Re14 魔法少女と魔法少女
戦闘、若干の過激描写有りなのでお気を付けください。
皇帝様との会談から五日後。私はライデンさんと共に魔王軍との戦いの最前線に居ました。
最前線というから結構騒がしいと言うか、常に戦闘音が聞こえるようなけたたましい場所かと思っていたんだけれど、思ったより遥かに静か。
風景も酷く枯れ果てた浅黒い荒野に暗い雲が広がる陰鬱な雰囲気にさせる場所で、こんな場所でずっと敵と見合っているって言うのも精神的に辛そう。
というのも、お互いの軍は陣を対岸に敷いて睨み合っているだけで、激しい戦いとかはそうそうないらしい。たまにちょっとした小競り合いはあるみたいだけど。
「よいか、ワシが敵陣に大魔術を使って戦果を挙げる。それを止めに来るであろう魔法少女をお主が相手取る、ぬかるなよ?」
「は、はぁ」
今ライデンさんが言った言葉が、今回の作戦だった。何というか、本当にそれで魔法少女が来るのか凄く心配な作戦だった。
というかライデンさんは帝都の守りの為に移動できないって聞いてたのに……いいのかなぁ。
「では、行くぞ!!」
ライデンさんは叫びながら飛び上がると、上空でギガフレイムの詠唱を始めた。
とりあえずアレで敵に大打撃を与えられれば、魔法少女が出て来る……かもしれないという話だった。
でもなぁ……あれってあんまり広範囲を攻撃できる魔法でもないから倒してもせいぜい百いくらかなんじゃないのかな……。というかその。「大魔術」でいいの? アレ。
「喰らえぃ! ギガフレイム・改!!」
「改?」
私が疑問に思うと、ライデンさんのギガフレイムは横一線で飛んで行った。
あんな高範囲攻撃として使用することもできたんだ……闘技場では必要なかったから使わなかったってことかな。
探知魔術でなんとなく結果を見てたけど、私の予想の遥か上、1000以上の魔族を倒していた。
「まだまだいくぞぉう!!」
「すっごく元気だなぁ……」
ここに来るまで、と着いてから。合わせて8時間も瞑想して溜めに溜めた魔力をガンガン使うつもりみたい。凄い勢いでギガフレイム・改を飛ばしていく。と言っても詠唱が長いからわりと間が開いてるけど。
「ぬぅ?! 来たな魔法少女!!」
「え?」
ライデンさんの言葉に反応して、ライデンさんの視線を追うと、そこには確かに魔法少女の恰好をした人が居た。でも……。
「じいさん、随分ハッスルしちゃってるねぇ? そんなに死にたいわけぇ?」
「ホントに……元気過ぎてこっちが……疲れる……」
ライデンさんに口々に文句を言う魔法少女は『二人』いた。
「来たぞ小娘! 魔法少女じゃ!!」
「ん? 小娘ぇ?」
「……んん……凄い魔力……感じる……」
「……はぁ」
ライデンさん、テンション上がり過ぎだよ……私の存在がもうバレてるし。まあ魔力反応でなんとなく察しは付いてたかも知れないけどさ。
とりあえずさっさと変身して、身体能力強化の魔術を多重掛けしてから前に出よう。
「キュアライト――フォームアーップ!!」
叫ぶのと同時に一瞬で変身が終わり、適当に魔術による強化もしてライデンさんの傍まで飛んだ。
「で、ライデンさん、相手が二人なんですけど……」
「うむ……あの紫の服を着た小娘は知らんが、あっちの緑の小娘はワシが相手にした奴じゃな」
ライデンさんの言う通り、相手は紫のフリフリ服の内気そうな子と、緑と白のこれまたフリフリ服のちょっと気が強そうな女の子だった。
まあ、フリフリに関して言えば魔法少女全体的にそうだから、今更だけど。
「流石に二人相手はきついですよ……」
「ならワシが緑の方を相手取ろうぞ」
「そうですか……気を付けてくださいね、魔法に」
「わかっとるわい」
という事で話は付いたけど、相手がそれに乗って来るかは別問題だよね……。
「そうちゃん……あのピンク……魔法少女……」
「そうだな。魔力的にはそこまで強くなさそうだけど……油断はできないって話か」
「私の魔法……使う?」
「おう、やっちまえ」
どうやら話の内容的にあの緑の子は「そうちゃん」って子みたい。多分あだ名だよね……ってことは間違いなく仲間なんだ、あの二人は。あだ名で呼ぶくらい仲が良いなら連携も取るかもしれない……分断できるかな……というか……。
魔法を使うって言ってたよね。止めるべき……? でも下手に動くのは危険?
