人目は宮廷魔術師。先の戦いでは勇者ダイスケでは魔王は仕止めきれないと終始、冷淡な対応をしていた。教会とは不仲で、プライベートに謎も多い。
3人目は宰相。空位だった宰相職に半年前に就いた侯爵。優秀と噂はあったが、尋常な有能さではなく、あっという間に国勢の回復に筋道を立てた。一方で、多忙を理由に教会とは縁が薄く、仕事以外の私生活がほぼ無く、休暇中は連絡がつかない所があった。
(探るといってもどうする? 探知や鑑定はバレるぞ?)
「大丈夫だ。俺が『完璧な作戦』をミミルに授けた」
(ふん?)
(忠告、短絡的傾向)
「大丈夫大丈夫、へへへっ」
ほくそ笑む俺。
というワケで最初のカモ、もとい、騎士団長殿が物珍しそうに廊下を歩いていたユッカナ達の所に共の者数名と来た。
「お主達が」
よしっ、今だ! ミミルっ。
「おっとぉっ! うっかり『聖水+2・改』を取り落としちゃったぁっ!!」
ダイナミックに転倒して聖水を騎士団長にブチまけるミミル! 決まったっ。どれだけ上手く化けても魔族は耐えられまいっ。
「・・まぁ、浄められてスッキリはしたよ! ダッハッハッ」
豪快に笑う騎士団長! シロかっ。後の再調査で休暇中は古傷の治療をこっそりしていたことが判明したっ! こっそりしなくていいじゃん?!
まぁこんな調子で宮廷魔術師にも聖水をぶっかけてもらったが、こちらもシロ。プライベートは普通に魔法学の研究をしていただけで『愛想悪い』ってだけの話だった。まぁ騎士団長と違って、ぶっかけた後でめちゃミミル達怒られてたけど・・
最後の宰相は、城中探し回ったがどうも『七闘将殺しのモンスター使い達は聖水をブチまける習慣を持っている』という噂が広まってしまったようで、逃げられちまった。チッ。
ユッカナ達は仕方無く『聖水をブチまけないように』と厳命された上で、第一王子と第一王女との謁見に臨むことにした。
勿論、俺とネッカイもこっそり謁見の間に忍び込む・・




