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魔法少女と調べもの

 先日最前線で魔法少女と戦った私は今、帝都で最初の予定通り、学者さんに魔法少女とその伝説についての話を聞いています。

「つまり魔法少女は過去に何度も確認されているんですね?」

「えぇ、魔王がいる間は百年に一度、呼ばれるようです」

「魔王が居ないと呼ばれないんですか」

「えぇ、世界の危機に呼ばれると言われていますが、大昔、邪神が世界を滅ぼそうとした時は呼ばれなかったそうですから」

「そうですか」

 邪神って言うのはライデンさんと他の英雄が力を合わせて倒した悪意ある存在だったらしいけど……それを倒すためには魔法少女が呼ばれなかったのは何故だろう……?

「それで、魔法についてなんですけど」

「申し訳ない、こちらでは存じ上げませんでした。魔法少女とはそのような特別な力もあったのですね……一般的にこの世界での伝承では、魔法少女は強力な魔術と、高い魔力を持っている存在という認識で、どちらかと言えば見た者の印象を残したものが多く、本人から聞いたような正確な情報は無いのです」

「なるほど……」

 それじゃああの悪魔が知っていたのは……まあ多分、魔法少女が居たからだろうなぁ。

 緑の子の話では他にも仲間が居るようだったし、魔王にも近しい存在に感じられた。それなら他の幹部や悪魔が知っていてもおかしくないか。

「それで、後は聖王国と魔法少女について、何かご存じないですか?」

「聖王国と魔法少女ですか……そうですね、そういえば、魔法少女伝説は聖王国が始まりと言われていますね」

「そうなんですか?」

 それは初耳だ。いや、この世界の事なんてほとんど知らないんだけど……聖都で調べたときにはそれらしい情報は無かった。

「えぇ、聖王国以外の国では魔法少女の伝説は他国から流れて来たおとぎ話とされていることが多いのです。それ故に、魔法少女の始まりの土地とも」

「へ、へぇ」

 別に聖王国で魔法少女が生まれたわけではないと思うけど……。始りの地……かぁ。

「それで、他には何か無いですか?」

「そうですね、伝説は聖王国が率先して流していたようですが……その内容はご存じですか?」

「えっと、世界の危機に魔法少女が現れるって話ですか?」

「それもですが、その後の話です」

「後、ですか」

 私が首をかしげると、学者さんは続けた。

「魔法少女は激等の末に魔王を倒しましたが、その時にはもう死の間際……瀕死の重傷で聖都に戻った魔法少女は、彼女を英雄として迎えた聖王国民の感謝の言葉に笑いかけながら、静かに息を引き取ったという物です」

「ん……?」

 なんだろう、それって凄く違和感があるような……。

「ですから、今でも聖王国では魔法少女は現れる度に英雄として迎えられるようですよ」

「そう……ですか」

 私が聖都に行ったときはそんな感じしなかったけどな……何なら上手く利用されて悪魔と戦わされたし……いや、自分の意志だけどね? 流れ的にやらされた感じっていうか。

 それに、もし本当にそう思っているのなら……なんで聖王国は魔法少女と一緒に戦おうとか思わないんだろう……実際戦ってるのは帝国だけだし。

「何か気になることでも?」

「い、いえ。何でもないです」

 ……もしかしてあの時言っていた緑の子の言葉……その意味って……。

 聖王国が……魔法少女を殺そうとしたの……? その隠蔽に英雄として迎えた伝説を流して……?

 だとしたら聖王国の私に対する扱いは……? もっと好意的でないと伝説との整合性が……。

「あの、魔法少女伝説ってどのくらい前からあるんですか?」

「私の研究では約六百年前ですね」

「六百年前……ですか」

 確か緑の子は五百年前の魔法少女だと言う話だった。

 という事は伝説通りなら六百年前に来た魔法少女は魔王を倒したのに、その百年後にはまた魔法少女が呼ばれていると言う事だ……。

「六百年前に魔王を倒した後、魔王は復活したのでしょうか?」

「復活というより、別の魔王が出て来たというのが有力な説です。そしてそれ以来魔王が変わっていないとも」

「つまり今までの魔法少女は魔王に負けている……?」

「かと思われます」

 その言葉に息が詰まった。今までの魔法少女……恐らく緑の子と紫の子もだけど、魔王に負けたんだ……あれだけの力があっても、勝てなかった魔王……。

 そして何より……緑の子は言っていた「世界を救った後に救ったはずの人間に殺されそうになった魔法少女までいる」と。それはつまり、六百年前の魔法少女の事ではないだろうか……そして、その彼女の言葉を知る、五百年前の魔法少女。

 この二人には面識がある……? 百年も生きる時が違う二人が……? それに、緑の子は魔王に不老不死にしてもらったとも言っていた。であるなら、代変わりしてないない魔王もまた不老不死……? だとすると魔王って……もしかして。