「考えても仕方ない! 魔光球……12個くらい……シュート!!」
「っ! アイツ同時にあんだけの魔術を?! コマ! やれ!!」
「ん……『精神負荷』」
私の放った魔光球が彼女たちに着弾するよりも早く、コマと呼ばれた少女の魔法が発動し……私の魔光球は消えた。そして。
「うぁああああああああああああああああああああああ!!」
「な、なんじゃ?! どうしたメグル!!」
私が叫ぶと、ライデンさんが暴れる私の体を押さえつけようとした。しかし私はそれを強化された身体能力で払いのけてしまう。
これは……キツ……すぎる……!!
「ああぁああ! うぅ……っ……いやぁああああああああああああああああ!」
……彼女の使ったという魔法……精神負荷……。
これの効果は恐らく……相手に精神的なダメージを与える事。
私は自身犯した過ち、経験した悲しみ、苦痛、そういったものを鮮明に、映像として見るように思い出していた。それらの精神的な負荷が大きなダメージになり、不安定になった魔力コントロールの所為で発動した魔術を維持できなかった。
結果として魔光球も消え……攻撃は届かず今は完全な無防備……。
「この……ままは……まず……うぅっ……はぁっ……うぅうっ!」
この状況で魔術を使うのは無理だ……集中力を欠き過ぎて効果的な魔術を使う事は出来ない……たとえ発動しても負荷が増せば確実に消えるし、そうでなくても防がれたり避けられたり……こんな中で的確に魔術を扱うのは無理だ……。
「さーって、コマの魔法が効いてるうちに、さっさとやっちゃおうかなぁ!!」
「っ!!」
こっちは魔術が使えない状態……相手はこれっぽっちも消耗してないであろう緑の魔法少女と、魔法使用で魔力が多少減っただけの紫の魔法少女……マズ過ぎる……けど……!
「はぁっ…………あぁあああああああああああっ!!」
私はまだ見ぬ緑の魔法少女の魔法を警戒しつつも、一種の賭けで前に出た。
そして周りの誰も動かない中……紫の魔法少女の腹に一撃……拳を軽く突き出した。
「ぐぁっ?!!」
「なっ?! てめぇっ!!」
「魔導障壁!」
紫の魔法少女は私の一撃でダウン、それを見た緑の魔法少女は私に魔光球で攻撃を試みたけどこれを魔導障壁で防ぎ、私は距離を取る為に地面を蹴り、ライデンさんの横まで跳んだ。
「な……お、お主、一体何を……」
「……ちょっと加速して、殴って来ただけです」
「加速……?」
私は一応、戦闘前に準備として身体能力強化の魔術を『魔法』で重ね掛けしていた。
その回数、2400万。魔法の効果でこれを一度に掛けて、身体能力を爆発的に上げておいた。
結果として私の身体能力は最速で光速くらいある。つまりアレです。
「これがスタープラチナ・ザ・ワー〇ドですよ……」
「スタープラチナ・〇・ワールド……?」
爆上がりした身体能力で時が止まるまで加速する……私の手札のうちの一つ。
魔術が使えないならもう使った魔術(今回は魔法で使ったけど)で対抗しよう……と。
そういう判断。
魔光球は使ってから着弾するまでも魔力コントロールが要る魔術だから消えたけど、強化は使い切りだから消えずに済んだ。これで精神ダメージとかじゃなくてもっと直接的な魔術の無効化とかだったらヤバかったなぁ……。
「後は緑の子も同じような事が出来たら……それもキツかったけど」
緑の子は紫の子に駆け寄って抱き起している……私の事はちゃんと警戒しているみたいだけど警戒の仕方が魔光球を伴っていつでも攻撃できるようにして、安易に距離を詰められないようにという感じだ。
あの分だと私が何をしたのかはわかってないみたい……?
