Re29 魔法少女と契約
アルクとの約束通り魔術を空に放つと、遠い空からアルクがやって来た。
「遠目に見ていたが……これは酷い有様だな」
「あはは……ついやり過ぎちゃって」
あまりにもわからずやと言うか、戦闘狂が多すぎてイラっとしてぶっ放してしまったのはまずかった。魔法少女として反省しなければならない。
「それで、私を呼んだ理由はなんだ?」
「ん、そうそう。アルクにまたお願いがあって」
「ふむ?」
正直このお願いは私の個人的な物なんだけど、アルクに協力して貰えるととても助かる。
「私と契約して欲しいなぁ……なんて」
「何? 契約だと」
私のお願いに嫌そう……というよりは不思議そうにするアルク。
「そう、契約。私達魔法少女って契約した使い魔とか、精霊とシンクロ……共鳴? することでパワーアップできるシステムを採用してるんだよね」
「しすてむと言うのはよくわからんが、なるほど。それがいま必要なのか」
「え……ま、まあ?」
「なるほど、今は必要ないのだな」
「……うん」
正直ここで蘇生させるのに契約とかパワーアップはあまり関係ない。どっちかと言うと後で時音さんを蘇生させた後に戦闘になると面倒だし、なんなら他の魔法少女と戦う時が来た場合に備えたものだったりする。
「駄目?」
「駄目ではないな」
「え? 本当!」
意外だった。アルクは正直私が怖くて従っているものとばかり思っていたので、こればかりは嫌がられると思っていた。
「しかし良いのか? 私で」
「ん? なんで?」
私としては全く問題はない。アルクは凄く強いので契約して一緒に戦えれば大幅なパワーアップが見込めるし。
アルクは何を気にしてるんだろう。
「私はお前の苦手なトカゲなのだろう」
「…………あー」
そう言えばそうだった。いや、厳密にはドラゴンだし、アルクもそれは分ってるはずだけど。
「いやあ、ほら、アルクはドラゴンだし」
「そうだな、地を這うあれらとは別物だな」
「……怒ってる?」
「いや? しかし、苦手なのだろう?」
「う、うーん」
どうやらトカゲ呼ばわりされたことを怒ってるわけでは無いようだ。見た感じ本当に私が苦手であろうことを心配してくれている感じだった。
「なんでだろう。自分でもわからないんだけど、アルクは大丈夫」
「初対面の時は死ぬほど強烈に殴られたが……」
「……ごめん」
確かに瀕死になるレベルで強烈な一撃を叩き込んだ記憶がある。
今にして思えばアルクじゃなかったら本当に死んでたね、アレ。
「でも本当に今は大丈夫だから。アルクの事、勝手かもしれないけど、結構好きだよ」
「……ふむ」
この戦場で最初にアルクに乗ってた時はまだちょっと苦手意識があった気がしたんだけど、今は全く気にならない。
むしろ友達感覚まである……不思議だね。
「苦手を克服したか」
「ううん。多分今でもトカゲを見たら収束砲出ると思う。アルクが特別なんだよ」
「好意的な特別扱いをされたはずだが寒気がするのは何故だろうな」
確かにうっかりトカゲが視界に入ったら危ないもんね。流石にアルクを見間違えて撃つようなことは無いと思うけど。
「それで、契約とは具体的にどういうものだ」
「ただ私と一緒に居て、お互い協力し合おうねって契約だよ。制限とかは特にないけど……強いて挙げるならお互いの存在を強く感じられるようになるから何処に居てもバレるくらいかなぁ」
「なるほど、強制的に服従させられたりはしないのだな」
「私がそんなことすると思う?」
「この光景を見てしないと考えると思うか?」
「……ごめんなさい」
力尽くで従わせようとした戦場後を見て、深く反省しました。
「まあいい。それで、契約をするのだな」
「うん、よろしく」
契約できることになってよかった。これで今後も安心できる。
「それじゃあ早速契約だけど、両手を手を出して」
「ん、こうか」
アルクが両手を前に出してくれた。
……でっかいなぁ。私とだとサイズ感が凄い。
「それでこれを……『ハイターッチ』っと」
アルクと両手でハイタッチすると、契約は完了した。
「……これでいいのか?」
「うん」
「手を合わせただけだが」
「うん」
「案外地味なのだな……」
「うん……」
まあ本当はもっと派手なのとかあるんだけど、そこはそれ、割愛ということで。
「さてそれじゃあ、アルクに早速力を貸してもらうかな」
「それはいいが、何をする?」
「うん、とりあえず精霊国の軍を蘇生するね」
「私は何を?」
「うん、アルクには魔力を貸して欲しいんだ」
「魔力を?」
アルクは不思議そうに首をかしげたが、契約した理由の一つがこれだったりする。
魔法少女は契約した精霊や神獣とかの魔力を自分の上限に加算できる特別なコスチュームがある。
