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Re37 魔法少女とレイナ

「それで、何であんなことをしたんですか?」

 先程レイナさんから「実は私が本物の神」という話を聞いてから、今度こそ神様の住居っぽい神殿に案内されてそこで部屋に通されて席について改めて話をしようということになった。

「いや、何。アレを盗んだのは魔王だろう、なら次に侵入者が居ればそいつは魔王の手先と考えるのが普通だ。それなら私が直々に出向いて迎え撃とうと思ってな」

 アレって言うのは鍵のことなんだろうなぁ。そしてこの場合侵入者は私だったわけだけど、聞きたいのはそこじゃない。

「あの偽物の神さまは何だったんですか」

「あぁ、アレか? アレはな、巨人だ」

「あー……はい」

 この人もしかしてお話し下手な人かな。アレとかアレとか巨人とか。もうちょっと詳しく話せないだろうか。

「神に歯向かった巨人をな、ぶっ飛ばした後にああして使役してるんだが……神の役を振ったのは失敗だったな。なんだあの喋り方は、神というのがお前らにはあんな風に見えている物なのか?」

「どうでしょう……?」

 何というか、イメージとしてはそこはかとなくしっくり来たけど、見た目にはビビったかな。

「ふうむ。まあいいか。それで、メグルと言ったか。貴様の目的は先ほどの神の意志を訊くというものでいいのか?」

「えぇ、まあ。魔王が神様を恨んでいると言うので、本当に恨まれるだけの事をしたのか確認して、できれば仲直り出来ないかなぁって思いまして」

「仲直り……な」

 あ、神様的には人間と「仲直り」なんて変だったかな。対等な関係じゃないと思われているなら、おかしい表現だ。

「駄目ですか……?」

「ふむ、難しいとは思うな」

「それはどうしてでしょう?」

 私の質問にレイナさんは難しい顔をした。

「そうだな、まず第一に魔王は我々神の謝罪など聞き入れないのではないか?」

「まあ、それはそうですけど……」

 でも許してもらえないだろうから謝らなくていいかと言われると、それは違うと思う。

「第二に、そもそもアレを逃がしたのは私達だけの落ち度ではないぞ」

「どういう意味ですか?」

「うむ。アレは意図的に外界から開かれた次元の狭間に逃げ込んで行ったのだ」

「え?」

 それってどういう事? 外界から開かれたって言うのは?

「恐らくお前の世界の何者かがあの邪悪な存在を招き入れたのだろうな。故に我らにその責を押し付けられても困る」

「そう、だったんですか……」

 もしこの話が本当だとすると、一体誰がそんなとこをしたんだろう……?

 そもそも異世界との間にゲートを開けるような真似、そう易々と出来る事では無いよね。

「とりあえずはこんなところだな。わかって貰えただろうか」

「えぇ、まあ、はい」

 まあ神様の言い分は分ったけど、それでも神様側にもちょっと問題はある気がする。

 そもそも逃げられる前に何とかできなかったのかなとか、逃げた後のノモルワを放置してたこととか。

 でもそんなこと言っても仕方ないんだろうなぁ……。

 さて、どうしよう。この情報を魔王に言ったら「神様悪くないじゃん!」って思ってくれるかな……無理だよね。はぁ。

「じゃあ、戦うしかないんですか? 魔王と神様で」

「そうなるかも知れないな。メグル、貴様はどちらにも付かないのか?」

「まあ、そうなるんですかね」

 どっちもどっちな気がして、あんまり介入する気になれない。

 とは言え関係ない人を巻き込んだなら、容赦しないんだけど。

「まあ、それならそれで仕方がないな。さて、それで、実はずっと気になっていたのだが、おいアルク、貴様は何をしている」

「んん?」

 レイナさんに話しかけられたアルクは、テーブルにうつ伏せで寝ていた。

「寝ている。つまらない話だからな」

「そうではない。何故この少女と共に行動しているのかという意味だ。負けたような話を聞いたが?」

「あぁ……そうだな。半殺しにされた上に追いかけられて、いつの間にか契約して使い魔になっていた」

「あの龍神がか……それにしても貴様、私の顔も覚えてなかったようだな?」

「うっ……」

 おや、それはどういう意味だろう。

「ディーンに話しかけていた時もさも神同士の話という感じだったが、お前、アレが偽物だと気づいていなかっただろう」

「そういえば、あの時アルクは私に教えてくれなかったよね」

「ううっっ」

 もしかしてアルクって、人の顔覚えてないのかな?