「メグルよ、あの紫の魔法、アレを使われんように先に仕留めるべきではないか?」
「え……あぁ……まあ、そうなんですけど」
個人的には同じ人間、同じ魔法少女だからできれば話し合いたいし、例え闘っても殺したくはない。だから仕留めるという発言はちょっとどうかなと思う。
「先ほどの攻撃、あと何回使える?」
「それ自体は後数分はいくらでも……その後は強化し直しが必要ですね」
「なら今度こそ、ワシが緑を相手にする間に、お主が紫を……よいな?」
「……わかりました」
正直、魔法の正体がわからない緑の子はかなり危険なんだけど……ライデンさん、わかっているんだろうか?
「では行くぞ! ファイアーボール!」
「いけぇ! 魔光球! おいコマ! てめぇは下がって魔法で足止めしろ!」
「わか……った!」
緑の子の命令に従って紫の子が後ろに下がりつつ魔法を発動しようとする。またアレを喰らうのは避けたい……!
「させな――」
「空間壁!!」
「――えっ?!」
私はまた超加速して懐に飛び込もうと思ったけど、時の止まった世界になった段階で、何かに阻まれて動けないことに気づいた。
「……これ、もしかして空間を操作する魔法?」
魔術でこういうのを使う魔法少女は居ないしきっと魔法だと思うんだけど。
さっきの「空間壁」という言葉が魔法のキーワードだったのなら、これは一種の空間操作……空間に見えない壁を作っているのかもしれない。
「マズいな……これ自体は魔術で何とかできるかもしれないけど……!」
流石に時の止まる時間は私の持続力的にせいぜい5秒くらい。この空間の壁を高威力の魔術で破って……それから紫の子にまで距離を詰めて攻撃……間に合うだろうか?
「とりあえず! 魔導収束砲!!!!」
収束砲を上に向けて放つとガラスが割れたような大きな音がした。空間の壁を破壊するのに成功したようだ……。
「これで一気に距離を……!!」
紫の子の魔法を止めるために距離を詰め、残り半分という所で時が動き出した。
「魔法……『精神負荷』」
「ぐぅ!! あぁあああああ!!」
また私は精神負荷をもらい、過去のトラウマなどが蘇る……。特にひどいのは……。
『愛と希望の魔法美少女! めぐる! ただいまさ~んじょうっ!! キラッ!』
という……凄く痛々しい……私が魔法少女になりたての頃の……記憶。
『怪人さん! あなたがしてることはとっても悪い事なんだよっ! みんなとーっても傷ついてるんだからっ! めっだよっ!!』
「うぁああああああ! いゃあああああああああああ!!」
痛い痛い痛い痛い痛い――! 精神不安定になる……なってるけど!! あぁもう! いっそ死にたい!!
「っ! またいきなり妙な位置にいやがる……! だが今度はあたしの距離だ! 空間切断!!」
「えっ――」
私が悶絶、発狂する中……「空間切断」と聞こえて一瞬、我に返り、私は反射的に回避行動をとった……!
