Re35 魔法少女と戦乙女
「さて、とりあえずこういう時はあの数をどうするか……とか、遠距離攻撃の手数が厄介とか、思っておけばいいのかな」
私は結構な数が居るヴァルキリーからの攻撃を避けつつ、なんとなくアルクに語り掛けてみた。
『思っておけばいいのかな、とはどういう意味だ。実際厄介な脅威だろう』
「……そう?」
私的にはあんまりそうでもないんだけど、ここはほら、お約束的に相手が強いことを認めて、その上で勝つことで『俺TUEEEE』が成立するのでは?
『アレは神を殺す武器だぞ。そんなものをほいほい、もといポイポイ使われて平然としてるとかお前はなんだ、気でも狂ってるのか』
「え、酷い言われ様。大体、私神様じゃないし、神を殺す武器で人って殺せるの?」
『そりゃあ殺せるだろう。敢えて殺せない意味が無い』
「それもそっか」
まあ事によっては、神以外に無効な分、神様に特攻があるようなことを期待したんだけど、流石にそんなに生ぬるくは無いようだ。
『以前それをやって裏切り者の神を罰そうとした結果、神の堕落を手引きした悪魔に手酷い返り討ちにあったようでな。そういう面白武器は作らなくなったようだぞ』
「面白武器」
まあ確かに、戦いと言う非常に非情というか、現実的な場面において一定の対象を傷つけられないなんて面白武器かも知れないけど、でも場合によっては人質にされた味方を傷つけずに敵だけ倒せて便利なんじゃないかな? とか思ったりもする。
『メグルよ、非情な戦いにおいて人質とは無価値を証明して切り捨てる物だぞ』
「そこはほら、魔法少女ですから」
とは言えまあ、私だって余程の事情があったら多分、人質ごとやっちゃうんだけど……それはそれとして、助けられる命なら、助けるべきで。
その線引きが曖昧で不確かだけど……いや、これ今考える事じゃなくない?
「それで、アレは私にも効くって言うのは分ったけど、当たらなければ良くない?」
ポイポイというより、ブンブン投げられてる武器だけど、どれもこれも避けられない速度じゃないし、密度も避けられない程じゃない。
『まったく、化け物じみてるなお前は。我ならとっくに死んでるわ』
「ほら、アルク大きいから。仕方ないよ」
『そういう問題でもないんだが……』
ならどういう問題だろう。アルクなら人型とかになって置けば避けられそうだけど?
『それで、脅威でないのに脅威なフリしてるメグルよ。アレをどう倒すんだ?』
「うん? 殴って?」
『……お前、魔法少女なんだよな……?』
「……うん」
アルクの言いたいことは分った。でもほら、ね。
「前週に殴るって言っちゃったし」
『律儀だな……。というか前週ってなんだ』
「こっちの話」
それじゃあまあ、早速行こうかな。出来るだけサクサク倒そう。
具体的には次週辺りからは神様と対話してるのを目標に行ってみよう。
「じゃ。身体能力向上……一気にぶっ飛ばすよ!」
私はいつも通りの手段、身体能力向上して速度に耐えられる体にした上で魔力をペース配分を考えずに高出力で一気に消費しながらの、文字通りの光速移動。
またもやスタープ〇チナ戦法だ。
「ってなんで動いてるのかなぁ!」
時が止まった世界で一方的に殴らせてもらおうと思ってたら、思いの外全員動いてる。
これは何というか、ズルくない?
『あれでも半神だぞ。そんな戦法がたやすく通る相手では無い』
「えぇ……じゃあもう魔導砲ぶっ放していい?」
『お前は直ぐにそうやって火力で片付けようとするな……』
そんなこと言われてもなぁ。だって相手が止まってないと下手したら攻撃掠るかもしれない。そうなったらきっと洒落にならないと思う。
何せ神様を殺せる武器だ。私が当たったらどうなることやら。
『だが、ぶん殴るんだろう? 我の分も』
「確かにそう言ったかも」
うーん、約束破るのは良くないね。自分の発言には責任を持たないと。
「分かったよアルク、よし、アイツら殴ろう」
『うむ。して、どうやって?』
「頑張って避けて頑張って殴ってみる」
『…………我、メグルから離れててもいいか?』
「一心同体の相棒でしょ、そんなこと言ってもその気が無いのは分ってるよ!」
『いやお前我の気持ちこれっぽっちも理解して無いな?!』
もう照れちゃってアルクは意外と可愛い。
このプリンセスフォームだと同化した相手の心も伝わってくるからね。
伝わってるよ、アルクの動悸、恐怖、不安…………あれ? なんか思ってたのと違う。
……まあ、いっか。
『いや良くないが?!』
「行くよ!!」
『行くのか?!』
私は思い切って、思いきり速度を出しながら神造武器の雨の中を突っ切る。
『死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!』
「それなら死ね死ね死ね死ねじゃない?」
『そんな物騒な事言うか!』
「え、四離ちゃんはよく言ってたけどな……」
なんかバーサーカー的というか、病んでる感じでアレはあれでいいキャラだったと思う。
「なんて言ってる間についちゃった」
私は複数いるヴァルキリーの内の一体に肉薄し、そしてその腹を殴った。
「顔は目立つからね! ボディにしといたよ!」
『いじめる奴の理論だな』
「違うよ。相手はほら、ヴァルキリー、戦乙女でしょ? 乙女の顔はNGだよ」
『いやそもそも乙女と認識してるなら殴るのはどうなんだ?』
「私は真の男女平等主義者だからね、女でも殴るよ」
