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今回、纏めて更新してゆこうと思います

気が付くと俺は樹上で()っていた。


「おおおっ???」


見たこともない大木に、人間1人分くらいの巨大茄子(なす)が多数成っている。俺もその1つだった。

光沢ある紫の楕円ボディ!!

俺以外は眠っているようだが全ての巨大ナスには落書きしたみたいな顔があり、見えて声出てるから俺にもあるっ!

俺は『人面巨大茄子』だった!


「・・・??」


いやいやおかしいだろ? 意味がわからんっ。着ぐるみ? いや、生身だぞコレ?? 待てっ、思い出せ!


え~と・・俺は部活がテスト期間で休みだった日曜、婆ちゃんの頼まれて道の駅で特売の茄子を山盛り買った。


ついてきた下の弟はアイスを買って、再来年には東京か神奈川辺りの専門学校に進学するつもりだから、こういうマッタリした感じも貴重かな? なんて思っていたら・・


前方に居眠り運転の土建屋トラック! なんでこんな細い道に入って来てんだっ?! 突っ込んでくる! 角度的に弟の方だっ! 俺は咄嗟に庇ったっ、トラックは俺と茄子をぶっ飛ばすっ!!


「・・・で、人面巨大茄子に?」


いやいやいやいやっ! 飛躍っ、飛躍ぅっ! まず『人面巨大』ってオカシイだろ??

輪廻転生? みたいなので『(なんじ)、次は野菜に生まれ変われ~』っていうんだったらまだそういうもんかぁ、て気がするがっ、人面巨大??

俺が混乱していると、


ズンっ! ズンっ!


地震? 地震が近付いてくる??


「ええ?」


巨人だ! 俺達が生ってる木の3分の2くらいの体長の、6頭身くらいの原始人みたいな格好のドデカい編みカゴを持った巨人が2人、ナスの木に向かって歩いてくるっ。

巨人?! いや、ひょっとして俺達が小さいのか?? というか、俺は周りの景色をようやく把握したっ。、


「マジかっ?」


人面茄子だけじゃなかった! ここ、『農園』だ!

人面キュウリ、人面トマト、人面ソラマメ、土の見える地面には半ば埋まっているが人面ダイコン、人面ニンジン、人面カボチャは顔が全部見えてるな・・いずれも俺達同様に巨大だ!

少なくとも俺には『人間並みにデカい』と認識できたっ。


「はぁ~、したっけ、今季も『キラーナス』がよう生っとるべしなぁ」


「んだべし、んだべし。豊作だべし」


めちゃ訛ってるが、俺達を見て満足げに話す巨人達っ。


「『眠り花粉』も肥料に混ぜてたぁんとやったべしから、大人しいやぁ」


「皆、しゃーんと生っとるべしさぁ」


そう言って俺達の1人を無造作に枝から()ぐと、そのままシームレスに口に運ぶ巨人Bっ! シャリっと爽やかな音を立てて齧られた俺達の1人は目覚めっ、


「ギィヤァアアアアァーーースゥッッッ!!!!」


絶叫っ! ですよねっ。身体半分くらい持ってかれたもんね! しかし容赦なくヘタまで喰い尽くされ、地面に捨てられる目覚めた俺達の1人のヘタぁっ!! 合掌っ。


「ぷはぁっ、やっぱキラーナスは踊り食いが一番べしなぁ! オラぁ、ヴィーガンべしからっ! したっけ、こりゃ高く売れるさぁ」


「べしともっ! べしともっ! キラーナスも、ちょっとぁ『トロル農協』さ試し取りするべしさぁっ」


そう言って2人の巨人達はズンズン巨大ナスを捥ぎだした。結構近いっ!


ぐぉおおっ?! キラーナス? トロルってゲームとかアニメに出てくる巨人だよな? ヴィーガン? 農協?? コイツら農業を・・ヴィーガンとか、そんな概念持ってるんだ・・いやいやいやっ! 俺は混乱してきたっ。


マズいっ、マズいぞっ! 動けねぇっ。生ってるだけだ俺! 手も足ででねぇ、というか手足が無ぇっ!

話せるなら交渉はできないか? だが『人面野菜の踊り食いを楽しむカルチャー』を持ってるような連中だっ。限りなく可能性は低い!


ううっ、せめて身体の自由が利けば・・どうなってる? 俺の身体どうなってる?? ほんとにただ生って、思考して、五感と発声能力あるだけか?? 俺は、どうなってる???


(ステータスを見ますか?)


「えっ?」


頭の中に声がしたっ。平坦な女性の声。


「誰?」


(ステータスを見ますか?)


リピートされただけだ。なんだ??


(ステータスを見ますか?)


平坦だけど押してくるっ。


「お、お願いします・・」


俺が押し負けると、目の前に平面画像が立体表示された!


「おおお? ゲーム??」


それは確かにゲームの『ステータス画面』に見えた。


「名前『未定』種族『キラーナス亜種食用体(しょくようたい)』レベル『1』力、素早さ、賢さ・・ええっと、スキルは・・『光合成』、『水消費限定土養分吸収』、『水吸収』、『弱耐性・日焼け』、『弱耐性・病気』、『高栄養価含有』、『美味肉体』、『芳香(ほうこう)肉体』・・めちゃ高級農作物感ある??」


よくわからんが野菜として優れていても、たぶん相当弱いぞコレ?!


「他には・・『蔓伸縮(つるしんしゅく)』?、『共通語マスター』、『地球世界産ゲーム的ステータス表示』、『高速進化』、『運命連鎖(れんさ)』、『クエスト(かみ)ボーナス』だけか」


ゲーム的ステータスってのは今見てるコレだな。共通語マスターでヤツらの言葉を理解できてる? 高速進化はなんか強そう。運命連鎖?? クエスト神ボーナス??? ちょっとわからないが、あとは蔓伸縮、これは使えるんじゃないか?


「おっ!」


使えると考えると、ちょうど手足のあるべき辺りから合わせて4本! 蔓が飛び出したっ。伸び縮みする!


「いいぞ! 手も足も出たっ」


巨人達(トロル?)を見てみると、捥ぎながらだいぶ近付いてきてるっ。俺はヘタの上が枝と繋がったままだ! 引き続きマズいっ。あんま大声も出さない方がいいな!


「他には・・『獲得スキルポイント200P』? 他の数値よりちょっと大きいな?」


(スキルポイントを消費してスキルを獲得しますか?)


「っ?!」


(現在、貴方が獲得できるスキルは以上です)


ナビ声? と共に画面に表示されたのは、


『蔓シェイバー 20P』『蔓バインド 20P』『蔓ドリル 20P』『蔓ダッシュ 40P』『蔓スプリング 40P』『ヘタカッター 20P』『ヘタジャイロ 20P』『ヘタスパイク 20P』『ナスの踊り 40P』『威嚇(いかく)の叫び 40P』『悪臭 40P』『渋い汁 40P』『自爆 100P』


だった!


「うおおお??」


「なんか、声がしたべしか?」


「したっけ、起きたら育ちが悪くなるし、悪さするべしさぁ。はよ摘むしさぁ」


巨人達が俺の声に反応して収穫の手を止めて辺りを広く探りだした! 俺のバカっ。


「ふぅふぅ・・」


落ち着け! 200ポイントだっ。この200ポイントで『生き残れるスキルの組み合わせ』を考えるんだっ! ゲームだかなんだかっ、こんなワケわからんまま茄子として喰い殺されてたまるかぁ!!

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