Re36 魔法少女と神様
「跪け」
戦乙女のレイナさんに連れられて神様の前に辿り着くと開口一番、神様にそう告げられた。
それにしてもデッカイ神様だなぁ。髭も大分もっさりとして清潔感があんまりない。どっちかと言うと巨人みたいだね。
「え、椅子とか無いですか?」
とりあえずこんな場所で跪いて足を痛くするのは嫌なので、聞いてみたんだけど。
座布団でもいいかなぁ……。
「平服せよ」
「あの、レイナさん、椅子用意してもらえませんか?」
なんだか話の通じない感じの神様だったので、スルーしてレイナさんに語り掛けてみたんだけど、思いっきり跪いていてそれどころじゃなさそうだった。
「何故神の声が届かぬ」
「ん? 聞こえてますけど」
私がスルーしたの、そんなに気に入らなかったのかな。スルー耐性無い感じかな。
「貴様は……そうか、貴様がゴッドスレイヤーか」
「これ以上ダサい二つ名付けないでくれませんか」
神殺しの桃魔とか、ゴッドスレイヤーとか、痛々しい名前を付けられるとか勘弁して欲しい。
正直この年でこんな格好して魔法少女名乗ってるだけでも割とメンタルに来てるのに、二つ名とか付けられたら将来娘が出来た時にプリキ〇ア見ただけで死にたくなりそうだ。
「邪神を下した労を持って汝の不敬を許そう。跪け」
「話し合いに来たので、そういうのはちょっと」
神様相手に対等に話をしようって言うのはかなり態度悪く見えそうだけど、でも出会って秒で平服させようとする神様はちょっとなぁって思う。
こちらの世界に来た時に出会った神様があんな変な神様だったからだろうか、神様に対する敬いみたいな気持ちが全く沸かない。
「……ならばよい。去るが良い」
「それも嫌です。話を聞くまで帰りません」
「ならばどうする。戦うか、この我と」
「え、勝ったら言う事聞いてくれるんですか?」
なんてことだろう、とってもラッキーだ。
神様相手に勝つとか普通ならしんどいどころか無理ゲーかも知れないけど、この世界の神様って寄せ集まってもノモルワに勝てなかったんだよね。なら、流石にそれに負けることも無いと思う。
「よーし、それじゃあ遠慮なく……」
『待て待て待て!!』
私が再利用の魔法で魔力を全力で使いまわして戦闘準備を始めると、思いの外アルクに止められた上に、プリンセスフォームまで解除された。
「どうしたのアルク?」
「あのなあメグル、お前本当に血の気が多すぎないか?」
「だって……話し合いで分かり合えなかったらバトるのはお約束って言うか基本だし……」
「魔法少女の基本怖すぎるだろう」
そうかな? そうかも知れない?
「おい、ディーン。コイツとやり合うのは止めておけ。死ぬだけじゃ済まないぞ」
そう言ってアルクは神様に語り掛けたけど、ディーン? 藤岡?
って言うか死ぬだけじゃ済まないって何かな。私をなんだと思ってるの?
「我はコイツにぶん殴られて瀕死になった後回復されたが、逃げた先まで追いかけてきてこき使われたからな」
「言い方酷いね……別に追いかけてないし、こき使っても無いよ」
「いや、こきは使ってるだろ」
「……使ってないよ」
ちょっと便利に思ってるだけ。使ってなんて無いよ。
「兎に角、止めておけ。龍神としての忠告だ」
「ふむ。貴様が言うのであれば、なるほどな。神を殺し、神を嬲り、使役するか。人の業とは恐ろしきものだな」
なんか勝手に納得されてるんだけど、私、そんなことして無いよ。
神殺しは本当だけど。
「それで。話は出来ますか?」
「うむ。よかろう、語るがよい」
「それじゃあ早速。あの、ノモルワを逃がしたって本当ですか?」
「事実だ」
なるほど。それは事実なんだね。
「そのことで私の世界では人がたくさん傷ついたんですけど、どう思います?」
「どうも思わん。神のすることで人がどうなろうと、それはただ受け入れるべき事柄だ」
「あー、そういう感じですか」
なるほどね。きっと魔王もこんな態度の神様を見て嫌ってるんだろうなぁ。
私も正直こういう感じは好きじゃない。
神様としては当然の事を言ってるつもりなんだろうけど、そんなのは神々の理屈で私達の理屈じゃない。
相手が自分の理屈で通そうって言うなら、こちらもこちらの理屈で動くしかない。
分かり合えないって悲しいよね。
「人の気持ちに歩み寄るって言うか、人間を大事にする気持ちとかありませんか?」