「あ、もしかして老化して記憶障害が……」

「違うわ!! あれは、そうだ。偽物だと分かってはいたが、敢えて、あ・え・て! 話に乗ってやったのだろうが。まったく、言わせるな」

「へぇ……そうなんだ……」

 凄まじく嘘くさいけど、まあ、いっか。

「それでアルク、お前は神の側に付くのであろうな?」

「何? そんなわけがないだろう。我はメグルに付くぞ」

「なんだと? 貴様とて仮にも神であろう。ノモルワを逃がした戦いに参加したお前も魔王の狙いであるのではないか?」

「それならメグルと共に迎え撃つまでよ、なあ?」

「え、個人の喧嘩には口出ししたくないなぁ」

「ちょっ! 我とメグルは一心同体だろう?!」

「うーん? まあ、そうと言えば、そうかな?」

 確かにまあ、アルクが居なくなると戦力的に困るし。最近そこはかとなく友達な気がしてきているから、まあ、いいか。

「友達の喧嘩くらいは仲裁してもいいよね」

「友達?」

「見捨てようかな」

「いや友達! 親友だな?!」

「そうだね、ずっ友だね」

 露骨に焦るアルク、ちょっと可愛かったかも。

 いや、私にそっちの気はないけど。

「なるほど。ならどうだろう、神を失った後の世界の為に、戦うと言うのは」

「どういう事です?」

 なんだかレイナさん、私を上手く説得して戦わせる方向にシフトしてない?

 この流れ、大体言いくるめられて戦う事になる気がする。

「端的に言って、神を失うとこの世界は崩壊する」

「わーお」

 超端的かつ、シンプルに脅迫では?

「そうなればこの世界に生きる数多の命が失われる。それを阻止するために魔王と戦えないか?」

「うーん、そう言われると」

 戦うしかない気がしてきたけど、でもなぁ……。

 レイナさんの顔を見て、ちょっと考えて、提案してみることにした。

「じゃあ、私の方から条件があります」

「なんだ?」

「魔王にはしっかり、誠心誠意謝ってください。神様にだって悪いところ、あったと思います。それが出来ないなら、私は協力しません」

「我ら神が消えれば、この世界は崩壊するのだぞ?」

「それを言い訳にして謝りたくない理由でもあるんですか?」

「むっ……」

 私の言葉に、初めて嫌な顔をしたレイナさん。

 神様ってプライド高め?

「……いや、そうだな。なら、お前の言う通りにしよう。だが、それでも止まらないようなら――」

「その時は私が止めます。そして、その上でまた、キッチリ話し合ってもらいますよ」

「そうか……なら、そのように」

 そう言うと、レイナさんは立ち上がって私の横に立った。

「な、なんでしょう」

「いや、何。これがノモルワを倒した人間なのだと思ってな。変わった奴だ」

「何故でしょう、よく言われます」

 本当になんでだろう。自分としては王道魔法少女的生き方な気がしてるんだけど。

変かな?

「さて、お前にはこれをやろう」

「これは?」

 私に手渡されたのは魔王に渡された鍵に似ている気もするけど。

「この私の神殿に直接入れる鍵だ。何かあれば来ると良い。帰りもこれを使え」

「は、はい」

 まさか神様から直接こんなもの貰えるなんて。

「レイナもメグルを気に入ったか」

「も、という事はお前もそうなのだな、アルク」

「む、我はずっ友なだけだ、なあメグル」

「気に入らない相手とずっ友にはならないと思うよ?」

「むぅ……」

 うーん、これは本当に神様に気に入られたってことでいいのかな?

 まあ、どっちにしてもこれは便利そうなので貰っておこう。

「じゃ、帰るよアルク」

「む、そうだな」

 とりあえず聞きたいことは訊けたし、後は神様と魔王を引き合わせて話をしてもらうしかないね。

 そんなわけで、私は早速鍵を使って、魔王の元へ急ぐのでした。


ご読了ありがとうございました!

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