「――っ……あっ――あぁあああああああああああっ!!」
回避した結果――両脚が膝下から切り飛ばされた。
感じる激痛……戦いの中にあって、過去に何度も経験した痛み、苦痛。それを久しぶりに感じた。この世界に来て、初めての物理的ダメージ。
「ぐぅっ……『再利用』!!」
「なにっ?!」
私は彼女達から距離を取りつつ、魔法名を叫び魔法を使って足を戻した。
流石にここまでのダメージを受けてると魔法名無しの常時発動させてる魔法だけだと効果が追い付かなかった為に。
魔法は個人の魂に、心に起因する能力であることが多い、それゆえに魔法名を言葉にして発することでイメージを強く持ち、その効果を意識的に高めることができる……。もちろん口にしなくても使えることは使えるけど、大抵の場合効果の大きさに差が出る。
でも、魔法名を口にすること、これは相手に能力を推測する情報を与える事になる。
まさかいきなり……魔王相手でもないところで使うことになるとは思わなかった。
「あのヤロー『再利用』っつったら足が元通りになりやがった……復元能力か……?」
「可能性ある……でも、精神負荷あるのに……どうして」
「わっかんねぇ、痛みで精神負荷から意識が逸れたのかもな……」
「ん……同意」
あぁもう……早速こっちの能力の推察がされてる。しかも大体あってるし……。
私の魔法『再利用』はこのワードに類する複数の能力を持つ。
その一つが欠損した四肢や失われた生命、物質、魔力等を利用可能な状態、言い換えると正常な状態に戻すこと。それを使って使えない状態になった脚を利用できる、正常な……ダメージの無い状態に戻した。
これがあるから私は即死以外の攻撃なら大抵元通りになるけど……痛いものは痛いし苦しいし、だから出来るだけこういう用途では使いたくない……。
「コマ、アイツに魔法掛け続けろ、隣のジジイはほっといていい、だがピンクのは危険だ」
「うん……わかった」
「抜かせ小娘! ファイアーボール!」
「たかだか障壁も抜けない雑魚は黙ってな! 魔導障壁!!」
「『精神負――』」
「させない!!」
私はこれ以上相手にペースを握らせないために、最大限加速してまた時が止まるまで加速、そこで無防備な紫の子をバインドして口も封じた。
「……?! …………っ!!」
「はぁっ……はぁっ……貴女、口にしないと大きな精神負荷は欠けられないみたいだね……それに、魔力量も既に割と減ってきてるのを見ると、持続時間が長いと消耗が増えるのかな……」
「……っ!!」
紫の子はバインドで動けず、口には適当に魔術で作った布をかませてるだけなんだけど。そんな状態で私を力強く睨んできた。
「チッ! コマ――転移!!」
「え?!」
緑の子がこっちを向いて叫ぶと、紫の子が私のそばを離れて、緑の子の脇に居た。
「転移……空間制御の一環……? それが貴女の魔法なんだね」
「あー、そうだよ。バケモノが。お前はなんだ? 復元する能力かと思ったが……その動きはまるで時間を止めてるみてぇじゃねぇか」
「え?」
時間を止めている相手の動きに経験があるの……? もしかして……。
「貴女の仲間にそういう子が居る……とか?」
「だったらなんだ?」
「……」
マズ過ぎるでしょうそれ……。仲間の情報喋っちゃうのもだけど、それ以上に問題なのが相手の戦力の高さだ……。
精神負荷で魔術を妨害できる子に、空間操作で空間の切断と転移ができる子、更に時間を操る魔法少女……ヤバすぎる、まとめて相手にしたら負けるかもしれない……。
「魔法少女とは……これほど規格外の集まりだったというのか……!」
「はん、ジジイ、お前みたいなのはあたしらの戦いではお荷物だ……今すぐ終わらせてやるよ――転移」
「ぬぅ?!」
話していたのも束の間、緑の子が転移魔法を使って一瞬でライデンさんの後ろを取った。
「背後に回った程度――」
「空間切断」
「がぁっ――」
ライデンさんの唸るような声が聞こえた瞬間……彼胴体が横に一線された。
「っ!!」
「空間切断」
私は即座にライデンさんの元に寄ろうとしたけど、緑の子の空間攻撃によって接近を阻まれてしまった。
「さーてと。ジジイは死んだ。後はお前一人だ……そこでよぉ、話があんだけど?」
「……話……? 何?」
ライデンさんを殺したこのタイミングで……? 話があるなら最初からすればいいんじゃ……。
「あたしらはさ、魔王側で魔法少女同士、この世界で協力して暮らしてんだよ」
それは何ということか……最悪の事態だった。魔王側にはまだ……魔法少女が複数居る可能性があるという事実。これはかなり厳しい現実だった。
この感じだと時を止める子以外にも居るのかな。
「でさ、お前もこっちに来いよ、同じ魔法少女なんだ、協力しようぜ?」
「協力……? それで、何をするって言うの? 人を……殺すの?」
「ちっがう、違う! そりゃコイツみたいに立て付く馬鹿は殺すよ? でもそうじゃない、それだけじゃない! あたしらは魔王についてってさ、魔法少女の国を創るんだよ!」
「魔法少女の……?」
それは一体どういう事だろう……そんなことに、何の意味が……。
「お前もさ、神のクソったれにここに連れてこられたんだろ?」
「……そう、だけど」
「あたしもだよ。あたしは今から五百年前に、この世界に魔王を倒すために呼ばれた魔法少女さ。あー、言っとくけど、こっちと日本じゃ時間の流れが大分違うから、五百年あっても日本じゃせいぜい数ヵ月だけどな?」
という事はこの人は日本では数ヵ月前に死んだ魔法少女ってこと? そしてこの世界では……五百年生きて……?
