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・・翌日、俺達はビッグリバーのベレス側の岸の廃墟に来ていた。

今は酷い有り様だが廃墟から崖までは道が整備されていて、崖下から崖の上までは3段に別れた魔力式のエレベーターがあり、2段目より上のエレベーターの周囲は簡易拠点にもなっていた。

平時であれば陸路で橋を渡るのが一番簡単で安かったようだ。


「よっしっ!」


念入りに準備体操をして、その場でピョンピョン跳んだりしていた俺はビッグリバーに向き直った。


「本気、なんだな?」


ベレスのギルドマスターの鯉型のワーフィッシュ族の男(容姿の基準が違い過ぎるからもしかしたら女かも??)は、やる気満々の俺に戸惑っていた。


「呪いの針のモンスターにブッ壊されたこの橋っ! 俺が掛け直すぜっ? その代わり、『リバーマーメイドの墓の鍵』貸してくれよな?」


「まぁ、あそこは危険な最深部以外は調査も採掘も済んでるし、構わないが・・」


「じゃっ、念力!」


俺は草編みのリュック+3(またまた強化した)から、植物の触媒グリーンジェム13個、土の触媒ブラウンジェム13個、蔓柳(つるやなぎ)の苗(この辺りの自生種)を9つ、聖水を20本、ポーション+2も20本、引っ張りだした!


「ダイスケ、無理は禁物だよ」


(ほう、見物(みもの)ぞ)


「お前、ほんと高価素材じゃんじゃん使うよな」


(予測、シークレットクエストがありそう)


ナビ、事前にクエストを把握してるワケでもないんだ。ま、いっか。いくぜ!


「魔力ブースト! 魔力ブースト! 魔力ブースト!『土の祝福』!『植物の祝福』! ・・・『芽吹く大地・改・蔓柳のビッグリバーアーチ』っ!!!!」


全身を発光させた俺は全ての素材を使い、スキルを発動させた!!!


ドドドドドドドッッッ!!!!


こちら側の岸から遥か先の対岸までっ、9つの蔓柳の苗が雪崩ように急拡大して伸びてゆく! 水分はビッグリバーから取ってる。川に残ってる橋脚伝いに川の底にも根を張らせる! 川のモンスター達も大慌てで逃げてゆくぜっ。

こちら側の岸も張り出した根で廃墟がブッ壊されてちょっとした騒ぎにもなった。地面が荒波のごとしっ!


「ダイスケ! もう少し抑えるんだっ」


「止まらねぇぜっ!『ダイスケ大橋(おおはし)』と命名だぁっ!!」


「命名はいいが、後で通行し易いようにしてくれっ。ギルドが領主や商会や街の首長に文句を言われるっ!」


「歴史に名を残す偉業も間近で関わるといい迷惑なのかもしんないねぇ・・」


(ハハハッ! 愉快っ、さすが次代の勇者っ! これぐらいでなくてはならんっ)


(警告、やり過ぎ)


岸周辺はメチャクチャになってしまったが、『超巨大蔓柳の生きた橋』がビッグリバーに掛かった!!!


デレデデッテッテーーッッ!!! めでたい音楽!


(・・ふぅ、しょうがないですね。おめでとうございます! シークレットクエスト『ビッグなブリッジをビルド』をクリアしました。報酬として経験値1000ポイント、スキルポイント800、『河童(カッパ)のレインコート』を贈呈します)


なんか、ダジャレみたいな名前の防具が虚空から出てきたぞ?


合羽(かっぱ)か、もらっとこ。・・加減に関しちゃ『中級土木のレシピ』も役立ったな」


「よく言うよっ」


「水被ったし」


2人とも酷い格好になっていた。


(うむっ、良い橋だ! ここに記念として昨日の夕飯の鶏の骨を埋めておこうぞっ)


ネッカイがそこらに穴を掘って収納空間の力で出した鶏の骨を埋めだし、ベレスのギルドマスターは高々と盛り上がった蔓柳の根の上まで吊り上げてしまっていたが・・とにかく、成功っ!


「このダイスケ大橋は、橋が生きてる限り劣化しないし、例え破損しても『回復』できるからな! 光属性付きだぞっ?」


「ああ、わかったわかったっ。道としての調整は街の方でやる。・・ほら! リバーマーメイドの鍵だっ、後でちゃんと返すんだぞっ?」


ギルドマスターは根に釣られたまま、装飾された鍵を投げ渡してきた。



ギルドで手に入れた地図を頼りにヒポグリフと高速ヘタジャイロで上流へと跳んでゆくと、やや川幅が狭まり、流れが速く、両サイドの崖に巨大なリバーマーメイドの像が掘られた場所に来た。


「派手だな。ここか」


(ふんっ、大袈裟な場所を作ったものだ)


俺に抱えられて浮かんでいるが、物言いは引き続き殿様だ。


「使い方はこれでいいのかな?」


俺はリバーマーメイドの墓の鍵を掲げ、鍵に魔力を込めた。


「っ!」


轟音と共に川に渦潮が起こりっ、石の神殿のような物が迫り上がってきた!


「おおーっ! こりゃ凄い」


(早く降りようぞっ、『蟹』がいるっ!)


「墓、かなり大きいね」


「空気通ってんの?」


(推奨、慎重に)


俺達は水浸しのリバーマーメイドの墓に降り、ネッカイがそこらにいた蟹系モンスターを中型犬サイズのまま狩りまくって(普通に強い)気が済むと、石の入り口が独りでに開いた墓の中へと入っていった。

ヒポグリフは崖の上なんかの安全そうな場所で待機だ。なんか川から際限無く蟹モンスターが涌いてくるかんな・・



内部は湿って冷え冷えとしていた。俺達が近付くとあちこちにある燈台(とうだい)(船の目印のじゃなくて、灯りの台)に緑色の陰火(いんか)が灯った。

陰火は冷たい炎だ。生ある者が触ると命を吸われるので要注意!

墓の中は煙たくはなかったが、どことなく香の匂いがした。


「いい匂いする」


「石材に質の良い香り石の成分が混ざってるね。清潔なのもその為かもしれない」


ユッカナは入ってすぐに眼帯を取っていた。


(指摘、この石材は高額売却可能)


「えー? 売れるって言ってもなぁ?」


墓、なんだろ?


「ちょっと、皆。勝手に進んだり物に触ったりしないでよっ? 危ないし!」


マップや資料を神妙な顔で確してたミミル。


(我輩が真の姿に戻って突進すれば罠と雑魚モンスターども綺麗に片付くぞ?)


「大雑把なこと言ってるよっ、ネッカイ。ここ狭いんだからね? あんたデカくなったら『詰まる』だろ? それにトラップの中には移動型とか広範囲影響型とかややこしいのもあるんだから、大人しくしてな!」


(・・我輩、叱責されたのか?)


「まぁ怒られてる内が花、って言うからな」


(初めて聞く格言だぞ?)


「チキュウの格言さ」


(う~む?)


そんな調子で俺達は薄暗く冷たい、リバーマーメイドの墓の奥へと進みだした。

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