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「怪魚の女王に魔王軍の新幹部2体を倒した??『虚偽探知』を掛けさせてもらっていいか?」
ベレスのギルドマスターは困惑しながらも念入りに探知で確かめた後、ベレスの首長や地域の領主や教会や学者達がうるさく言う前にと、報酬代わりに怪魚殺しのロンデルをこっそり譲ってくれた。
リバーマーメイドの墓は上階が破壊されたこともあって後始末が大変そうだが、中から残存のモンスターが溢れだすのも時間の問題なので早急に対処するそうだ。
今回は明らかに『さらに上のヤツ』に報せられたこともあり、転送門の調整をしてくれている内に素材や持ち道具の買い出しを済ませ、俺達は休む間も無くベレスからテレポートして去っていった。
テレポートした先は乾いた草原の中の高台の丘に造られた、かなり古びた転送門だった。
(推奨、休息。おーばーわーく)
「ああ。取り敢えず、皆疲れてるから今日はここで一泊だ」
「ヒポグリフもしっかり休ませよう」
乾いた草原の転送門はそこそこ大きな魔除けの野営地が併設されていたが、土と砂にまみれ風化も酷く、錬成して修理する必要があるな。
俺とネッカイは正直そうでもなかったが、他の2人はもう限界だった。早くにテントで休むことになった。
翌日、身支度を整え、簡単に朝食を済ませた俺達はまだ消さずにいる炉を囲んでいた。
ユッカナが炉に香木を入れたので(魔除けと鎮静の為らしい、キャンプすると彼女はよくやる)香りか立ち込めている。
(・・ダイスケ)
「おう」
実はナビから促されていることがあった。
「え~と。ミミル。今なら俺のスキルを使えば、取り敢えずは安全そうな場所まで逃げられと思うんだが。もう賠償金の分はとっくに働いてるし」
ミミルの意思確認だ。ベレスに着いた時点ではそこまで切迫してなかったんだが・・
「あ~、それね」
ホットココアを飲んでいたミミル。
「バニークラブでいい思いした辺りでバックレてもよかったんだけどさ」
カップを置き、種族的に小さな両手を見詰める。
「また盗んで誤魔化して転々とする暮らしに戻るのも、なんか飽きたと思ってね」
俺の方を向き直るとニッと笑ってきた。
「もうしばらくは付き合ってやるよ。お前といると結構、金になるしな! ヒヒッ」
「・・わかった、分け前はケチらないぜ?」
改めて盗賊ミミルが仲間になった。
当座の目標としていた砂漠地帯まであと少しだが、運命連鎖のリスクがただ事ではないことがわかったので、この転送門付きの野営地を拠点に3日程滞在して色々備えることにした。
ユッカナとミミルは2人で模擬戦をひたすら繰り返して鍛練。
ネッカイは野良モンスター狩りで力を吸収したり素材を胃袋倉庫に蓄えたりするとこになった。
俺も野良モンスター狩りはするが、ステップ帯特有の素材収集と素材や道具の生成も積極的にすることになった。
(推奨、自身のレベルアップとスキルポイントの仲間への使用)
「わかった」
俺はレベルを36から37に上げ、いずれも単発発動で期限1日で解除可能な『負荷増大(100P。負担が増えるが鍛練効果が上がるスキル)』をユッカナとミミルに、『物理防御強化(100P。名前の通りのスキル)』をネッカイに毎日付与することにした。
ネッカイは防御バフさえあれば後は自力で狩って進化できるだろう。
俺に関しちゃ『もう慣れた件』だ。
俺達はそれぞれのトレーニングや収集活動を始めた。
で、3日目。俺はネッカイがややこしいから気を付けていたんだが、当のネッカイの方が派手に暴れ過ぎた結果、『主未満』の格ながらこの辺りの食物連鎖の頂点らしい『村喰いアイアンワーム』の群れを俺の所まで引っ張ってきやがった!
一匹一匹が真の姿のネッカイを絞め上げられるくらいのデカさの鋼鉄のミミズ、といった具合のモンスターだっ。
「ネッカイ! 自分でつついたんなら自分で処理しろよっ? 食べちゃえよ?!」
(一匹食ってみたが硬い! マズい! 臭い! 有毒! こんなヤツ噛んで攻撃するのも嫌であるわっ!)
「・・お前、そういうとこあるよなっ」
土を半ば金属化させた物を毒の粘液を固めた塊を吐きだしてくるし、鬱陶しいっ。
(臭いと気配を覚えられたっ。逃げてもすぐに去らんと野営地を襲われる!)
「うーん・・あれ、公共施設だしなぁ。しょうがない、やるぜ!」
(推奨、鑑定)
相手は知性はほぼ無さそうだし、鑑定ガードの心配は不要かっ。
「鑑定!」
振り返ってステータスを覗き見!
「ネッカイ! 雷属性、蓄えられたかっ?」
(こうか?)
巨大化し、放電する背鰭のような器官を出すネッカイ。
「相手は見た目通り電撃に弱いが打たれ強く生きてる限り再生力も高い! 脳、脊髄、心臓に当たる場所を一気に潰す必要があるっ! 一気にやれっ。俺は逆から別の攻撃試してみる!」
(心得た!)
ネッカイは向かって左手に反転してゆき、俺はグレート・ヘタウィングに切り替えて右手に反転した!
「ノォメェエエエエエッッッ!!!!」
毒液を撒き散らして喚き散らす村喰いアイアンワームの群れ! 戦うの嫌過ぎるっ。
「散々食らってポイントで獲得可能になった俺の新技! 行くぜっ『重力球』!!」
俺はザリザリに文字通り死ぬ程食らった重力の玉を、右サイドの個体群の頭部、背の真ん中と、腹側の真ん中のやや上辺りに纏めて放った!
ヴゥゥンンンッッッ!!!!
重力の玉は圧縮した後、炸裂し、右サイドのワームの群れを全滅させた! しゃっ。
「ワォーーンッッッ!!!!」
ネッカイも雄叫びと共に『広域豪雷』のスキルを発動し、電撃で俺が狙ったのと同じ位置を貫いて左サイドの個体群を仕止めた!!
「よ~し、ネッカイ。コイツらからはグレイジェム(金属)、ブラウンジェム(土)、パープルジェム(毒)が取れる。人里も遠いし、ジェムを取って力の無くなった死骸は放置でいいだろ?」
(ん? 特には関心無いぞ?)
中型犬サイズの仔犬の姿に戻るネッカイ。興味無しかよっ。
「どれも俺は持ってるから。全部ネッカイが食っちゃえよ」
(何ぃっ?! また我輩に『石』を食わせる気かっ? こんなヤツらから出た物をっ、いーやーだぁーーっっ!!!)
「水系のスキルで洗ってやるからさ」
なだめすかして、どうにか取り出したジェム石を全てネッカイに食わせた。
3日のトレーニングと収集で可能な範囲で素材と道具類は揃い、俺のレベルは38に、ネッカイのレベルは33に、ユッカナのレベルは20にミミルのレベルは21に上昇っ!
だが、負荷増大スキルのせいでボロボロになったユッカナとミミルがダウンしてしまったので、野営地にもう1泊してから、俺達は記録を残したくない転送門ではなく飛行で、直に砂漠地帯を目指すことになった。