 全てはただの憶測だし、何の根拠もない。

でももし、もしも、私の想像が正しいなら……私は魔王と、戦えるだろうか……。

「あの、メグルさん? 大丈夫ですか?」

「え……あぁ、はい」

 考え事をしている私の顔に何か感じたのか、学者さんはとても心配そうに私を見ていた。

「すみません、大丈夫です。あの、今日はこの辺で帰りますね。貴重なお話、ありがとうございました」

「いえいえ、私も魔法少女ご本人とお話しできて大変有意義な時間を過ごせました」

 私はもう一度学者さんに挨拶してから、研究室を出た。

 行先は帝都で取った宿屋。流石に今の話は結構応えたし……私の嫌な想像がどんどん膨らむ内容だった。

 この世界の事……もっと知らないといけないのかも知れない。でないと敵の……魔王達の狙いが……その願いが、安易に否定して良い物ではないかもしれない。そんな気がしてきたから。

「ふぅ……つかれたぁ……」

 宿に戻るなり、私はベッドにダイブした……。

「六百年前の魔法少女が……」

 もしかしたら……魔王……かもしれない。

 助けたはずの人達に裏切られて、殺されそうになり、その上殺そうとした人達はそれを隠すために魔法少女を伝説の英雄にして、死んだことにした……その後、魔法少女はどうしたのか……。

 緑の子が魔王軍に居て、その話を知っていた。

 だからこそ、最悪の想像をしてしまった。

 それは、六百年前の魔法少女が魔王になり替わった可能性。

 不死の力は魔法の効果なのか、それともこの世界特有の何かなのかは知らないけれど、少なくとも魔王を倒す力があった魔法少女が、新しい魔王の下についているとは思えなかった。だとしたら、人を恨んだ魔法少女が魔王になって同胞である魔法少女の国を望んだ……?

 全部憶測でしかないけど……でも本当にそうだった時の為に、私はやっぱり、魔王のことも、世界のことも知りたい……。

 どうしたらいいのかな……この世界について知るには。

 この帝都で調べるのもいいかもしれないけど……他の視点で見ることも必要かもしれない。

 そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。

「はい? どうぞ」

「うむ、入るぞメグル」

 そう言って入って来たのはライデンさん……と皇帝様だった。

「なんっ……なんでここに?!」

「いやなに、お前に直接話を聞きたくてな。かといってほら、呼び出そうとしたら逃げるかもしれないと思ってな。軍属したくないとか言っていたし……ほら、権力が嫌いだろう、お前は」

「……まあ、好きじゃないですけど」

「だろう。だからわざわざ足を運んだ。その価値があると踏んだ」

「そうですか……」

 それはそれでちょっとやり難いんだけど、まあこの皇帝様は私の人となりを見てここまで来てくれたんだし、無下にもできないよね。

「それで、早速質問してもいいか?」

 言いながら、皇帝は勝手に部屋にあった椅子に座った。まあ私もベッドの端に座ってるんですけどね……。お互い不作法だなぁ。

「質問ってなんでしょうか?」

「うむ。お前達が戦ったと言う魔法少女、彼女らの魔法について何かわかったか? じいからは相手を錯乱させる術と、高速移動と切断の能力と聞いているが?」

 なるほど、彼女たちの戦闘能力を知りたいのかな。

 でもライデンさんは彼女達の魔法をそういう風に見たんだね。

 多分、違うけど。

「多分、違いますね」

「……オイ、じい」

「い、いえ、そのように見えたと言う話ですぞ? 決して断言などしておりませぬ」

「はぁ……まあいい、それで、実際はどういうものなのだ?」

「紫の魔法少女の魔法は精神負荷です。相手に嫌な思い出とか、感情を思い出させて思考をかき乱す魔法でした」

「ふむ、それは随分陰湿な力だな」

 確かに、私もそう思う。

 とは言え戦闘では割と厄介な能力だ。正常な判断を鈍らせると言うのは、戦場において致命的だから。

 とはいえ、もう一人の魔法の方がかなり強力だけど。

「それで、もう一人、緑の魔法少女の魔法は恐らく、空間操作の魔法です」

「空間操作? どういうものだ」

「空間を切断したり、空間を固定して動けなくしたり、空間移動をしたりと、空間に作用する様々な効果を発揮するモノみたいです」

「そちらは随分と厄介だな……空間を切ると言うのは防げるのか?」

「……無理ですね。空間を切ると言う事は、そこにあるだけで切れると言う事ですから。ですが彼女の発言からして切断には、自分の距離……射程があると思われます」

「なるほど……どちらにしてもこちらの戦力では対抗できそうにないな……」

「何を弱気になっているのです陛下。ワシが居ますぞ!」

「……じい、聞いた話だと、お前は体を真っ二つにされていたそうだが?」

「な、何を言って……そんなことは……無いと思いますぞ?」

「それを遠目に見たと言う兵士がいるんだがな……」

 おや、アレは見られてたの?

