Re17 魔法少女と久しぶりの
帝都で精霊国の王様に対する紹介状を貰ってから、私はすぐに帝都を発って精霊国に向かっていた。
「らーららー、ららー」
飛んでる間は普通に暇なので、とりあえず歌でも歌っているんだけど、いやあ……大空を飛びながら歌を歌うなんてなんだかロマンチックだよね、飛行速度は戦闘機並みだけど。
「それにしてもこの世界に来てから何だかんだ順調だなぁ……」
日本で流行ってた異世界転生モノだと皆、寄り道したりほのぼの暮らしたりしてるけど、私ってばサクサク進んでる気がする。
移動だって空を高速移動してるから時間掛からないし、日本に居た時みたいにやたらと事件に巻き込まれたりもしてないから目的に向かってストレートに進んでると思う。
この分なら爆速で旅が進んで行ってアニメ化しても一クールで原作最終回迎えるレベルで終われそうな気がする。
まあ、投獄されたのだけは完全に寄り道だった気がするけど……。
それはそれとして今回の旅路も順調、順調。このまま一気に精霊国に行っちゃいたい。……と思っていたんだけど……。
なんかこう、遠くから助けを求める声が聞こえてきているんだよねぇ……さっきから。丁度進行方向だし、助けに向かっているつもりだけど……。
悲鳴の聞こえる辺りに着いた私は上空から敵を確認しようと思ったけど、運が悪いことにこの辺り一帯は森で、人を襲う為に整備された道沿いに出てきている魔物は確認できるけど、森に伏せている魔物までは目視確認はできないけど気配はする……結構な数が居るみたい。百くらい? それに対して襲われているのはみえているだけで二、三十人くらい。でその中で抵抗している人はかなり少ない。ほとんどが戦えない人達みたいだ。
「とりあえず……身体能力強化……『再利用』……よしっ」
魔法で過去に発動した身体能力強化を『再利用』して一つの魔法として過去複数回分発動。とりあえず手加減が面倒じゃないように五十回分を使った。
身体能力強化は本来、重ね掛けしても重複しないけど、魔法で一つの術式として行使すればその限りではない……まあ、私オリジナルだね……魔術の温存や実力の隠蔽にはちょうどいい手札だし、発動回数を増やせばそれこそスタープラ〇ナな速度までいけちゃうし。
人助けをする以上ちゃんと助けないとだけど、私の力をあんまり見せちゃうのもね……切り札を隠したいのもあるけど、それ以上にお約束っぽいからね。
これなら後で強力な魔術とかを使った時に「ま、まだあんな力を隠していたのか!」的な展開になるもんね、魔法少女としてお約束は守りたいところがあるわけです。
「さて……行くよ!」
私は高速で地上に降り立つと、人を襲っている魔物をパンチやキックで吹き飛ばした。
出来るだけ飛ばした魔物が他の魔物にぶつかって二次被害を期待できるようにしながら、かつ襲われている人達に危険が及ばない立ち位置、立ち回りを意識して……。
「皆さんは一カ所に固まってお互いをフォローしてください! 私が魔物を倒しますから!!」
「何?! ……奇妙な人、理解した!」
「……奇妙って……」
私の言葉に返事をしてくれたのは犬……狼? のような耳としっぽのお兄さんだった。なんだろう人狼的な感じ……?
とりあえず、皆が纏まってお互いを守れる状態になるまでは遊撃して……体制を整えたら私が魔物を倒していこう。
「おいアッシュ! その珍妙ピンクはなんだ! どういう生物だ!!」
「わからん! だがこの奇妙な人は強い! 我々は仲間の命を守るぞ!」
「応!」
「…………」
なんか……人助けに来たのに扱いが酷過ぎるんだけど……文化の違いかなぁ……。
「ちょっと悲しくなってきた……がんばれ私……」
それにしても、この魔物達……殺すのは気が引けるなぁ……。
以前からそうだけど、魔物側が悪いのかどうか判断が付かない。何故こうなっているのか分からないうちは適当に追い払おう。
そうと決まれば即行動。森から出て来る魔物を優先して森の奥に吹き飛ぶようにパンチ、キック、パンチ、キック……たまにタックル。たまにドロップキック……たまに背負い投げ。
しばらく私が暴れると魔物達も勝ち目がないとわかったのか、森の奥の方へ引き上げていった。
「ふぅ……終わった」
「す、凄いな、奇妙な人」
「あぁ……恐ろしい珍妙者だ……」
「むしろ文化の違いからくる毒舌が恐ろしいですけど……」
無傷で勝ったはずなのに、助けた人達からの評価で私の心は傷だらけな気がする。
奇しくも先日、魔王側の魔法少女に言われた言葉を思い出してしまうくらいには傷ついた。
「奇妙な人……名は何という? 俺はアッシュだ。アッシュレイ・ドーナ」
「私は三角廻です」
「ミスミメ・グルか妙な名前だな」
「妙なところで切るからですよ……ミスミ・メグルです」
何でそんなところで切ったんだろう。まあどっちにしても異世界人の私の名前は妙に聞こえるのかな……?
