Re23 魔法少女と時
「っ! また戻された!」
アルクと共に戦争を止める為に出て来た戦場で遭遇した魔法少女、古計時音との闘いは正直言って劣勢だった。
「くっ……この魔法ズル過ぎない?!」
彼女の魔法は時間を操るモノの様なんだけど、流れが遅くなったり早くなったり、かと思えば巻き戻されたり果てには数秒飛んでたりする。
ここまで即死はしてないからまだ戦闘は続いているけれど、何度か死にかけてるし、こっちが再生できるのが分かっているからか先ほどから攻撃が即死狙いの大技の連発。
その上避けても戻され、防いでも戻され、かと思えば防いだ数秒後に時間が飛んでいて不意打ちを受けそうになったりと、兎に角劣勢の状態のみが続くように、少しでもこちらの有利に傾くと時を操って有利だった時間に巻き戻される。
なんとかアルクのフォローのおかげで凌げてるけど、一対一ならまず負けてたと思う。
というかこれだけ大きな力を連続して、何で魔力切れしないんだろう。
一応、時間が巻き戻ると私の魔力とかもその時点での魔力量に戻ってるし。術者自身もそうなのかもしれない。
とは言えそれでも私と違ってあくまでも戻っているだけだよね……? それならいつかは魔力切れしそうな気もするんだけど……どうなんだろう。
そんなことを考えていると、彼女……時音さんはふいに手を止めた。
「……ふむ、アナタしぶといわね。かなり強いわ」
「それはどうも。時音さんの方が強い気がしますけど」
正直言って今の所手も足も出ないし。
「それはアナタが手を抜いてるからでしょう。わかるわよ、そういうの」
「……手を抜いてるわけじゃないですよ」
「そうかしら。自分の命を奪おうって相手を傷つけないようにするなんて、手抜きだと思うけれど」
「何? 本当かメグル」
「…………」
アルクに問い詰められても、何も言えない。
思いっきり図星だし……いや、だってね、同じ同郷の魔法少女でしょう? 相手にも何かわけがあるんだろうし、無闇に殺し合いをする気はない。
「まだ話し合いもしてないうちから殺し合いなんておかしいですよ」
「そう。話をしたら、殺しあうの?」
「そういう意味じゃないです。暴力に頼る前に、することがあるって話ですよ」
せっかく時音さんが話掛けてくれたんだ、ここで彼女の真意を知りたい。
「ふうん。まあいいわ。そうね、話に付き合ってあげてもいいわよ。ただし、魔力が回復しちゃうけどね?」
「いいですよ、私も回復するんで」
「そう。じゃあ何のお話からしましょうか?」
そう言って、彼女は私に話の主導権を譲ってくれた。
「……なんで魔王に協力するんですか?」
「好きだから」
「…………はい?」
私は最初から重要な事を訊いたつもりだったんだけど、返って来たのはなんというか、余りにもあんまりな答えだった。
「好き……悪役が?」
「真央がよ」
「……真央……さん?」
誰だろう。その方は。
「アナタ達が魔王と言っている存在、矢峰真央。私の天使」
そう言って彼女は頬を赤らめ、口元を緩めた。
「…………あー」
うん、なるほど、そっちの人か。
「天使、ですか。可愛いん、ですか……?」
「くぁわいいわ!」
「……あ、はい」
そうか、そんな感じなんだ、この人。
綺麗な夜空を連想する銀の髪に黒のメッシュ、瞳は紫紺、手足もスラっと長くて色白、神秘的な美しさを湛えるその容姿からは連想できないくらい、こう……変態みたいな顔してる。美人でもこういう顔すると「あー……」って気持ちになるなぁ。
「もうね、かぁうわいいの! 見てるだけでいつの間にか世界が終わってそうなくらい!」
「それは魔王的な意味ですか」
「自然の摂理的意味よ!」
「あー……」
星の寿命まで見てられると、なるほど……。
ヤバいなこの人。
「それで、魔王に従ってるんですか」
「は? 真央? なんで呼び捨――」
「ま・お・う!」
なんだろうこの人、凄く面倒くさい。
「ふん。どうでも良くないから言っておくけど、従っているのではないわ」
「そうなんですか」
「付き合っているのよ、二重の意味でね」
「お、上手い」
「ふふん」
「言ってる場合か!」
おっと、ここに来てアルクにツッコまれてしまった。
いけない、いけない。私までボケていたら話が進まないよね。
