表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編

そうして二人は月を見上げる

掲載日:2009/09/01

 ある日の夜。


「君に、伝えたいことがあります」

「はい、なんでしょう?」

「月が綺麗ですね」

「そうですね」

「……どうやら、伝わらなかったみたいですね」

「……はあ?」

「帰ったら、夏目漱石のことを調べてみてください」



 翌日。


「調べましたよ」

「では、返事をいただけますか?」

「“わたし、死んでもいいわ”です」

「……はい?」

「帰ったら、二葉亭四迷のことを調べてみてくださいね」



 翌日。


「調べました」

「そうですか」

「昔の日本人は、ストレートな表現を“無粋”だと嫌ったんですね」

「それにしても、なんて遠回しな比喩を使うこと!」

「では、ストレートに言いましょう」

「はい、そうしましょう」


「僕は、君を愛しています」

「私も、あなたを愛しています」



 数十年後。


「今日も、月が綺麗ですね」

「わたし、死んでもいいわ」

「……もう、洒落になりませんよ?」

「まあ、無粋なこと!」



 そうして二人は笑い合い、いつまでも月を見上げるのです。




【解説】(規定文字数に足りないため、駄文を少々)

乙女の生活とは微妙に違いますが、1Pモノの練習作でした。今回の課題は『会話のみで物語を作る』と『比喩の活用』です。比喩については、夏目漱石・二葉亭四迷の有名なエピソードを使わせていただきました。(教えてくれた某さまに感謝!)


【エピソード】

夏目漱石、二葉亭四迷の両先生が『アイラブユー』という言葉を翻訳するにあたり、直訳の「愛してる」を無粋(日本人には無い感情)だからと嫌って、

夏目漱石:「月が綺麗ですね」

二葉亭四迷:「わたし、死んでもいいわ」

と超訳した、というエピソードです。


この作品では、回りくどい告白をしたインテリ男性に対して、女性がウィットに富んだ返答をするという形で使ってみました。

(蛇足解説:ラストの数十年後は、まだ生きてる設定です。もうそろそろお迎えが来る年頃になり「わたし、死んでもいいわ」がシャレにならんぞーというダンナのツッコミに、奥さんが文豪気取りで「女に年のことを言うのは無粋」と対抗するという、仲良し夫婦の話でした)


なお『比喩の活用』という課題については、「月/死」の台詞を一度「愛してる」に置き換え、最後に元の意味へひっくり返すという使い方をしてみました。


【追記】

この作品は『月が綺麗ですね』という一連のエピソードが一般に知られていることを前提としております。エピソードそのものが真実か否か、等のご質問にはお答えできませんのでご了承ください。

作者自身、ライトな知識をもとに想像を膨らませて書いておりますので、深すぎるご意見を寄せられて困惑しております……申し訳ありませんが、ご配慮くださるとありがたいです。

↓作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたくない方は、素早くスクロールを。











 どうも、自分の作品が理解されにくいらしい……。特に、比喩の使い方が下手(細かすぎて伝わらない系)と自覚したため、「分かりやすい愛の告白シーンを掌編にしてみよう!」と思い立って挑戦。なぜ会話のみかというと、目配せとか、頬を赤らめるとか、そういうしぐさで愛を伝えることを封印したかったので。しかし……結果的には、とんでもなく分かりにくい作品になりましたっ。撃沈! (でも、大人の方からはそれなりに好評……嬉しいけど心境複雑っ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 大好きなひとに  今宵も月が綺麗ですね と いつも言われ なんのことかわからず(笑) 調べていたらこちらへ。 もちろん わたし 死んでもいいわ と(笑) 今は別々の人生を歩んでいますが …
[一言] 短い台詞と空白の行間が、逆に彼ら二人の姿を浮き彫りにしていると感じました。 理解されにくいと書いていらっしゃいましたが、読者に解釈の余地を残した、淑やかな余韻を感じる作品と出会えて、私は大…
[良い点] 月と死の意味を比喩⇒直訳⇒比喩で持っていくのが 登場人物の年齢層(勝手に推測しましたが) からしても妥当な反応でリアリティありました。 短いし会話文しかないけれども ストーリーがしっかり…
2015/01/04 21:43 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