Re19 魔法少女と剣聖
「君がメグル君か、僕はロイド、ロイド・クライスだ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
私は流未さんに連れられて、一緒にドラゴンを倒しに行く剣聖、ロイドさんに会いに来た。
ちなみにロイドさんはエルフで、赤髪のイケメンでした。イケメンで強い、勝ってますね。
「話は聞いているよ。一緒にエンシェントドラゴンと戦ってくれるってね」
「お願いされたのは結界だけですけどね」
本当に結界だけでいいのか不安だけど、まあ、大変そうなら力を貸せばいいのかな?
邪魔になったり、仕事を取ったら悪い気もするし。
「それで十分さ。手負いのドラゴンに逃げられれば、逃げた先でドラゴンが何をするかわかったものじゃないからね」
そう言って困った顔をするロイドさん。
うん、ごめんなさい。手負い(治したけど)のドラゴンがこっちに来ちゃったの、私の所為なんです。
流石に怖くて口に出せないので、心の中で謝る。
「それで、一刻も早くと言う事だから、早速向かいたいんだけど、良いかな?」
「はい」
という事で、私とロイドさんは早速、エンシェントドラゴンが居付いたという岩山に向かいました。
「この辺りにドラゴンは居付いたらしい」
「思ったよりただの岩場ですね」
見た感じだと、ただの岩場でしかない。一応、他の場所に比べると場に漂う魔力(この世界だとマナだっけ)が多いけど。それ以外は特に何も無さそう。
「エンシェントドラゴンは食事の代わりにマナを補給するというからね。この場所は最適なんだと思うよ」
私の疑問にロイドさんが答えてくれた。
そっか、マナさえあれば食事が要らないんだね……まあ、食事の度にあんなのに徘徊されたら困るから、他の生物にはありがたいかもね。
「さて、これからドラゴンを探して、見つけ次第戦闘になるわけだけど、君はそのままでいいのかい?」
そのままでいいのか、って言うのは、変身しなくていいのかってことかな?
「そうですね、一応、戦闘になる前には変身しますよ。それも一瞬ですから、大丈夫です」
やっぱりね、変身は戦闘前にするものだし。それで誰に迷惑をかけるわけでもないんだから、お約束は守っておこうと思う。
「それじゃあ、早速探索しよう」
それから十分。
「はぁっ……はぁっ……」
「だ、大丈夫かい?」
私は息を切らせ、とてもぐったりしていました。
岩場を舐めてました。これ、変身無しで行動できる環境じゃないです。滅茶苦茶しんどいです。
「ちょっ……きついんで……変身、しますね」
私はそう言って立ち上がり、ふらふらしながら叫ぶ。
「キュアライト、フォームアーップ!」
コンマ一秒で変身完了。いつものピンクでフリフリの衣装に変わりました。
「それが、魔法少女の姿ですか」
「はい、これなら岩場でもへっちゃらです」
ただ、ロイドさんは私が変身してもその姿を観察したり、ジロジロ見ると言う事は無かった。紳士かな。
「君はアイテムで変身するのではないんですね。それに、精霊? 等もいないのかな」
「え?」
これは、予想外の質問だった。
確かに、魔法少女は大抵の場合、変身する際にアイテムを使用する子が多い、というか普通はそうだ。同時にマスコット的なのも存在したりする。
私の場合は諸事情あって、両方欠けているけど、まさかそこをツッコまれるとは思わなかった。
「えっと、魔法少女に詳しいんですね」
「まあ、ルミ様が色々と教えてくださいましたからね」
なるほど、確かに身近に魔法少女が居れば知る機会はあるのかな。
「なのでお聞きしますが、本当にアイテムも、精霊も居ないのですか? それとも、隠しているのでしょうか?」
「……それは」
つまり彼は疑っているのかな、私の魔法少女としての力を。
変身とかに使うアイテムはあれ自体が一種のパワーアップアイテムだったりするし、彼の言う精霊、魔法少女で言う使い魔は結構重要で、普段はただのマスコットだけど、使い魔によっては、魔法少女と力を合わせることで強大な力を発揮することもある。
当然、これを両方欠いている私は、普通に考えれば魔法少女として不完全であり、欠陥品ともいえる。
これは魔法少女なら結構常識だったりするので、知っている人からしたら、コイツ駄目じゃね? って思われても、まあ、当然のこと。
「両方とも、今の私には無いです。ごめんなさい」
ロイドさんからすれば、こんな不完全な相手がパートナーでドラゴン討伐は不安だろうし、不満もあると思う。でも、私にはどうすることもできない。ただ素直に、自分の状況を認めて、頭を下げるくらいしか。
「いえ、別に責めるつもりは無かったのです。こちらこそ不快な質問でしたね、申し訳ない」
そう言ってロイドさんは頭を下げる。なんて良い人だ。人間が出来ている。
「ただ、結界を張るのに支障は無いのでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
流石にアイテムも、契約獣もパワーアップする大事な存在とは言え、あのドラゴンを閉じ込める結界くらい、私でもなんとかなる。
「そうですか、それなら、ドラゴンを探しましょうか」
「あ、それなんですけど」
「?」