「冗談だよね、いくら魔法少女でも不老不死じゃないはずだし。それにどう見ても年下……」
「そうだな、多分その通りだぜ、アンタの方があたしよりババアだ」
「バッ……」
「でも、あたしはこの世界で不老不死の力を魔王からもらったのさ。だからあたしは体は若くても生きた年月的にはアンタよりずぅっと上さ」
「じゃあ貴方の方がババアじゃない……」
「そうだな? なんだ? 気にしてんのかぁ?」
「うっ……違いますけど!」
べ、別にババア呼ばわりを気にしてなんていない。そんなの気にしてたらこの年でこんな格好で魔法少女なんてやってられない……。
「で、話し戻すけどよ。この世界には百年に一度魔法少女が召喚されてんの。でもさー気に入らねぇよな? 日本で世界の為に戦っていたあたしらが、死んだら別の世界の為にまた戦う。その上よ、中には世界を救った後に救ったはずの人間に殺されそうになった魔法少女までいるってんだからよぉ」
「え……?」
私が彼女の言葉にショックを受けていると、それでも気にせず彼女は続けた。
「まー当たり前っちゃーそうだよなぁ? あたしらみたいなのはさー、この世界の連中からしたら利用価値はあるけど危険なバケモノなわけよ? そりゃあ世界が救われたと思ったら、危険な奴は消しとかないとなぁ……なあ?」
「そ、そんな……」
それは……そんな……。
「ホントにそんな酷いことが……?」
「あったとも、聖王国の奴らなんかが詳しいだろうなぁ。何しろあいつ等は――」
「そうちゃん……喋り過ぎ」
「ん? おう、拘束解けたかよ」
「ん……時間稼ぎ……ないす」
「そんなつもりもねぇけどさ?」
どうやら私達が話している間に紫の子は自力で拘束を解除してしまったようだ。
とは言え……戦意は無さそうだ。
こっちも身体能力強化は切れてるし、掛け直すにしても、紫の子に止められたら厄介だ。
「なぁ、詳しいことは後で話すからさー。こっち来いよ? お前だって利用されるだけされて捨てられる……殺されるのは嫌だろ?」
「それは……そうだね」
確かに、利用されるのは嫌だね。
転生前から日本でも私の力を利用しようと近寄って来る人達は少なからず居たし、こっちでもちょくちょく上手く使われている気はしてる。
でも、それでも……。
「でもね、私は、それでも魔法少女だから、愛と正義、希望の象徴として生きるって決めてるから……だから、貴女達とは行けないかな」
「……いつか必ず絶望するぞ? 裏切られんだぞ?」
「そうだね、その結果、死ぬこともあるんだと思う」
実際私は過去にノモルワの、彼の言葉を……改心したと言う話を信じてトドメを刺さず、彼に不意打ちされ、攻撃の当たる一瞬前……死ぬ間際に反撃して、結果としてノモルワと相打つ形になった。
彼を信じなければ、助けなければ、死ぬことは無かった。
でも……後悔しているかと言われたら……不思議としてない。まあ、もしこれでノモルワじゃなくて助けたはずの人達に殺されたとかだったら……変わったのかもしれないけど……どうかな……。
「でも、うん。やっぱり私は自分の信じる正義で、信じるモノを守りたいかな」
「……そーかよ。ハッ。魔法少女ぶってんじゃねぇぞ」
「魔法少女だよ?」
私がそういうと、緑の子は嫌そうな顔をした。
「……チッ。おい、コマ、退くぞ」
「……いいの?」
