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Re26 魔法少女と終戦(1)

「アルク、手を貸して欲しいんだけど」

「む、むぅ。終わったのか?」

 時音さんに勝った私は、早速アルクに手を貸してもらって戦争を止めようと思ったんだけど、アルクは未だに半信半疑みたい。

「終わったよ。死んでる」

「……流石だな、メグル」

「それ程でもないよ。私自身の力ってわけでもないし」

 どちらかと言うと時音さん含む他の魔法少女の魔法ばっかり使わせてもらってたし、私自身の魔法は便利だけどそれ単体だとそこまで攻撃力とか無いし。

「さて、アルク。もう闘いが始まっちゃってるけど、今からでも止めるよ」

「うむ、しかしどう止める? 一度始まった戦いを止めるのはかなり難しいぞ」

「うん、まあ、そうなんだけどね。一応考えがあるから」

 そんなわけで私は最初と同じようにアルクに乗せて貰う事にした。

「それで? どうする」

「敵陣に突っ込んで相手の本陣を抑えよう。それで相手の指揮官に引いてもらう。駄目ならちょっと暴れて諦めさせよう」

「むぅ……メグルは結構過激な事を考えるな?」

「そう? 割と平和主義だと思うけどな……」

「どの口が……」

「んん?」

「……なんでもない」

 まあアルクは私の力が怖くて従わされてる部分があるだけに言いたいこともあるんだろうなぁ……。

 でもまあ、魔法少女なんて言っても結局は戦う事で自分の正義を貫いて来た私が完全な平和主義な訳が無い。

 その過程に話し合い含む交渉を挟むから『割と平和主義』なのであって。自分でも結構、胡散臭いと思う。

「ってことで行こうかアルク」

「うむ……一応言っておくが結界は張ってくれるな? 戦争中に私が出て行けば必ず狙われるぞ」

「アルクなら大丈夫じゃない?」

「その楽観視で痛い思いはしたくないな。私はそれで痛い目を見ている」

「へー、そうなんだ。アルク強いのにそういう事あるんだね」

「……お前なんだがな……」

「……?」

 今何か言われた気がしたけど、よく聞こえなかった。

「じゃあ結界張って……さあ行こう!」

「なんだか楽しそうじゃないか」

「いやあ、何だかファンタジーっぽくなってきた気がして急にテンション上がって来たよ」

「存在が不可思議なお前が言うか」

 え、私そんなに変かな。

 ……あ、魔法少女だからって意味かな。

「あ、あそこ。アレが敵の本陣じゃないかな」

「ふむ。であればどうする。このまま降りるのか?」

 上空から見るに本陣に対空兵器とかは無さそうだし、結構手薄にも見える。

 けど、うーん……下手に攻撃してから降りると話し合いにもならないかな?

