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Re40 魔法少女と復讐

「貴女さっき言ってたわね、一枚の紙を何回折り畳めば月に届くのか。という話を知らないって」

「知らないですね」

 何故かよくわからないけど、このタイミングで自分の魔法について語り始めた魔王だったけど、何で話し始めがこんな話なんだろう。

「そう。まあ、紙の厚さによって違うんだけど、大体四二回か四三回ってとこなのよ。でもそんなに紙を折り込むなんて無理よね。そう思わない?」

「まあ、無理ですよね……」

 そんなに折ろうとしても無理がある。と思う。

「そうなのよ。計算上そうなるって言っても、実際にそこに辿り着くには色んな問題があるわけね。まあでも、そういう机上の空論っていうか、理想論? 馬鹿みたいな、夢みたいな、妄想みたいな話って私達の分野だと思うのよね」

「私達って……魔法少女ですか?」

「そう。皆が皆魔法が使えて、そのどれも科学的な根拠や過程が無いのに、結果だけがそこにあるでしょ。それで言ったらまだ紙を四二回折ればいいなんて言うのもそうね。答えだけあってもプロセスが無い。強いて言うなら『折る』というのは確定しているんだけど、ただ折れって言うのもねえ?」

 さて、これは彼女の魔法についての話だったと思ったんだけど、この辺の話、関係あるのかな?

「あの、魔法の話じゃなかったんですか?」

「そう焦らないで欲しいわね。さて、そこで私のさっきまで使っていた攻撃なんだけど……貴方の体を貫いた奴。アレ紙なのよ」

「言ってましたね……」

 でもアレが紙? 本当に紙なの? 身体能力、要するに体を強化していて、耐久性が上がっている体を貫くあの攻撃が。

「私の魔法はね、空想科学や理想論の実現、ただし物質的な物だけに限られるの。そうね、例えば貴女を追ってここに来たのはテレポートだけれど、私自身を直接テレポートすることは出来ない。でもテレポートを可能にする装置を作って飛ぶことならできる……そんな感じかしらね」

「はあ」

 それは何て言うか、またとんでもない魔法だなぁ。

 魔法なのに、科学を実現する魔法って言うのがまた凄い。高度な科学技術は知らない人からしたら魔法みたいだけど、これはその逆みたいな話だよね。

「月はどうやって落としたんですか?」

「あぁ、アレ。アレは月の裏側に特大の高出力スラスターを付けて飛ばしたのよ」

「めっちゃ、力技だった……」

 私はてっきり科学的な、こう、重力操作とかなのかと思ったんだけど。

「まあ、貴女を縛ったみたいに重力を弄っても良かったんだけど、月を引っ張る程の引力ってこの星に生成したら色々面倒でしょう?」

「まあ……そうですね」

 サラッと出た答えが私の考えが読まれてるみたいで怖いんですが……。

「貴女が逃げ出した時の攻撃は貴女の血を沸騰っていう単純な現象を発生させただけだったんだけれど、結構キクでしょ?」

「まあ、死ぬほどキツイですねアレは」

 っていうか空想科学とか理想云々行ってだけど、そういう普通の現象も引き起こせるのズルくない?

 汎用性っていうか、ここまで来ると何でもありみたいな……。

 …………人の事言えないか。

「ちなみに、老化しないのもその魔法ですか?」

「まあそうね。時音の魔法で止めて貰ってもいいかも知れないけれど、それだと効率悪いから。私が老化を抑える薬を作ったのよ。ちなみに老化を抑える薬って実際あるのよ? まあ私のはそんな程度じゃ効果が足りないから、空想部分で強化して不老まで行ってるけどね」

「それはまたとんでも無いことするなぁ……」

 じゃあこの人現実にある薬や兵器ならいくらでも作れるし、それを空想で強化したら非現実的な効果を持つ物も作り放題なわけだ。

「でも本当に皮肉よねぇ。魔法少女毎に固有の魔法が、まさか魔法とは正反対とも思われる科学なんだから」

「まあ、魔術と科学が交差しちゃってますからね……」

 そう言う意味ではある意味物語が始まりそうな感じはするね。

「しかも私、こう見えて理系だし最初は魔法なんてオカルトは信じてなかったんだけど……だからなのかしらね」

「どうでしょうね……」

 実際魔法はその所有者の精神や魂に起因するらしいから、そうなのかも。

 でも本当に、何でこんなことを私に……?

「さて、これで大体私の魔法については分ったかもしれないけれど、使いこなせそうかしら?」

「……? はい、まあ、ほどほどに?」

 正直科学とか思いっきり苦手科目なんだけど、空想で強化できるなら使い様はあるかなとは思う。

 でも、私が使いこなせるかなんて聞いてどうするんだろう。

「ならいいわ。さて、殺し合いましょうか」

「この雰囲気でですか……」

 思いっきり和んじゃったんだけど私。どうしよ。

 でも魔王はすっごくやる気な顔してる。

「貴女、魔法はコピーできた?」

「えっと……」

 自分の中の感覚では出来そうだ。あの紙の槍を貰った時かな? 五メートルに到達出来ていたみたい?

