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Re4 魔法少女の幹部戦

「俺は魔王軍幹部の一人、獄炎のジゼル様だ!! さっさとこの国の姫を出しなぁ?! そうすりゃ痛い思いをせずに殺してやるからよぉ!!」

 王様の頼みを受け、交戦中と言う城門に着くと魔王軍幹部を名乗るジゼルという存在が暴れまわっていた。

 その体は漆黒で、ところどころから青い火を噴いている。鋭い爪や翼も生えており、空を飛んで上空から魔法や爪を使った斬撃で襲い掛かっている。

 対抗する騎士の攻撃は空中に居るジゼルにはほとんどが当たらず、魔術師達の攻撃も当たっても全く効いていない様子で、まるで気にも留めずにただただ力を振るい、破壊の限りを尽くしている。

「くうっ! 我が弟子たちの魔法では手も足も出ないか!! 流石は上級悪魔、魔王軍幹部よ!」

 私と一緒に幹部と戦うと言って出て来たグレイスさんが敵の強さに素直な感想を述べている。

 なるほど……あれは悪魔なんだ。

「しかし私が来たからには好き勝手にはさせんぞ、悪魔め! 喰らえ、我が最強の魔術――」

 そう言ってグレイスさんは杖を構え、何かを『詠唱』し始めた。

「…………あれ?」

 しかし、その『詠唱』は非常に長く、その間にも騎士や魔術師達に被害が出ている。

 これは助けた方がいい、のかな? でもここで変に動いて邪魔になってしまったら……。

 この詠唱がいつ終わるのか、どの程度の効果の魔術が放たれるのか分からない以上、むやみやたらにも動けない……ここは見守るしかないか……。

「――これで終わりだ悪魔よ! 地獄に落ちろ!! ファイアーボール!!」

「……え?」

 グレイスさんの掛け声と同時に放たれた魔術は人の頭よりちょっと大きい程度の火の玉だった。

 ……そっか、この世界の上級悪魔ってアレで地獄に落ちるんだ。そっか。

 そう、私が思ったのも束の間。

「ペシッ」

「な、なんだとぅ?!!!!」

 グレイスさんの放ったファイアーボールは片手で簡単に払われ、消えてしまった。

 よかった、よくないけど良かった、流石にあんな魔法でやられる程弱い相手に戦うのはちょっと気が引けるもん。

「へっ! そこそこ腕は立つようだが、そこらの中級悪魔と一緒にするんじゃねぇぜ!! こんなもので俺様が殺れるかヨ!」

「っつう! これが上級悪魔の実力か……!」

「……えー」

 むしろ今ビックリするべきなのはアレでそこそこ腕が立つ判定なのと、中級悪魔は倒せてしまいそうという話ではないだろうか。

 グレイスさんってなんか変な人かもしれない。もしくはこの世界が変?