「無い。人は全てが神を信仰すべき存在であり、神のなすことに異を唱える等あってはならない。我々が人間を大事にするのではない。人間こそが我々を敬うべきである」
「あ、なるほど」
私が話したあのおじいちゃん神様。あの神様って結構話せるほうだったみたいだね。
後、アルクもか。
「大体わかりました。帰りますね」
「ちょ、良いのかメグル」
私がさっさと帰ろうとすると、アルクが止めて来た。
「だって反省してる感じしないし。魔王がこの神様を殺すって言うなら、手は貸さないけど、止めないかな。お互い分かり合えないなら、歩み寄れないならそうなるしかないよね」
正直、これはもう慣れと言うか、職業病みたいなものだと思ってるけど、私達は基本的に戦って問題を解決してきた結構に暴力的な人種だ。
話し合いを試みて、駄目だったら戦うって言う思考がクセになってる。
どうしても戦いたくない相手とかは居る。でもこの神様じゃない。
分かり合える気がしてしつこく話しかけてしまう相手もいる。でもこの神様じゃない。
戦う事で分かり合える相手もいる。でも。
きっとこの神様は、そうじゃない。
「最初から人を見下してるし、話し合いにならないんだったら、仕方ないよ。あれってある意味、戦いを選んでるのと同じだし。魔王を止める材料もないから、余計どうしようもないよね」
私がそういうと、アルクが低く唸った。
「しかしだな、ならばどうだろう、魔王を止めてみては」
「無理でしょ。魔王だけでも勝敗わからないのに、他の魔法少女も相手にするとか割とキツイもん」
「割とで済む辺りがお前の恐ろしいところではあるな……しかし、ならこのまま人類と神の戦いを黙ってみている気か?」
「人類と、っていうか魔王と神様の戦いを、ね。もし関係ない人を巻き込むんだったら、巻き込んだ方は許さないよ。こんな下らない喧嘩はね、当人達だけで解決して欲しいの」
「喧嘩って……そういうレベルか?」
アルクは呆れたように聞いてくるけど、こんなのただの下らない喧嘩だよ。
大体、魔王の動悸にしたって死んだのが神様の所為なら生きてるのも神様のおかげだ。
まあ後者の神様は私達の世界の神様だから、この世界の神様を恨む気持ちには関係し無いかも知れないけど。
「そうだよ。じゃ、帰ります。後はご自由にしてください」
そう告げて私が帰ろうとすると、しかしそれはまたしても止められた。
「待て」
「レイナさん?」
レイナさんが跪きながらも、手にした剣で私の道を遮っている。
正直こんなの転移なりなんなりすればいいし、脅威ではないけど、ここでこの行動を無視する程コミュ障な私ではない。
「まだ何かあるんですか?」
「ディーン様以外の神にも会わなくてよいのか」
「え゛っ」
それは……えぇ……。
そんなこと言い出したらあと何話神様とのおしゃべりに消費されるんだろう。
うーん。
「……あ、そうだ」
私はふと思いついた内容を口にする。
「アルクはどうなの? 龍神様なんでしょ。アルクはノモルワとは戦ったの?」
「うん? あぁ、そういえば……戦ったな」
よっし。これなら他の神様に話を聞かなくても詳しい話はアルクに聞けばいいよね。
「アルクから事情を聴くんで、帰りますね」
「……そうか」
そう呟くと、レイナさんは私に向けた剣を……下げなかった。
「あの、レイナさん?」
「お前には帰ってもらっては困る」
「それはどういう?」
何だか意味深なこと言い出したなぁ。この後の展開は容易に想像できる。
「お前の使命はこの世界を、魔王の手から救う事だったはずだ」
「あー、何だかそんなこと最初に会った神様のにも言われた気がします」
でもそれを何で知ってるんだろう。うーん?
「これは拾われない伏線って奴かな」
私が下らない冗談を言うと、レイナさんは剣を下げてくれた。
行ってもいいのかな?
「もういい。私が話そう」
「え、何をですか」
おっと、この流れはもしかして?
「まったく。どんな話があるかと思って、警戒して代理を立てたのが悪かったな。まさかこんな話の出来ない木偶の棒だとはな」
「えーっと、その感じ、もしかして?」
「そのもしかして、だ。私が神、戦神レイナである」
「……うーん」
これはまた、何というか。
それっぽい展開で、なんて中身のない回だったんだろう、とか思いつつ。
結局また、長そうな話は次回に続いちゃいそうです。
ご読了ありがとうございました!