「って、これ教える必要あります?」

「あらそうね、私に教える必要は無いわね……でも残念、それなら体に聞くしかないわ」

「あ、暴力で解決する感じですね」

 非常に魔法少女らしい。

 ……らしいかな? これはなんか違う気がする。

「行くわよ。ペーパー――」

「ランス!!」

 彼女の言葉に合わせて魔法を放つ。

 まあ同じ槍でもこっちはアダマンタイトだけど。

「なっ! いきなり?!」

「おぉー。これは使い勝手良いですね」

 魔力消費めっちゃ少ない。なにこれ、ズルくない?

 再利用で魔法使う時って基本的に再利用を発動する魔力、そしてコピーした魔法の行使に使う魔力で別々に持ってかれるから強力な魔法だとかなり使い難くなるはずなんだけど……この魔法滅茶苦茶強いのに消費が少ないな……なんでかな。

「まったく、人が体に聞くって言ったばかりなのに、自分から使うんだもの……貴女ノリと悪いわね」

「あ、すみません、つい」

 確かに今のは激しい戦闘とかして、追い詰められてから使った方が良かったのかな?

 そんなことも無いかな。気にしてたら最悪死んじゃうし。

「それにしてもアダマンタイトね……なるほど確かにいいわね。私ってばつい空想科学に寄ってしまって、単純に強い物を使う事あんまりしなかったわね」

 聴いてて確かにと思う。

 だってなんでも出せるんだもん、紙で槍作るより異世界最高硬度の鉱物で槍を作った方が早い。

 ……まあ、これはただアダマンタイトの槍だけど、彼女みたいにこれをより硬化させる方法とかを混ぜたらより強力になるんだろうなと思うけど。

「ふふ、早速学ばせて貰ったわ。次はこうしましょうか……フォーリングアダマンタイト……なんて安直かしら?」

「あ……名前から察しました」

 空を見ると、何かが降ってきている。月ほど大きくは見えないけど、アダマンタイトなんだろうなぁと思う。

「アダマンタイト版、神の杖って奴ね」

「神の杖……?」

 なんだろうそれ。よくわからないけど杖なのかな、アレ。

 落ちたらどの程度の威力があるんだろう。うーん……。

「ちなみにあれ、超大型の電磁投射砲で撃ってみたんだけど、どうなるのかしらね、これ」

「星の反対側に抜けそうですね?」

 またまたとんでもないことやらかしてくれるなこの魔王。

「め、メグル、さっきから聞いてて全くついていけないのだが……大丈夫なのか?」

「うん? まあ、魔法少女ならありがちかなぁと」

 正直今の魔王に戦意は感じないし、何かこう、私を試してる感じがする?

「じゃああれは……どうするんだ? またさっきの凄い攻撃か?」

「いやアレは……」

 アレをそんなにポンポン使ってたら本当に死んでしまうので、流石にちょっと……。

 しかしどうしようかな…………あ。

「ちょっと行ってくる」

 それだけ言い残して私は遥か上空まで転移して、そこで異空間への入り口を作ってアダマンタイトがそこに落ちてきてどっかに消えるようにしてみた。

 少しすると棒状のアダマンタイトが凄まじい速度で真っ赤になりながら突っ込んで来るのが見えた。

 近くに居ると危なそうなので、距離を取って見守り、アダマンタイトが異空間に消えたのを見届けて、魔王の前に戻った。

「貴女本当に規格外ね」

「貴女に言われたくないです……」

 こんな化け物みたいな相手なら、他の魔法少女が悉く負けて、配下になったのも分からなくない。

 でもそれだけに、一番わからないことがある。

「貴女、なんで死んだんですか?」

「っ…………」

 どうやらあんまり聞かれたくない事だったみたいで、露骨に機嫌悪く睨まれてしまった。

 悪いこと聞いたかな。でも、何でこんなに強いのに死んだんだろう。

 まあ、私だって死んだけど、この人がそう簡単に死ぬとは思えない。

「聞かせてもらえませんか?」

「…………いいわよ、ただし――」

 そこで一拍置くと、魔王はちょっとあざ笑うような顔を作って答えた。

「次週でいいかしら?」

「あちゃあ……」

 やり返された。

 まったくこの魔王。性格悪いなぁ……。

「いいですよ、まあそういう体ってだけですし」

「そうね、それじゃあ……」

 こうしてまた、戦闘中に始まるお喋りタイムに突入するのでした。


ご読了ありがとうございました!

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