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Re15 魔法少女と魔王

「っだいまー」

「ただいま……もどった……」

「あら、お帰り。操子、虎馬」

 あたしらがあのピンクのバケモノとの闘いから帰ると、あたしら魔法少女の部屋には魔王が居た。

 その上、他の魔法少女達も珍しく全員揃っていた。

「……マオ……何の用だ」

「何の用って、決まってるでしょ? わからないの?」

「チッ」

 魔王はこちらの考えを、行動を見通すような眼で、あるいは小馬鹿にしたように嗤った。

「嫌な女だよなぁ」

「誉め言葉ね。それで?」

 あたしの悪口も気にも留めず、催促してきているのは恐らくあのピンクの話だろう。

「……負けたよ。あのピンク、ありゃバケモノだな。アンタ並みだ」

「へぇ……そう……」

 言いながら、心底嬉しそうに、しかし悪意のこもったイヤラシイ顔で笑うマオを見て、虫唾が走る。この女は狂ってやがる……。

「お前の趣味にどうこう言う気はねぇけどな、あたしはお前の言う魔法少女の世界に興味があるだけだ、お前の事は大嫌いだ」

「ふうん。操子ってばつれないわ……で、魔法は?」

「わかんねぇよ。脚斬り飛ばしたのにすぐ元に戻ったし、回復の仕方が異常だったから復元系かと思ったけど、時間の停止も使えてた……一応『再利用』って口にしてたけど、ブラフじゃねぇか? 時間停止と一致しねぇし」

「……そう。時間停止に復元ね……」

 マオはあたしの言葉を聞いて、口に手を当て黙り込んだ。こりゃコイツが考え事している時の癖だ。非常に分かりやすい。

「ねぇ時音、貴女はどう思う?」

「……そうね。時間を操作する魔法かもしれない。時間停止は勿論、復元は巻き戻しとか、あるいは過去の再現。魔法名はあくまでもイメージの助長、言わなくてもできる子はできるわ」

 マオの言葉に返事をしたのは時音……古計時音こけいときねだ。コイツも魔法少女で仲間のうちの一人だ。

「なるほど? それならまあ、行けそうね」

「で、でも……」

 二人の会話に異議があったのか、コマが口をはさんだ。

「あの子……凄まじい腕力だった……あれは……死ぬかと思った」

「確かに、脚力とか腕力が阿保みたいに強かったな……その割に力をセーブしているようにも見えたが……」

「身体能力強化の魔術じゃないのかしら?」

「それだけで……アレ程のパワー? ……先祖がゴリラ……隔世遺伝? ありえない……」

「だな。身体能力強化じゃあぁはならねぇよ」

 身体能力強化なんて戦闘での体捌きを補助する為程度の魔術だ。重ね掛けしても効果は重複しないから強化に限度があるし、あんな馬鹿みたいなパワーの説明がつかない。

「だとしたらこの世界特有のアイテムで強化していたとかかしら?」

「そりゃあり得るかもな……」

 マオの言葉に今度は同意した。それなら説明がつくからだ。復元に時間停止、その上高すぎる身体能力。

 正直魔術もまともに使ってなかったのを見ても思うが、アレはホントに魔法少女か? って感じだ。高い回復能力に時間停止での接近、高い身体能力から放たれる近接攻撃。ありゃ戦士か何かだろ……。

「淳子はどう思う?」

「わたくしにわかるわけねぇでしょう」

「そうね、ごめんなさい?」

 まあ淳子――曽代淳子そだいあつこ――は魔法少女(脳筋)だからな……あたしがわからないのにコイツに分かってたら死にたくなるくらいの馬鹿だ。

「でもそうね……そうなると……彼女を連れて来るなら時音に行ってもらった方がいいかしらね」

「……わかりました、真央様」

「えぇ、よろしくね」

 どうやら今度アイツと戦うのは時音に決まったみてぇだけど、いいのかこれで。

「一人でやれんのかよ?」

「私なら、不利は付かないと思うわ」

「不利がつかない? それだけで勝てんのかよ」

「……かといって貴方達を連れてても、足手まといだわ」

「んだと?!」

「よしなさい、操子」

「なっ! マオてめぇ! あたしが足でまといだっていいてぇのかよ!!」

「そうよ? 違うの?」

「ちげぇな!! あたしならあんな奴に後れは取らねぇ!」

「逃げておいてそれを言うの? 貴女がそんなに無能だとは思わなかったわ」

「んだとっ――」

 マオの言葉にキレて、あたしが一歩踏み出そうとすると、マオの姿が消えた。

 それだけじゃない、あたしは天井を見上げていた。腹部には圧を感じる。

「ぐっ……はぁっ……!」

「操子、貴女達は私の大切な仲間だわ? でもね、決してお友達ではないのよ。仲良こよしではないの。明確な上下関係がある。わかる?」

 そう言いながらマオは踏みつけた腹部の圧を強くする。

「ぐあぁっ……うぅっ」

「貴女は足手まといよ、言ってごらんなさい? 『わたしは足手まといの無能です』って」

「っ! 誰がっ!! ぐぅっ!」

 反論しようにも、腹部に掛かる圧が強すぎて動けない。魔法は……恐らく使う前に止められるだろう……それだけの実力がコイツにはある。

「はぁ……虎馬、この子に精神負荷を掛けなさい。一番キツイのをね」

「え――あ……」

「こ……ま……」

 あたしはコマを……友人の顔を見る。もう既にコマの顔は恐怖に歪み、涙で一杯で……そしてその顔の周りには剣が突きつけられていた。

「虎馬? 言うことが聞けないの? それとも私の伝え方が悪かったのかしら……?」

「ち、ちがっ……!」

「コマ……いいんだ……やれ」

「う、うぅっ……」

「……はぁ。虎馬。わかりやすく言い直してあげるわ……操子を苦しめなさい、死にたくなるほど苦しめて、いたぶって、反省させてあげるのよ。自分が無能な足手まといだと、気づかせてあげないといけないのよ。じゃないとこの子、あの子に殺されちゃうかも……いいの? それでも。貴女の所為で操子が死んでしまうわ……可哀想に」

「うぅ……ごめん……ごめんなさい……ごめんごめんごめんごめん――」

 そう言いながら……コマはあたしに魔法を掛けた……。

 目の前に広がるのは過去の地獄……死ぬほど苦しかった闘い……孤独……絶望。

「あぁあああああああああ!!」

「はぁ、操子……貴女は私の計画に必要な仲間だわ。でもね、だからこそ死なれたら困るの。闘いに出したのも……そうね、虎馬一人じゃ心もとないし、貴女達仲が良いから……でも駄目ね、これからは危険だから貴女は監禁するわ? 魔法も封じておいた方がいいわね……貴女の為なのよ、操子。わかってくれるでしょう?」

「うぅううううううううううううううあああああああああああああッ!!」

 あたしが記憶の波に……激痛を伴う精神負荷の闇に沈んでいく中……あの女はあたしの為と言い切った……。ちくしょう……。

 それでも、最後に……まだ……。

「こ……ま……ごめ……ん…………」

「うっ……うわぁああああああ!!」

「あらまあ、本当に仲良し……ねぇ?」

 ……そして、あたしが最後に見たのは泣き叫ぶ虎馬と……楽しそうに嗤いながらあたしの顔面を蹴り飛ばそうとするマオの顔だった……。


ご読了ありがとうございました!

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