「それで、珍妙ピン――いや、メグル殿、貴方は一体何者だ?」
私とアッシュさんが話している所に、横から声を掛けられて振り向く。
ん、この人はさっきも見た気がするなぁ、この虎顔……髪の毛も虎柄だし。あ、そうか。さっき戦闘中に私を「珍妙ピンク」とか「どういう生物だ」とか言ってくれた人だ。
「私は魔法少女です」
「何? では貴女が、百年に一度現れる神の使いか?」
「え、まあ……そんな感じです」
私の返答に集まっていた人達から感嘆の声が上がる。
というか、よく見たらこの人達全員、種族が違くない? ……エルフにドワーフ、人狼に虎顔、他にもハーピィっぽいのとか……まあ、色々。
「もしかして精霊国の方々ですか?」
「そ、その通りです」
「……なんで敬語……」
いや、そっか、一応神の使いになってるんだもんね……間違ってないけど騙してるみたいであんまり気分良くないかも……。
「あの、私は神の使いでもありますけど、人間なので、そこまでかしこまらなくてもいいんですよ……?」
「何、元人間だったのか……」
「現在進行形で人間です!!」
私が怒鳴ると、皆がビビって固まって……中には震えて泣き出したり謝りだす人までいた……。うぅ……凄い罪悪感と微妙なイライラの板挟みが……。
「怒鳴ってすみません……でも、ちゃんと人扱いしてくれないと困ります」
「わ、わかった。従おう」
「いえだから……はぁ。も、いいです……」
別に従わせようとか、そういうつもりはないんだけど。本当に分かってもらうのは結構大変そうなので、今は諦めることにした。
「それで、皆さんはこんなところで何を?」
「……俺達は精霊国から逃げ出して来たんだ……」
「逃げ出して……?」
なんだろう、もう凄く物騒で面倒な予感しかしない。
気になって私が詳しく聞こうと思うと、アッシュさんが困ったように言った。
「とりあえず、話は一旦後にしてもらえないだろうか……少なくない被害が出ているし、ここに居続けるのもな……」
確かに、魔物に襲われた場所に居続けたくはないよね……。
「何処か落ち着ける場所とかあるんでしょうか?」
「……無い、だろうな……その辺の事情も色々……これ以上旅もできないから俺達は精霊国に戻ろうと思う、一緒に来てくれればその辺の話もできるが……?」
「わかりました。私も精霊国に向かう所でしたので、お願いしますね」
本当は飛んで行った方が遥かに早いんだけど……この人達がまた魔物に襲われたら危険だろうし、人の命には代えられないよね。
という事で、被害の確認や再出発の準備が終わった頃、私は先頭を行く馬車でアッシュさんに話を聞くことになりました。
「まずどこから話そうか……そうだな、私達があそこにいた理由だが。精霊国から逃げて来たんだ。帝国に難民として受け入れてもらうつもりでな」
「難民としてですか……何か精霊国にあったんですか?」
「あぁ……実は精霊国は今、滅亡の危機にあってな……というのも、世界最強の龍種であるエンシェントドラゴンが出現してな。それに伴ってドラゴンに怯えた魔物達が住処を離れて大移動を始めたんだ。そして結果的に住処も無く、他の魔物と勢力圏が被ったりした魔物が人里に姿を現し、襲ったりすることが増えて……更にはこの混乱に乗じてか魔王軍が攻めてきやがったりと、兎に角物騒な事件の連続でな」
「それは……とんでもないことになってますね」
魔物のグループはもしかしたら魔王の軍勢なのかもしれないけど、エンシェントドラゴンか……。帝国で出会ったアレもそうだったなぁ。
「そのドラゴンって、結構一杯いるんですか?」
「まさか、この世に一体だけだと言うのが一般常識だ」
「…………おや?」
それは……あれ? うーん?