「とりあえず降りようか」

「一発ガツンとやらなくていいのか?」

「うん、それは戦う前ならいいけどね。今やるとほら、それで降りて行っても『話し合いましょう』なんて嘘くさいでしょ」

「そういうものか? ビビらせれば話もしやすかろう」

「一理あるなぁ……」

 魔法少女が恐喝ってどうかと思うけど、正直アルクの案も全然ありだと思う。

 結局ほら、暴力で押し通す正義の味方ですから。

「でもまあ、暴力は必要ならね。先に話してみて、駄目なら脅そう」

「やはり過激ではないか」

「うーん、そうかも」

 とは言えまあ、やることも決まったのだし、早速行動だね。

「あ、あの大きなテントの前に降りて。多分指揮官なら立派なところに居るでしょ」

「そういう物か」

「そういう物だよ」

 人間でも魔族でもそこは変わらないんじゃないかなと思う。

 私とアルクが降り立つと、当然だけど魔族側は大変混乱していた。

 それでもとりあえずは武器を持って囲ってくる辺りが普通じゃないなぁっていうか、闘い慣れ? 普通ドラゴン見たらビビって逃げそうだけど……。

「何者だ、貴様ら!」

「お、意外と親切」

 敵陣にドラゴンで乗り込んで来て、まさか誰何されるとは思わなかった。

 問答無用で襲われるとばかり思っていたけど、いやいや、意外だね。

「答えろ!!」

 私が下らない事ばかり考えていて返答せずにいた所為で、私達を囲っている兵士の一人がさらに声を上げた。

「あー、こほん。私は魔法少女の廻です。この戦闘を終わらせるために直接指揮官とお話しがしたくて来ました」

「何……魔法少女……? では、お前が時音様の言っていた……」

 そう言った兵士と、周りの兵士たちの顔が青ざめたのを、感じた。

 何、私魔王側でどんな扱いなの。ドラゴンが来ても平気で囲ってきた人、もとい魔族が顔を青くして震えるって、私裏で何言われてるの。

 そんなことを考えているとテントから一人の身なりのいい魔族が出てきた。

「話は聞かせてもらった……指揮官がお会いになると言う事だ。入れ」

「助かります」

 これは話が早くて助かるね。今は一刻も早く戦いを終わらせて被害を減らしたいし。

「しかしドラゴン、お前はそこで待て」

「言われずともそんな布切れに包まる趣味は無い」

「包まるて」

 いやまあ、アルクが入ろうとしたらテントに入るって言うよりテントを羽織る感じになりそうだけどさ。

「まいいや、待っててね、アルク」

「うむ」

 私はアルクの返事を聞くと、そのまま魔族の案内を受けてテントに入った。

「ほう、貴殿が敵国の魔法少女。メグル殿か」

「あ、いえ、精霊国の、ではないです。ただの魔法少女です」

「そうか。それで、ただの魔法少女が何用だったかな」

 むむ? 話は聞いてたのになんであえて聞くのかな。これも一つのお約束かな。

「戦争を止めたいので、全軍を引き上げて下さい」

「できぬ」

「……あっれぇ」

 おかしいな。話が早いから結構相手もそのつもりかと思ったんだけど。

「この戦は魔王様から直々に賜った武勲を上げるチャンス。それをおいそれと投げ出しては魔王様への反意と捉えられよう」

「あー、これは……」

 困った、難しい話かなこれ。

 私には政治向きな話とか余りできないし。正直言ってこういうの苦手なんだよね。

 感情論と暴力で生きてきたのが仇になった気がするよ……。

「戦うしかないんですか」

「そうだな」

「……私とアルクが参戦したら、絶対負けますよ」

「だろうな」

「それで軍が壊滅したら、それこそ良くないと思いませんか」

「その通りだろう。しかし、道理ではないな」

「そうですか?」

 私としては至極普通な道理だと思うけどな……。

「先ほども言ったが、この戦は魔王様から我々戦士に与えられた武勲の機会。それを投げ出すことは出来ない。これが前提にある。であれば、兵士という単位の消費は損失でもあり、魔王様への忠誠を示すことにもなる」

「そんなのオカシイですよ。勝てない闘いには潔く引くのが将器じゃないですか」

「ほほう。一理はある。しかし、道理でないと言っている。我々には物事の良し悪しより優先しなければならない義があるのだよ」

「……そんなことの為に死ぬんですか」

「そうだ。それが後を生きる物の道にもなる」

「そんな道、通りたくないけど」

「ははは! そうだろうな。お前のような強い者は、そうだろう」

 この人は別に、話せない相手ではない。きっと私の言ってることも理解しているし、もしこれが、彼個人の戦いなら、退いてくれたのかもしれない。

 でも、軍として、組織としては、退けないんだと思う。

「ただな、世の中には、分かりやすく道を作ってやらねば生きられない者が居る。自分の道を自分で決められない者もいる。そういう者に生きる道を見せるのだ」

「何も戦う道じゃなくてもいいと思いますけど」

「そうだな……だが、今の魔族には魔王に逆らう道はない。だから、魔王に従う道を我々が少しでも生きやすくするために、軍は信頼を得なければならない。魔王に飼われる軍が、戦う事しかできない魔族にとって生きやすい道であるように」

「だから、退けないんですか」

「そうだ」

「ここで、何万もの人が、魔族が死んでも、ですか」

「そうだとも」

「……そうですか」

 彼の言ってること、私には理解できても共感できない。

 きっと立場も育ちも違うから。私は彼の事を、彼ら魔族の事を、知らな過ぎたから。

 でも、そう分かってるのに、立場の差、価値観の相違、意見の違いが判ってるのに。

 この指揮官が、話せる相手だったから、それだけに、不満だった。

 分かり合えると思ったから、この人に話を分かって貰えても、聞き入れてはもらえなかった現実に、少し、腹が立った。

「結局暴力思考かも、私も」

「君も戦う決意が出来たと言う事かな」

「えぇ、まあ」

 本当は怒り任せにとか好きじゃないんだけど。

 今回はお互いの為だから。彼の思う正義とは違っても。今まで通りだ。

 私は私の正義を押し付ける。この力で。

「私は何が何でもこの戦いを終わらせます」

「そうか。なら私も終わらせよう。魔族の勝利でな」

「……」

 きっとそれは難しいだろう。

 時音さんが居る間に決着を付けられなかった時点で、もう負けてるんだから。

「最後に、君の名前は?」

 変な事を訊くなぁ。私の名前、知ってるはずなのに。

「三角廻、です」

「そうか。私はオナラブルだ。覚えておいて欲しい」

「……はい」

 そっか、お互いの口から、お互いのことを話す。名前すら知らなかったんだよね、私は。

 そんな相手でも、分かり合えると思ったんだけどな。

 私はテントを出ると、アルクに乗って、精霊国側に戻る途中、話しかけた。

「アルク、ここから先、一人で精霊国に行って全軍を引かせて」

「何? どういうことだ。まさか……」

 アルクは私を疑いの眼差しで見た。

「違うよ。裏切るんじゃない。私一人で、戦うから。他の人は邪魔なの」

「……足手纏いという訳か」

「まあ、そんなところかな」

 別にそこまで思っては無かったけど。

 単純に少しでも被害を減らそうと思えば、まだ引いてくれる可能性がある精霊国側を下がらせて、私が前に出て止めれるしかない。

 そう思っただけだった。

「であれば私は精霊国側の指揮官に話を通せばいいのだな。その後はどうする」

「アルクは後方で全軍を守ってあげて。アルクが居たら下手にちょっかい出せないでしょ」

「本当に一人でやる気なのか」

「うん。アルクが居ると巻き込んじゃうし。下がってて欲しいな」

「……そうか」

 アルクは何かを察したみたいで、それ以上は何も言わなかった。

「ここで降りるね。後は、お願い」

「わかった」

 戦場の中ほどで降りて、アルクには先に戻ってもらった。

 ……さあ、始めよう。


ご読了ありがとうございました!

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