Re56 魔法少女と開戦
「狙うなら動ける状態になっているノモルワにすべきだわ。他はまだ卵みたいだし、三体に集中すべきよ」
無限にも思えるほど広がる白い異空間。
そこにいる無数のノモルワ達を見て、時音さんが冷静に作戦を立て始める。
「戦力的にはメグルと淳子、真央と私、操子と虎馬で一体ずつ見て、臨機応変に互いのチームのフォローも考えるべきね」
「そう、ですね」
正直ちょっと操ちゃんとコマちゃんのチームが戦力的に厳しそうだけど、それ故に時音さんもチーム同士のフォローを考えてと言ったんだと思う。
それにあの二人は仲が良いし、チームとして動くなら二人は一緒の方が良い動きもできるはずだよね。
「一番完全体に近いと思われる右の奴、あれはメグルに任せるけどいいわよね」
「う、まあ、はい」
魔王が赤い血管の浮き出た黒い巨人のような物、つまりノモルワを指して言う。
正直アレは魔王にやって欲しかったけど、こっちはノモルワを倒した実績があるだけにやらされるだろうとは思っていた。
「それにしても、私達がここまで来たって言うのに動きが無いわね」
魔王の言葉に私も今更ながら驚く。
そう言えば、そうだ。私達がここに侵入したのに迎撃の一つもないのは何故だろう。
「あれらはまだ完全体じゃないから、そこに意志のようなものが伴っていないんじゃよ」
「あれ、ノモルワールさん」
まさか一緒に来ているとは思わなかったので、驚く。ここに来て驚くことばかりだ。
「こちらから仕掛けるか、不用意に近づかない限りは襲ってこないじゃろう」
「ということは先手が取れると言う事になるわね」
嬉しそうに嗤う魔王。うわ。この顔は悪魔みたいだ。
「メグル、アレ使いなさい」
「アレって……まさか月に使ったヤツですか」
星壊収束砲なら絶対打ちたくない。アレをこれ以上使ったら私の寿命がかなり縮んでしまう。
「そうよ、あれならアイツら全部吹き飛ば――」
「嫌です」
「な」
こんな食い気味に断られると思っていなかったのか、目を見開いて驚く魔王。
「何でかしら、このチャンスに撃つにはいい技だと思うけれど」
「アレは使うと寿命が縮まるので嫌です」
「あら、とんでもない威力だと思ったら、そんなデメリットがあったのねえ」
なんか嬉しそうに嗤ってるんだけど、この魔王。はぁ、やだなぁもう。
「人の弱み握って嬉しそうにしてないで、他の案で行きましょう」
「あらそうね。じゃあメグルが精霊国でやったっていう対規模攻撃なんてどうかしら」
「あぁ、アレですか」
再利用を最大限活用した再利用の再利用、無限に続く再利用で圧倒的な手数の魔導砲をぶっ放す技だ。
「アレなら、良いですよ」
「負担は無いものね」
「何で知ってるんですか……無いですよ。大丈夫です」
「そ、なら私はそうね……レールガンでもぶっ放すわ」
「初手に大火力を集中して出来るだけ数を減らすってことですか」
「そういうことよ」
それには賛成したいけど、まだ完全体でないノモルワとは言え、あの三体の内何体を魔導砲で倒せるか。
完全体のノモルワと戦った時には星壊収束砲を使うほど火力が必要だった。
出来る限りの火力をぶつけたいけど……。
「というか、寿命が問題ならメグルも不老の秘薬を使えばいいと思うけれど」
「あら、それもそうね」
「う、確かに」
それなら私も魔法少女を一生続けられる。
なんだかんだ魔法少女が好きな私としてはありがたい提案でもあるけど……。
「でも不老なんですよね、不死とかじゃなくて」
「そうね、老いでは死なないだけね」
「それ私の星壊収束砲の負担での寿命低下は抑えられるんですか?」
「……」
「黙らないでくださいよ……」
これはダメそうだ。やっぱりあの技は使えない。
「じゃあ、とりあえず各々リスクを最小限にかつ最大限の火力を出すわよ」
「了解です」
私と魔王以外は基本的には魔導砲かな。どうなんだろう。
「その前に時音、貴方がアレを巻き戻したら弱体化はできそう?」
「多分無理よ。何年巻き戻したら卵に戻るか分からないし、それを攻撃と取られたらその時点で戦闘開始しちゃうでしょう」
「それもそうね……」
「結局火力で押すしかないですよ。再生力があるから再生の追い付かない高火力でしか倒せないと思います」
「分かったわ。それで行きましょう」
ここまで話して、やっとノモルワとの戦闘の開始準備が始まった。
「魔王のアレ、なんか砲身長いですね」
「あぁ、これは図体だけじゃないのよ。砲身が長い分威力が上がってるわ」
「そういう物なんですか」
「そういう物よ。多分ね」
「多分ですか……」
なんか不安だけど、これだけ大きな……ノモルワ並みにでっかい砲身から打ち出される攻撃なら相当強そうだ。
「で、淳子ちゃんは?」
「馴れ馴れしいなオイ。わたくし様は重力魔法、ま、ブラックホールだな。それで一体確実に磨り潰すって寸法だぜ。ふひははははは!」
「そ、そっか」
確かにそれなら一体は確実かもしれない。
となれば淳子ちゃんが狙わない相手に攻撃を集中したいところだ。
「どれ狙うの?」
「一番左だ。真ん中とか狙うと周りの攻撃まで吸い寄せかねねぇだろ」
「なるほど」
私と淳子ちゃんが戦う事になりそうなのは一番右なんだけど、まあもしこれですべてとまで行かなくても複数体倒せればそれだけ戦闘は楽になる。
ちなみに横で話しているのを訊いた感じでは操ちゃんとコマちゃんは時音さんと一緒に真ん中の敵に魔導砲での攻撃のようだ。
倒せなかった場合、一番弱そうな真ん中を操ちゃん達が担当するらしい。
「なら私はやっぱり……」
一番右、ヤバそうな相手から行くべきだよね。
攻撃は……そうだ、アレにしよう。
「再利用っと」
私は魔王が出したレールガンをそのまま再利用で無尽蔵に増やす。
これで今……全部で幾つかわからないけど、まあ結構な火力になるはずだ。
「分かってたけど貴女、やることが本当に悪魔じみてるわね」
「え、そんなこと無いと思いますけど……」
そんなことより、これ大きすぎて凄く邪魔だね、今更ながら。まあ戦闘になったら遮蔽物になってくれそうでもあるけど。できればそうならずに初手で倒し切りたいのが本音だ。
「さて、行きますか」
「えぇ、準備万端よ」
「いくぞコマ」
「あう……うん」
「淳子はやり過ぎないようにね」
「わかってますわってぇの」
全員準備万端と言ったところで、魔王が手を挙げる。
「全員、攻撃開始!!」
魔王が振り上げた手を下すのと同時に攻撃が始まる。
ついに、決戦の時が来た。
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