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回復した俺はとにかく手近な木の上に登って枝と木の葉に身を隠した。完全に野生動物の思考だ。
「取り敢えず、改めて状況把握だ。ゲームじゃないとしたら死んだらゲームオーバーじゃ済まないだろう」
俺は自分のステータスや取得可能スキルを閲覧しまくって確認した。
「うーん・・やっぱこの、地球世界産ゲーム的ステータス表示、高速進化、運命連鎖、クエスト神ボーナス、ってのが特異過ぎるな。明らかに他のスキルから逸脱してる!」
なんか作為的だしっ。
「この4種のスキルは明らかに連動してる。ゲームなら運営が特定ルートのプレイにスゲェ誘導してる! ゲームじゃないとして、スキルの解説からすると・・この世界の神様が? 俺に??」
改めて、そう詳しくもないゲームやアニメや漫画やファンタジー系実写映画なんか知識を総動員させる。
「なんか、魔王的なヤツを倒せ、とか? いやでも、なんで茄子?? なぁ、どうなんだ?」
(・・・)
音声ナビ? は応えなかった。微妙に対話できそうでできないぜっ。
(獲得した経験値でレベルアップしますか?)
「えー?」
今、そんな話してなかったじゃん?
「任意なのか?」
(スキルポイントに変換も可能です)
「お?」
スキルや能力じゃないから軽く見てた経験値の項目を詳しく閲覧すると、確かにそういう解説もあった。
経験値6Pでスキルポイント1Pに変換だ。
「微妙なレートだな・・」
というか、俺の経験値は30のはずだが、32あった。スキルポイントは残60のはずが61ある。
「このちょこっと経験値やスキルポイントが増えてるのは?」
(様々な活動で経験値やスキルポイントは獲得可能です。小数点以下も加算されています。特にリスキーな、瀕死状態からの野菜としての回復と、瀕死に至る程のスキルと身体を酷使した活動は加算が大きいです)
「なるほど・・クエスト報酬頼りでもないんだな」
大体わかった。根本的な所は疑問しかないが、たぶん今考えてもなんともならない。さっさと状況を進めよう。
「レベルアップに必要なポイントと、レベルアップ後のステータスは確認できるか? あと、あんたのことはなんて呼んだらいい?」
(確認可能です。私のことは『ナビ』とでも呼んで下さい)
そのまんまかーい。
とにかく俺は必要なポイントとレベルアップ後のステータスを確認し、特に不満は無かったので経験値30Pを使って『レベル2』に上がった!
テェーテーンテェーンっ!!!
めでたい音楽!!
「ふぉおおっ?! 力が漲るっ。というか実際ステータスも色々上がってるぅっ!!」
最大HPも16に上がったぁっ!
(先程の植物としての回復で滋養が身体に残っていたのでHPとMPを最大まで回復しました。獲得可能なスキルが増え、またレベルアップポーナスでスキルポイント20ポイント獲得です)
「へぇ~、あ、ほんとだ。増えてる。ナビ、経験値でスキルポイント買うよりレベルだけ上げた方が効率よくね?」
(レベルが高くなり、簡単に上がらなくなるとスキルポイント交換の有益性が高まります。逆に、スキルポイントを経験値に変換することも可能です)
「ほぉ~」
育成の自由度高めだな。
ともかく、増えた獲得可能なスキルの中、俺が新たにしたのは・・
「『消化』(20P)、『潜行』(40P)を取得っ!」
(選択スキルの獲得を確認。残りのスキルポイントは22ポイントです)
消化スキルは飲み食いした物を素早く消化してしまうスキル。食あたり対策にもなるようだ。
特にステータスには乗っていなかったが、どうもキラーナスという種族は身体に蓄えた栄養でもある程度回復できるらしい。
植物としての回復を乱発できない以上、回復手段と『食事』の選択肢は多い方がいいだろう。
ゲームじゃないなら餓えも渇きもするだろうしね。
潜行スキルは気配や五感に訴えるあらゆる要素を鎮めて隠れるスキル。現状、おそらく弱々に違いない俺に必須スキルだ!
「ほんと『鑑定』のスキルがほしかったけど、100Pだしなぁ」
一先ず後回しだ!
俺はそれから潜行スキルを駆使しつつ、辺りの森の中をコソコソ見て回ったり、森の端からトロル農園の様子を伺ってみたりしだした。
まず、『普通にトロルや俺達人面野菜以外にもモンスターがゴロゴロいた』っ!
ブヨブヨした白玉みたいなヤツ、デカい虫、岩や植物のモンスター、幽霊っぽいの、どれもそこまで強そうでもなかったが、とにかくあちこちいた。
俺が森に飛び込んで即、遭遇しなかったのは偶然かと最初は思ったが、潜行スキルを切ってる時に近くで気付かずボヤとしていると、普通にザワザワ寄って来られる。
明らかに森に入った時より、時間と共に『引き』が強くなってる感じ。
思い当たるフシが1つしかなかった。
「ナビ、悪臭スキルの効果時間ってどれくらい?」
(悪臭は発動中のみ散布します。臭いはどの程度の濃度で付着したかによりますが、特に何もしなければ数時間で概ね消えます)
「それだ」
ずっと臭くて麻痺して途中で臭さを忘れてしまっていたが、俺が臭過ぎて『この茄子、噛ったろ』と思わなかっただけだったようだ・・。
結果オーライっ! よしっ。
他には『食べられるもの』と『水場』も探した。
何しろ鑑定スキルも知識も無いから、食べ物は見た目、匂い、味、消化スキル頼りだ。
取り敢えず、虫食いのあった植物以外は口にするのはやめた。キノコ類もスルー。ちょっと口に入れて問題無さそうならガジガジ食べた。どれも美味くはないっ!
安全で清潔な水場は残念ながら近くになかった。
なので、他のモンスターのいる水場に一番近い君の枝の上からこっそり潜行スキルを利かせて蔓を1本伸ばし、水に浸して水分を吸収することで確保可能だった。
色々試したが、蔓1本で水のみならそこまで自我喪失のリスクは少ないようだ。
夜になると活性化するモンスターも多いこともわかった! 大型の物や昼間、物陰にいた幽霊的やヤツや、日差しが苦手らしいヤツなどいるわいるわっ。
俺は夜中に寝るのは諦め、昼間蓄えた滋養を消費して徹夜でコソコソ隠れ周りながらやり過ごした。
そうして夜が明けて・・めでたい音楽っ!
(おめでとうございます。シークレットクエスト『ドキドキ、ファーストサバイバルナイト』をクリアしました。報酬として経験値30ポイント、スキルポイント20、『初級草木加工品レシピ』を贈呈します)
「・・ども」
疲れ過ぎて据わった目の俺は森の中の岩場の陰で、虚空から出現した草木加工? の本を受け取った。
「え~と、色々、後にしていい?」
限界だった俺は悪臭のスキルを使って軽くダメージを受けた上で、その場で気絶するようにして眠りに落ちた。
生きて起きれたら、対応改めないと身が持たないぞ? これ・・