『いや、お前自身女だろう』
「そして真の平等主義を掲げる私は殴る以上殴られる覚悟もあるよ。殴られる気はしないけど」
『そこは平等に殴られてやってはどうか』
「知らないのアルク? 世の中って不平等なんだよ。だから大抵の平等って言うのは一見してそう見えるだけの外面のいい不平等なんだよ」
『お前とんでもないこと言うな。そこは魔法少女らしくとでも言うのか、綺麗ごとで締めるのではないのか』
そうアルクに言われたけど、まあ、その通りではある。
「でもほら、事実だし。それにいくら平等を語っても私自身そうなれるわけじゃないからね。あくまでも主義は主義であって個人ではないから、どれだけ主義主張でそれらしくもっともなことを言っても、個人がその理想通りの個体であるとは限らないんだよ」
『お前ってたまに妙に面倒なことを言い出すな……?』
「そうかな……? だってほら、宗教家が幾ら神の教えを説いたって、倫理道徳を語ったって、その言葉がどれほど立派でも、その人が神様ってわけでもないし、人道的な人物とは限らないでしょ? 口では何とでも言えるってことだね」
『ま、まあそうだが……本当に身も蓋も無いと言うか……お前夢も希望も無いこと言うな』
「そっかな。でもほら、夢も希望もかなわない方が綺麗だと思わない? つまり絵空事や綺麗事はそれが無理難題であればあるほど魅力的にも感じるんだよ。つまり身も蓋も無く理想を幻想だって言い切れる私は誰よりそれを魅力的な夢だと思ってるってことだよ、うん」
『そうかぁ?』
なんかすっごくアルクから疑いの感情を感じるよ。
いや、本当に私は綺麗事とか胡散臭い話好きだよ? そうなったらいいなって夢見てるんだよ?
でもまあ、そうならないってことは現実的に理解しているだけで。夢って一種の娯楽だね。ただ想いを馳せて心を楽しませるだけのただの自己満足。
『いや本当にお前は少女なのか? 夢も希望もない擦れた大人にしか見えん』
「酷い言われ様だね……見たまんまのギリギリ魔法少女だよ」
『色んな意味でギリギリだな……』
それはどういう意味だろう。年齢? それとも発言?
『というか、こんな雑談しながらもヴァルキリーをガンガン殴り倒すお前はやはり化け物だな』
「え、そうかな」
確かにアルクとお喋りしている間にかなり数が減った気がする。
「あ、そういえば」
私は数が減ったヴァルキリーを見てあることを思い出した。
「これは私の分!」
思い出したので、とりあえず実行することにした。
「そしてこれはアルクの分!!」
アルクと約束した二発殴るって話。うっかりここまでワンパンしてきたけど、約束は守らないとね。
『お前えげつないことするな……』
「でもほら、話もできず襲ってくる以上は敵だし、大丈夫、両方目立たないようにボディ叩いたから」
『完全に加害者の理屈だな……』
確かにそうかもしれない? でもやっぱり女の子の顔を殴るのはね。
「それに腹パンって需要あるし」
『どういう意味だ?』
「こっちの話」
とは言え、二発殴るって言う約束は果たしたし、流石にこちらもいたぶる趣味は無い。
ここらへんで休戦とかできないかな。
「あのー、戦はこのくらいで終わりにしませんかー」
とりあえず、リーダーっぽいヴァルキリーは残しておいたので、そのヴァルキリーに語り掛けてみた。
ちなみに、っぽいヴァルキリーが何人か居たので、いくつかの分隊とかあるのかもしれない。そう思って何人か残した。
「貴様は……一体何者だ」
「? 見ての通りの魔法少女ですよ」
「そうではない。何をしに来た、何者かという話だ」
「あぁ、そういう」
さて。ここは素直に話した方がいいのかな? いいよね?
下手に隠して後でバレても面倒だし。
「神様とお話しさせてもらいたくて来ました」
「魔王の手先では無いのか」
「魔王に言われて来たのはそうですけど。危害を加えるつもりはなかったんですよ。襲われたから、自衛しただけです」
「自衛……か」
「う……はい」
この惨状を見て、誰が加害者側かと問われたら、ほぼすべての人が私と答えるだろう。
でも、ほら……自衛……だよね?
「まあいい、話も聞かずに襲い掛かって悪かったな。神にお会いできるよう取り計らってやろう」
「え。やった」
なんか思ったより許可貰っちゃった。
これだけの事をしたから拒絶されると思ったけど。
「これだけの力を持つものを阻むことなどできないからな。せめて穏便に済む方法を取るべきだろう」
「……あ、はい」
うん、これだけ暴れたおかげだった。すみません。
「では案内しよう」
「え、そこのヴァルキリー達は?」
「死ぬことはないだろう。手加減されているのは見たらわかる」
「ま、まあ、そうですけど……」
そう言う問題かな? いや、いいんなら……いいけど。
等と思いつつも、行く前に全体に回復魔術だけ撒いといて、私はリーダーヴァルキリーに付いて行った。
「貴様、名は何という」
「メグルです。三角廻、魔法少女です」
「そうか。私はレイナだ」
お互いに名乗っては見たものの、とは言え話すことも他に無かったためそのまま黙々と進む。
そう言えばこの空間ってそれ自体が罠らしいけど、これでちゃんと神様の所に着くのかな……。
そんなことを思いながらも、私はとりあえずは彼女に付いて行くことにした。
どっちにしろ出方もわからないしね。それに、ほら。
尺も結構使っちゃったし、後の事は来週の私に任せよう。
そう思った。