「ぐぬぬぬぬ! メグル殿! 出番ですぞ!!」

「え? あ、はい」

 ここで私の番かぁ……でもこれ、ちょっと困ったな……。

「んだぁ? お前は?」

「あ、はい、ちょっと待ってくださいね」

「あん?」

 何はともあれ、まずはアレだ。

 変身だ。

「キュアライト――フォームアーップッ!!」

 掛け声と同時に私の体が光だし、体を包んだ光が拡散すると共に魔法少女コスチュームになった私が姿を現す。

「無限の愛と正義の魔法少女――めぐる! ただいま参上っ!!」

「魔法少女だぁ? テメェがか? ハッ、笑わせるぜ。それに参上って、さっきからその雑魚の隣に突っ立ってたじゃねぇか」

「うぐっ、細かいことにツッコむ悪い悪魔ですね……」

 そこは黙っておくのが優しさだと思う。私の世界の怪人達ですらそういうのツッコまなかったのに……悪魔的ってこういう事を言うんだね、きっと。

「そんで? 今度はテメェが俺の相手か?」

「えぇ、まあ」

 とは言え正直今、ちょっと困っている。何にかって言うと……その。手加減に、だ。

「へっ、ならせいぜい楽しませてくれよ――なっ!!」

「――魔導障壁!」

 悪魔は言うや否や、鋭い爪を振るい、真空波のようなもので攻撃してきた。

 まあでも、この程度の攻撃は見慣れてるし、避け慣れてるからどうってことは無い。

 むしろこの場合避けたら被害が広がる方が問題で、だから私は魔術を使って防ぐことにした。

「チッ、この攻撃を防ぐかよ、しかもそのバリア、相当の強度みてぇだな?」

「なんと……あれほどの攻撃をいともたやすく防ぐとは……その上無詠唱だと……」

 どうやらこの攻撃、グレイスさんくらいには凄い攻撃に見えていたようだ。悪魔がどのくらいの攻撃のつもりだったかは知らないけど、少なくともこれを防げると驚かれるレベルみたい。

 あぁ、もう……。

「とりあえず、今度はこちらから反撃しますね」

「やれるもんならやってみな!!」

 そう言って悪魔は余程自信があるのか、両手を広げて迎え入れるポーズだ。

 うっわぁ、凄くやりにくいなぁ。

「(とりあえずできるだけ手加減して……ゴブリンの時よりは強く……)」

 私はそう念じながら魔光球を作り出した。今度のは昏倒狙いじゃないから物理ではなく魔力のまま……。

「シュート!!」

「なっ?! はえぇ!!」

 私の魔光球の速さに驚いたのか、本能的にその威力に恐れたのか、悪魔は魔光球を避けようとしたが、間に合わなかったようだ。

 ドォン!!!!!!

 大きな音が鳴り響き、悪魔を中心に煙が経つ。

 あーこれ、駄目な奴だ。

「やったのか?!」

「それ輪にかけて駄目な奴だぁ……」

 もうそれ言っちゃったら絶対やってない奴だ。ただでさえ煙ってて状況が掴めない状態だし、こんなの煙が晴れたらぴんぴんしているパターンに決まっている。

 そう、思ったのだが。

「ぐっはぁ……げっ……ぐげぇっ……! て、てめぇよくも……やりやがったな……あぁ」

「わ、めっちゃ効いてる」

 見ているこっちが引くくらい、大分スプラッタな致命傷を負っていた。

「だ、だがな……俺様のような上級悪魔は……ぬぅん!!」

「わっ、きもっ!」

 ジゼルなる悪魔が力むと、欠損した手足などが生え、傷も癒え、瞬時に回復していた。

「この程度の再生能力は、あるんだよぉ!!」

「…………どうしよう」

 あー、困った、これは困った。本当に困った。

「フハハハハ! 悩め! 苦しめぇ!! 俺様の再生力を超える火力がなけりゃ、テメェ等は結局俺にやられるしかねぇってわけさ!」

「どうしよう……どうしたら……」

 あの再生能力は厄介だ……。

 正直なところ、ある程度ダメージを与えたら和解できないかと思っていたんだけど、これでは適度なダメージで抵抗を封じるのは無理そうだ。とはいえ、ここに来てこの惨状を見て、この悪魔とは和解できないかもしれないとも思ってはいたし、それはまあ、まだいい。

 それ以上に問題なのは手加減の問題だ。

 この再生能力がどこまでのモノなのかが分からないことにはどの程度手加減すべきか分からない。

 私が危惧しているのはただ一つ。この世界のバランスに即した討伐だ。

 うっかりやり過ぎてしまうと、過度な力の誇示は諍いの種になりかねない。だから上手いこと手加減して、人類枠からハブにされるレベルの力は示さないようにしたい。

 下手に強すぎて人類の脅威とか言われたくない。なんかうっかりするとなりそうな気がする。

 と言う訳で……今結構困ってる。

 そんなこんな私が思考を巡らせていると、悪魔が空高くに飛び上がった……まさか逃げる気?