「バッカ、こんなバケモノ相手にできっかよ。また時間停止されたらどーすんだよ」
「……逃げる」
「なら今逃げんだよ。じゃあな……魔法少女――転移」
彼女が「転移」と口にすると、傍にいた紫の子共々、何処かへ姿を消してしまった。
「……はぁ」
正直、逃がさないようにしようと思えば多分、緑の子を止めればできたと思う。
紫の子の魔法が厄介だけど……うん、何とかなっただろうなぁ……。
でも、彼女たちの話が本当なら……今はまだ、戦うべきではない気がする。
それに先にしておかないといけないこともあるしね……。
「ライデンさん……今、戻しますね」
彼女たちが消えた後、私は地面に討ち捨てられたライデンさんの上下の体を一カ所に集めた。
「……ふぅ……『再利用』」
私は魔法を使い……ライデンさんを蘇生した……。
私の魔法には射程限界がある。再利用の効果は私を中心に五メートル範囲内でしか機能しない。だから蘇生に使うなら遺体の五メートル内に行く必要がある。
流石に死んだ人を片っ端から生き返らせたりはしないし、できないけど……かといって目の前で死んだ人を助けないのは違う気がするのでライデンさんは生き返らせようと思った。
「……ん……ここは……?」
「まだ戦場ですよ、さっさと帰りましょう」
「ん? お、おぉ。そうだ、敵の魔法少女は?!」
「逃げましたよ。空間移動ができる子が居ましたから」
「ぐぅっ……そ、そうか……」
ライデンさん、凄く悔しそうだな……。でも、悔しいからって戦いを挑んだりはしないで欲しいな……。
多分あのレベルの相手には勝てないと思うし……というか……。
彼女達は多分、魔王軍側の手札の一枚でしかないと思う。特に彼女の、緑の子の言葉……。
「魔法少女は百年に一度現れている……」
もしその言葉が本当で、彼女が五百年前の魔法少女なら。私が来るまでの間に最低でも五人は居たはず。その内の何人が魔王側に付いて、不老不死で生きているかはわからないけれど……。それでもわかるのは新しい魔法少女……私が来ることは知っていたはずだと言う事だ。
そしてそれが分かっているなら、敵になるであろう私に、最初から切り札である魔法少女を見せるとは思えない。
もちろん、私がここにいると思わなくて、出してしまった可能性は無くはないけど、それでも相手もこちらを警戒していれば、最初から最大戦力は出していない可能性がある。
つまり……予測でしかないけど、彼女たちはあちらの魔法少女の中では戦闘力が高い部類では無い……と思う……。
「はぁ……」
「なに小娘、落ち込むことはない。このワシですら逃がしてしまったのだからな」
「え? あぁ……はい」
ライデンさんの場合、逃がしてしまったっていうか……死んでたけど……。
まあ……いいか……。
とりあえず私はライデンさんに適当に返事をしつつ、さっさと前線から引き上げることにした。
帝国で何処まで調べられるか分からないけど……魔法少女の事……特に聖王国絡みの何かを調べたい。
もしかしたら……彼女達にも闘う理由があるのかもしれないから……。分かり合えるとは限らないけど、それでも、その努力はしたいと思うから。
「一足お先に帰りますね……」
私はそれだけ言うと、全速力で飛行して帝都に帰るのでした……。
ご読了ありがとうございました!