「でも、その……そのドラゴンって帝国の領土に居ませんでした……?」
「なんだ、知っているんじゃないか。そのドラゴンだよ。何でも手負いだったみたいでな、何かから逃げて来たと言う噂だったが……」
「へ、へぇ……」
どうしよう、私の所為な気がする。
私があの時ドラゴンを殴ってしまったから私にやられた住処を捨てて、こちらに逃げて来たのかもしれない。
そしてそれの所為で生態系が変わって、精霊国の人達に被害が出ていて、更にそこにつけ込んだ魔王軍の進軍……これ、私の所為……だよね……。
「まあそんなこんなでな、精霊国はもう駄目だと思った俺達は帝国側に逃げることにしたんだが……結果は知っての通り、魔物に襲われてしまい……メグル殿が助けてくれなかったらどうなっていたか。本当にありがとう」
「いえいえ、そんな……はぁ」
私の所為と思わしき部分が多々あるだけに、感謝されても罪悪感しかない。
「それで、差支えなければ、メグル殿の目的は……?」
そう言って私の顔を不安そうにチラ見するアッシュさん。え、なんだろう?
「えぇっと、精霊国で他種族の歴史を学びたいな~と」
「なぜそのような事を?」
「んー、魔王と戦うのに必要だから……ですかね」
嘘ではないよ。別に魔王を一方的に倒すだけなら、歴史を学ぶ必要は無いかも知れない。でも、戦うには理由が必要だと思う。相手を悪として、正義を行おうと言うなら、暴力を振るうなら、それだけの理由が必ず必要。
魔法少女は勧善懲悪な存在に成りがちだけど、だからこそ、一般的に支持される程度には明確な善悪をハッキリさせる必要もある。
もちろん、世の中に一方的な悪とか、完全な正義なんて無いのは流石にこの年だからわかってるけど。
それでも自身の正義に照らし合わせて相手を悪と否定してしまうのなら。誰よりも相手を知らなければならないと思う。
先輩魔法少女が言っていた「ファンより詳しいくらいじゃなきゃアンチは張れない」と。聞いたときになんか違う気がしたけど。言いたいことはわかったのを覚えてる。
「魔王の弱点を調べるってわけか……」
「まあ……そう、ですね」
実際は違うけど、まあ、そういう事もあるかもしれない。意外な情報とかが眠っている可能性も……無くはない?
「だが、精霊国は今危険な状態だからな……調べものなんてできるかどうか」
「うーん、エンシェントドラゴンは置いておくとしても、魔王軍なら何とかなるかも」
「本当か?」
「まあ、追い払えばいいだけですし」
ドラゴンはなぁ……追い払ったらその先の国がまた被害に遭うかもしれないから、たやすく追い払って解決とは行かないのが困ってしまう。
というかトカゲと関わりたくない。
「追い払うだけって……言うのは簡単だけどな」
「数はどのくらいなんですか? 百万くらいですか?」
私が聞くと、アッシュさんは目を丸くして驚いた後、呆れたように溜息を吐いた。
「そんな数の魔物が居るわけないだろう……というか、居たらとっくに人類そのものが滅んでいる」
「そんなものですか」
「魔法少女って言うのは常識がないのか……? それともそちらの世界ではそれが普通なのか?」
「……そんなことも無い……のかな?」
よくわからないけど、流石に日本はそんなに兵隊さんは多くないと思う。多分。
でも魔物だったらね、ほら、あるかもしれないし。
「まあでも、それくらいなら何とかなりますよ」
「それくらいって、数は言ってない……いやまさか、百万いなければいいって話か?」
そう口にして、何とも言い難い、緊張した面持ちのアッシュさん。なんだろう、どういう表情何だろう、これは。
「まあ、そうですね。上級悪魔換算ですけど」
「何を……いや……そうか」
流石に魔法少女クラスが百万とかは無理っぽいけど、そうじゃなければ……まさか魔王百万もないだろうし、平気な気がする、多分、きっと。
「国に着いたら……城に案内するよ」
「お城ですか」
それは何というか、喜んだ方がいいのかな? できれば情報収集によさそうな図書館とか、本屋が良いんだけどなぁ……。
「あぁ、王女陛下がお会いになってくれるよう、とりなそう」
「へ? え?」
何々、どいう話? なんでそんなことに?
「大丈夫だ、俺からきちんと紹介する」
「は、はぁ」
それは、なんだろう、どういう事だろう?
これがもし身なりの良い人が言っているなら「え! もしかして身分の高い人だったの?!」って反応もしたんだけど……どう見てもこう……帝国でも見たような一般的な服装っていうか……飾り気のない実用性も若干怪しい安っぽい服というか。
「まあ……いっか」
私はあんまり深く考えないことにした。
日本に居た頃も色々面倒に巻き込まれたけど、なるようになってきたし、なるようにしかならなかった。
だからまあ、今回の話も逆らってもロクな頃は無さそうだし、何なら発端は私の所為っぽいし……流れに身を任せて、時には私の力で流れをいい方向に変えられるように。
今はただ、様子を見守ろうと思いました。
ご読了ありがとうございました!