「こほん。それで、魔王さんの目的は何なんですか? 何に付き合っているんですか」
「ん……仲間になるなら教えてあげるわよ?」
「仲間になるかは内容によりますね」
「じゃあ駄目ね。邪魔されても困るから」
「そうですか……」
まあ、私達って基本そういう生き物だもんね。
自分の正義や、一般論に照らし合わせて気に入らなかったら力でそれを止める、魔法少女なんて言うとファンタジックな感じもするけど、実質的にはゴリゴリの武闘派ともいえる。
そういう意味では「気に入らなければヤッちまえ。あ、ヤるときはコミカルに見えるようにしとけよ? そうしねぇとBP〇とか色々うるせぇから」と言っていた私の先輩魔法少女Bは肉弾戦までしてたし本物の武闘派だった。
「つまりやり合うしかないんですか?」
「アナタが邪魔しなければいいだけよ」
「人と魔族の争いを見て見ぬふりは出来ません」
「ならやるしかないわね」
そう言って彼女はまた魔法を行使しようとする。
こうなったらこっちも、多少は強硬手段で行くしかないかな。
「ごめんなさい!」
私は身体能力強化と飛行魔術を強化して高速移動、時間停止するまで加速した。
「一撃で決め……?!」
時間停止からの一撃で気絶狙いだったんだけど、私はそれが出来なかった。
「あら、何か?」
そう言って時音さんが余裕たっぷりに首をかしげる。
ちょっと、何でこの人動いて……。
「アナタ、時間の止まった世界を認識、しかも行動もできるのね」
「それこっちのセリフ……」
「あら、私は当然でしょう。時を操る魔法少女なんだから」
「……あ。なるほど」
言われて納得、ってしてる場合じゃない!
「危なっ?!」
「時を止めて私を無力化する気だったのかしら。怖いことを考えるのね」
「っ!」
時を止めるのが通じないとなると、どうしたものか。
魔力量で劣ってるだけに、一発辺りの収束砲の火力で負けてるから、やるなら数を増やして火力を増すしかないけど、それはそれで一本放つより時間が掛る。
当然そんなのを彼女が許すとは思えない。
かといって身体能力だけで突破しようとしても有利になるたびに巻き戻されるのがオチ。
彼女もまた、一撃必殺でなければ倒せないタイプの厄介な相手だ。
「これ、お互いに終わりがなくないですか?!」
「そうね、互いに決定打に掛けるのも事実だわ。でもね――」
時音さんはそこで一旦言葉を止めて、下を見た。
「何処を見て……?」
目線を追うと、そこには両軍入り乱れている魔族と、精霊国の人々の姿があった。
「なんで?!」
さっきから彼女はかなりの頻度で時間を巻き戻しているし、今は時間停止しているはずなのに……。
「何で? ふふっ。いい反応だわ。気持ちいいから教えてあげるけど、あの一帯だけ時間の流れを正常にしているの。だから、巻き戻っているのはここで闘っている私達だけだし、止まっているのもそうなのよ?」
「そんな……!」
そんな器用な事もできるの? というか、そこまでの大きな力の行使をしていて、何でここまで魔力が切れないの?
「あぁ、そうそう。アナタが気にしているであろう魔力はね、私の時間を超加速しているのよ」
「自分の時間を?」
「そう、本来なら寿命がものすごい勢いで減っちゃうんだけど……この世界に来て不老になったから問題なく使えてるの、とても便利よ?」
「ははは、そういう……」
そう言うのもありなんだね……はぁ、何でもありだなぁ、異世界。
「まあ、アナタも巻き戻せるみたいだけどね。とは言え時間操作の力では無さそうだけど」
「…………」
流石にこちらの魔法の正体まではバレて無さそうだけど……このままだとバレるのも時間の問題かな。
そうなると今後に色々問題を抱える気がする。
決心するなら、今しかない。
「アルク、ちょっといいかな」
「なんだ?」
時の止まった空間から抜け出し、アルクに相談。
と言うかコレ、本当にどうなってるんだろう。一部だけ時が止まってて他が動いてるなんて、なんていう浦島だろう。
「本気出すから、ちょっと準備のための時間を稼いで欲しいの」
殺さないようにとか言ってられる相手じゃなさそうだから。
最悪ライデンさんの時のように蘇生する。だから殺してでも、止めるしかない……。
ご読了ありがとうございました!