実は変身しているときは通常時より敵意とかの察知範囲が広がるし、精度も上がる。それで、変身した際にさっきまでは反応の無かったところに大型の生命反応を感じた。多分、これがドラゴンだと思う。
なので私はその旨をロイドさんに伝えた。
「なるほど……それなら最初から変身した方が良かったのでは?」
「うっ……」
いや、ホントその通りです。
でも、何とかなるかなと思ったし、戦闘前に変身した方が見栄えが良いと思った。なんて言えない。
「いえ、今はそんなことを問い詰めている場合では無かったですね、早速行きましょう」
「は、はい」
ロイドさんの真面目さに救われた。もうさっさとドラゴン問題を解決して帰りたい。
「居ましたね」
反応のあった方に行くと、ドラゴンは大きな岩に囲まれた窪地に居た。
「あのドラゴンが逃げて来たと言うのは本当だったようですね。本来ドラゴンはあのように隠れるように暮らしたりしませんから」
そう言ってロイドさんはドラゴンを観察している。私はそんなにまじまじと見たくないな。トカゲだし。
「メグル君、結界を頼めるかな。できれば空を自由に飛べないように、天井を低く戦闘で壊れないよう硬く結界を張って欲しいんだけど」
「はい、任せてください」
言うと、私は魔導障壁の応用で、巨大な壁を窪地を囲うように張って、天井もしっかり低くした。
とは言え、余り狭すぎてもこちらも戦いにくくなるので、そこら辺の匙加減は悩んだ。
「ありがとう、これで奴と心置きなく戦えるよ」
そう言ってロイドさんは剣を抜き、ドラゴンに向かった。
「僕はロイド・クライス、古より生きる最強の龍種、エンシェントドラゴンを討つ者! いざ尋常に勝負!」
ロイドさんは名乗りを上げて突進する。
その速度は思ったより速く、強化魔術を使ってない私には動きが追えない程だった。
ここは何か起きる前に強化をしておこう。
とりあえず五十回分くらいでいいよね、前にこのドラゴンと鉢合わせた時もそのくらいだったし。
「はあぁあああっ!!」
ドラゴンに斬りかかるロイドさんを目で追えるようになった。
それでもその速度は凄まじく、体の大きなドラゴンは小回りが利かず、追い付けていない。
ただ……。
「くっ! 硬いな……」
ロイドさんの剣撃はどれもドラゴンの鱗に弾かれてしまい、致命傷どころか、軽傷すら与えているようには見えない。
「ふふっ、やはり鋼の剣如きでは駄目だったか」
笑いながら、そんなことを言うロイドさん、笑ってるけど、ちょっと悔しそうだ。
「なら仕方ない、こちらを使わせてもらおう!」
ロイドさんは叫ぶと、鋼の剣を捨てて、新しい剣、刀身が蒼白く輝く剣を握った。
「聖剣カリバーンの力、使わせてもらう!」
どうやらアレは聖剣らしい。なんで最初から使わなかったんだろう?
「本来なら自分の実力だけで倒してみたかったが……優れた武器もまた、優れた剣士である証。この僕の力全てで、お前に勝って見せる!」
「な、なるほど」
なんか一人で勝手に説明してくれた。どうやら優れた武器に頼らない自力だけで勝ちたかったみたい。
「はあぁー!」
ロイドさんが聖剣で斬りかかると、今度は危険だと判断したのか、ドラゴンが空を飛んだ。
とは言え、天井が低いので、そこまで高いわけではないんだけど。
かといって、地面から届くほど低くもない。岩壁を登れば届く程度の高さではあるけど、剣では戦いにくいかも知れない。
「ここは私が――」
魔術を使ってドラゴンの動きを止めようとすると、ロイドさんが岩壁を駆けあがっていくのが見えた。
「メグル君は結界に集中してくれ! 僕が倒す!!」
「あ……はい」
別に、一回張ったらそこまで管理に気を遣う物でもないから、戦闘にも参加できるんだけど、まあ、剣の時もそうだけど、出来るだけ自分の力で勝ちたいのかな?
「喰らえっ! 雷神剣!」
ロイドさんの叫んだ技名通り、剣には激しい雷が纏い、それがドラゴンに向かって振るわれる。
ドラゴンも今度は避けるのでなく、大きく吠えると、鋭い爪で応戦した。
剣は爪に弾かれ、空中で態勢を崩したロイドさんをドラゴンの尾が襲う。
これをロイドさんはギリギリ、剣でいなして、地面に着地した。
「はぁっ……ふう。悔しいな、あぁもあっさり弾かれるなんて。その上あの鋭い反撃……っ」
少々言葉に力の入るロイドさんを見ると、左腕から血が滴っているのが見えた。
さっきの攻撃をいなした時に、負傷したのかもしれない。
「レッサーヒーリング」
おや、ロイドさんは簡単な回復魔術くらいなら使えるんだ。
これはなかなか、長期戦になりそうだなぁ……。
そう思ってから、三十分程は闘いは続いた。
激しい攻防戦、ロイドさんが魔術と剣術を巧みに使い分けて戦う中、ドラゴンもまた、爪や尻尾、翼や牙、ブレスを用いて応戦する、熾烈な戦いだった。
ただ、お互いに決定打は中々出ず、結果的に消耗戦になり、先に力尽きたのはロイドさんだった。
「メグル君……すまない……後は、任せても、いいかな」
「はい」
ロイドさんは最後の気力を振り絞ったのか、私の返事を聞くと、気を失ってしまった。
恐らく魔力の使い過ぎが原因だと思われる。
ドラゴンからの攻撃は強力なだけじゃなく、速い上に広範囲、避けるより防ぐことの多かったロイドさんはそのたびに魔力を消費していたから。
「さて、じゃあ私の番ですね」
という事で、ここから第二ラウンド開始だ。
ご読了ありがとうございました!