「今度はテメェに痛みを与えてやるよ――ヘルフレア!!」

「あっ、アレは!!」

「知っているのか雷電! じゃなかったグレイスさん!」

「アレは死者の魂を利用することで発動する魔術……その代償の高さ故に連発できぬが、詠唱も必要なく、しかも一撃で一国をも灰にするという上級悪魔が使える最上級魔術だ……も、もうこの国は終わりだ……」

「えぇ……急に豆腐メンタル」

 なんかスッゴイ説明してくれたけど、さっきまでそのヤバい魔術使える相手にファイアーボールで勝とうとしてた人とは思えないメンタルの弱さ、情緒不安定過ぎない?

 って、流石にそんなこと考えてる場合でもないか……。

「(流石に防ぐわけにもいかない……よね)」

 もし本当に一国を灰にする火力があるんじゃ、私一人が防げても周りの被害は防げない。そして多分、あの悪魔があそこまでの高度を取っているのは自分が巻き込まれない為だろう。グレイスさんの言葉は信じられないがあの悪魔の行動にはいくらかの説得力がある。

 となれば。

「魔導収束砲――」

「へっ! 今更魔法を使う気か?! おせェぜ!!」

「?!」

 今この悪魔なんて……。

 いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 一国を滅ぼす魔法っていうなら……収束砲の火力は……多分このくらい……!

 私が杖を構え、意識を集中すると私の周辺がキラキラと輝き始め、輝きが収束し、魔法陣を形成する。

「魔導収束砲、六門一斉射!!」

「なにぃっ?!!!!!!!」

 私の周りに現れた光、それらが集い六つの魔法陣が現れた。そしてそれらすべてから同時に収束砲が放たれる。

 そしてその攻撃は悪魔のヘルフレアを貫き、本体にまで到達した。

「ちっくしょう! バケモンがぁああああああああああああああああああ!!!!!!」

 収束砲が直撃すると、悪魔は叫び声をあげ……魔術の光が消えた後には、悪魔の姿は無かった。

「ふぅ……なんとか倒せましたね……」

 私はそう呟くと、チラッと脇に居たグレイスさんを見た。が、そこで気づいた。

「……………………」

「あー」

 これは、もしかしてやり過ぎてしまったかもしれない。

 完全に悪魔が居た上空を見上げて固まってる。しかも開いた口が塞がらない……って感じで。

「あの、グレイスさん? 大丈夫、ですか?」

「あ、あぁ……? ……大丈夫だとも。あぁ。おっほん、よくやってくれた、魔法少女よ、礼を言おう」

「あ、はい」

 なんか微妙に変な感じだけど、思ったよりは普通な返事が返って来た。

 それこそ最後に悪魔が叫んでたみたいに「バケモン」扱いされたりしないか心配したけど……うん、手加減上手く行ったね、これは。

「そうだ、私は王にご報告に行くが、メグル殿は……そう、ノワール卿に会い、屋敷にでも戻るがいい」

「え、良いんですか?」

「よい。此度の褒章の件なら後日、通達があるだろう」

「は、はあ」

 正直褒章とかはどうでもいいんだけど……むしろこの被害をどうもしないで帰っちゃっていいのかな。

 せめて怪我人くらいは治してから行きたいところだけど。

「何か問題でも?」

「怪我人の治療とかは……」

「それは教会の管轄、魔術師が手を出せば越権行為と言われかねん」

「そう……ですか」

 そんなことの為に目の前の怪我人を無視はしたくない……うん。

 私は魔法少女、魔術師ではないから、いいよね。

「えいやっと」

 私はそこはかとなく、バレないようにサッと魔術を使って怪我人達を直した。これで後で何か言われたら知らないで通そう……悪魔を倒した功績もあるし、流石に悪いようにはならない……よね?

 と言う事で、私もやるべきことはしたので、とりあえずノワール卿を探すことにした。


ご読了ありがとうございました!

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