 だとするとその後の会話も聞かれた? 魔法も見られた?

「いやいや、それなら死んでいるでしょう、ありえませぬ。ワシとて不死では無いですからな」

「それもそうか? まあ、メグルが蘇生できないなら、だがな」

「…………」

 これは何だろう、私に鎌を掛けているんだろうか……。もしそのライデンさん真っ二つを見ていた兵士が私の蘇生も見ていたのなら……はぁ。いいか、もう。

「まあ、出来ますよ、蘇生。しましたし」

「なんじゃと?!」

 私の言葉にライデンさんが目を見開いて口をあんぐり開けている。

 こんなわかりやすく驚く人いるんだね。

「そうか、なら兵士の言った通りであったな。その蘇生、どの程度の効果なのだ?」

「すみません、言う気は無いです」

「ふむ。その力を人の為に使いたいとは思わないのか」

「物事には限度がありますから」

「……乱用できない制限があると?」

「言えません」

「…………そうか」

 私の言葉に納得したのか……それとも単に追及が無意味だと思ったのか、皇帝様はそれ以上何も言わなかった。

 私としても、この力で人を助けたい思いはあるけど、目先の蘇生だけでは世界を救う事にはならないと思っている。

 なのでこの力を広める気は無いし、それだけに囚われる気もない。

 とりあえず、この話はもういいかな?

「そうだ、実はお聞きしたいことがあったのですが」

「ん、そうだな、此度はお前に借りが出来た、良いだろう、申してみよ」

「ありがとうございます。その、この世界について……主に歴史を学びたいのですが、何処か国外で良い場所はないでしょうか?」

「国外でか? 何故だ」

「一つの所で学ぶより、多方面から見た世界を知りたいと思いまして……」

「ふむ……であるなら精霊国だろうな」

「精霊国ですか?」

 私の質問に頷く皇帝様。

「あぁ。あそこは多くの他種族が暮らす国だと聞く。であればそれこそ多種多様な歴史を学べるであろう」

「なるほど……」

 確かにそこなら、ある程度知りたいことを知れる可能性もあるのかも……。

「行くか?」

「え、あぁ、そうですね、行ってみようかと思います」

「では紹介状でも書いてやろう。何遠慮するな、貸し1つでいいぞ」

「無償ではないんですね……」

「当然だ、お前に貸せる貸しは多いほどいい。貴重な切り札になるからな」

 凄いな、こういう事を面と向かって言えるメンタルの強さと太さはちょっと見習いたい……こともないね。

「……はぁ。まあハッキリ言ってくれるだけスッキリしますけど」

「だろう? お前はこういう方が好むと思った」

「いえ別に、貸しが欲しいとは思ってないですけど……」

「ははは! そう言うな!」

「うーん……」

 まあ、悪い人じゃないのはわかるし。いいか……。

「では後日紹介状を書いてこちらに届くよう手配しよう。旅費や馬車などの貸しもいるか?」

「要りません」

「そうか。まあ飛べる奴に馬車は要らないか……」

「そういう問題では無いですけど……」

 単純に借りが増えるのは嫌ってだけなんだけど……わかってて言ってるんだろうなぁ。

「そうだ。真面目な話、例の魔法少女達に攻め入られれば帝都は落ちる、できれば早く戻ってきて欲しいのだ」

「そうですね……出来る限りそうしたいとは思いますけど」

 でも、戦う理由がハッキリしないことには私としても無闇に暴力で解決するようなことはしたくない……それに……。

 もし、相手がその気何だったら、私がこの世界に来るまでにこの帝都は落ちていたと思う。

 少なくとも魔法少女が2人にそれを従える魔王がいるんだから、この世界の強さの基準から言っても、世界が滅んでないのがおかしい。

なのに、そうなっていないと言う事は、魔王軍には何らかの意図があって、本気での攻勢に出ていないと言う事。それが何かわからないから一概に安全とは言い切れないけど……でもまだ、魔王軍は攻めてこない……そんな気がする。

「……もしピンチになったら私の名前、呼んでくださいね」

「? 呼んだらどうなると言うんだ」

「私が来ます、全速力で」

「……そんなことができるのか」

「魔法少女ですから」

 職業柄、助けを求める声にはそれなりに敏感な方だし……。

「それでは、私は旅支度でもしますね」

「む、そうか。ではな、メグル。帰るぞじい」

 そう言って皇帝様はライデンさんを伴って部屋を出て行った。

 ふぅ……帝都での借り、安く済むといいなぁ……。

 そう思いながら、私は紹介状をもらったらすぐ旅立てるように、準備を進めるのでした。


ご読了ありがとうございました!

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