人呼んで魔法少女第二形態……あ、プリンセスフォームとか言ってる子が居たっけ。
兎に角そんな感じの力があるのです。
「アルクとシンクロと言うか、合体するとアルクの魔力を上乗せした私に変身できるの。そうすると私の負担が減るんだよね」
「ほう、便利な技だな。ただでさえ強いお前に私の力が上乗せか」
「そうそう。だから契約したんだよ」
日本でもアルク程強い子と契約してるのなんて見た事無いし、私が魔法少女になった時に契約した精霊もここまで強くなかった。
ちなみに契約する対象には実は制限があるんだけど、これはアルクには言えないね。何しろ自分が苦手な生物としか契約出来ないんだから……。
いや、アルクは全然平気なんだけど、相変わらず爬虫類は苦手なのでこれを言うとアルクを無駄に不安にしちゃいそうだからね。
「それじゃあ早速いいかな?」
「うむ。試してみようか、新しい力を」
そうアルクから許可も出たので、早速変身。
『プリンセスフォーム!!』
私が一応花のある方の名前を叫ぶと、アルクが光の粒子になり、私の全身も光り輝いて互いの光が融合。光が弾けると中からはいつもとは違う、白色をベースにところどころにピンクの入った割と少女趣味な衣装に変わった私。
……いつもピンク色多めのフリフリ服なんだから、最初から少女趣味とかいうツッコミは今は無しの方向性で。
「ふぅ、変身完了」
『ほう、これがシンクロと言う奴か?』
変身が終わると、変身後のアルクが喋った。
感覚的には胸元に付いた宝石が喋ってる感じ。
「アルク、調子はどう? 嫌な感じとかしない?」
『特に問題は無いが……私は動けないのだな』
「うん、ごめんね?」
『いや、構わない。お前達魔法少女の戦いに生身で参加するより遥かにマシだ』
「う、うん……」
なんか今サラッと危険人物の扱いを受けた気がしないでもないんだけど、気のせいだよね。
『気のせいではないぞ、実際危険だ』
「おぉっと」
そうだった、もう長いことこの形態使ってないから忘れていたけれど、これ合体してる時はお互いの心が重なるから考えた事全部わかるんだった……。
「そんなに危険かなぁ、私達」
『この世で最も恐れられる龍の私が恐れる相手だ、それこそこの世のものではない、恐怖の力だな』
「うぅ……」
やっぱり今回は特にやり過ぎたもんね……。
そう思いまたも反省していると精霊国側から幾つかの砂埃が向かってくる。
アレは復活した軍に撤退を伝える伝令かな。
「落ち込んでばかりもいられないね。早速蘇生しないと」
まず最初は精霊国の人達……とは言え死体が丸々消えているので精霊国側とかを特定して蘇生するのは難しい。なので一度再利用で全員蘇生して、その時に時間操作の魔法も使って魔族側は時間を停止という形を取ることにした。
「再利用発動っと」
そして本来、再利用は射程内しか蘇生出来ないのだけれど、再利用は射程内で同じ魔術、同じ魔法を再度利用出来る為、射程限界の場所で再利用で再利用を使う事によって射程を無限に伸ばせる。
もっとも、一回使うごとに魔力をガンガン消費するからその分いつも以上に魔力の回復が必要だし、数が増えればそれだけ精密なコントロールが要るので戦闘中に複数発動するのは難しい。
まあコントロールに関して言えばシンクロしているアルクにお願いしてもいいんだけど、いきなりやってもらうのも悪いから今回は私がやることにした。
「さて、これで全員蘇生させたから後は……」
私が次に時間停止の魔法を使おうとしたら魔族側に勝手に時間停止の魔法が発動した。
「おや」
『これでいいのだろう?』
「おー、アルクやるねぇ」
どうやら私の考えを共有したアルクが予め魔法の管理をしてくれていたみたいだ。
持つべきものは友達だね。
『友達なのか?』
「おっと……本当に共感って困るね。うん、私は友達だと思ってる」
『そうか……』
アルクが何を考えているのか、私にはわからなかった。
これが無我の境地というものだろうか?
「さて、これで蘇生も終わったし、後は彼らが引き上げてくれたら終わりだね」
『そうだな』
私はジッと精霊国の動きを見た。
蘇生された味方に先ほどの伝令が何かを伝えると、時の止まった魔族を放置してそのまま全軍が引き上げていった。
「はー、よかった。これで争いにでもなったらどうしようかと思ったよ」
『どうしようも何も、またぶっ放す気だったのだろう?』
「うっ……」
呆れ声のアルクに、正直それくらいしか思いつかないのは事実だったので何も言い返せなかった。
「でもこれならその必要もないからね」
『まあ、その通りだな』
よかったよかった。
この後、魔族側も問題なく撤退し、この戦争は終わった。
さて、後は時音さんの復活だけど……大丈夫かなぁ……。
ご読了ありがとうございました!




