表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/59

Re11 魔法少女と罪

 鱗の取引から1週間後。私は牢屋にいました。

 帝都の何処かもよくわからない建物の地下、薄暗くて肌寒い岩壁の牢に鉄格子が並ぶ中。私は一番奥の牢屋に入れられています。

 牢屋に入って今日で多分3日くらい。ベッドも椅子も、座布団も無いから座ったらお尻が痛いし、横になると体中痛い。そんな牢屋で3日。何も悪いことはしてないはずなのに捕まったと言う理不尽感もあって、そろそろストレスも限界です。

「もう魔術使って逃げようかな……」

 私のなんとなく自棄気味に呟いた言葉に、見張りの人の体がビクッと跳ねた。

「貴様! 抵抗する気か!!」

「だって、もうお尻痛いし……」

「そんな理由で……脱獄なんてしてただで済むと思っているのか!!」

「……はぁ」

 そんなこと言われてもなぁ……。

 帝都に来てから秒でお縄になった私だけど、誰もまともに話を聞いてくれないし、釈明の余地すらなかった。そもそも何の罪で捕まったのかすらわからない、少なくとも私自身は無実だと思っている。何せ私のしたことと言えば帝都に来た。くらいだ。帝都について、門で紹介状と身分証にギルドカードを見せて入国――しようとしたら捕まった。

 もう意味が分からない。だからそろそろ何かしらかの進展が欲しい。でなかったら本当に魔術でこの建物ごと吹き飛ばして帰りたい……帰る場所無いけど。

「私はいつまでここでこうしてればいいんですか?」

「…………」

「魔術使おうっかな」

「ぬぅ……本日、ライデン様がここにお見えになるそうだ。お前に会いにな」

「誰ですかその人は? 深紅の稲妻ですか?」

「? なんだそれは?」

 どうやらジョニー・ラ〇デンでは無いらしい。じゃあ彼だろうか。

「よく知っている人ですか?」

「知っている? 近隣諸国はもちろん、帝都の人間で知らない者はいないだろうな」

「あぁ……そういう」

 どうやら何でも知ってる実況解説の雷電でも無かったようだ。

「その方はどういった方なんでしょうか?」

「お前、ライデン様を知らないのか? ライデン様はこのザンドル魔法帝国の宮廷魔術師にして、大昔から伝わる伝説、邪神を倒した大英雄の一人であらせられる」

「へ、へぇ」

 なんか凄そうな話だけど、そんな人がなんでわざわざ会いに来るんだろう。私がその人の前に連行されるとかならまだしも……。

 まあそれは来たらわかるよね、多分。とりあえずそれまでは待ってみようかな。もしかしたら無実が証明できて出られるかもしれないし。最悪処刑とかされそうになったら逃げよう。うん。

 そう思っていると、暗い廊下の奥からガシャンガシャンと、ここに来て三度目くらいに聞く音が聞こえた。

 これはきっと看守長の足音だ。ここの見張りの兵士たちは皮鎧が基本みたいだけど、看守長だけは全身鎧を着ているので近づくと音でわかる。

「おい囚人、宮廷魔術師長、ギド・ライデン様をお連れした。粗相のないようにしろ」

「え、あ、はい」

 なるほど。わざわざこの人が来たのは偉い人を連れて来たからか……。

「おぬしが件の魔法少女か。確か名前は……メグルといったか」

「はい、三角廻です」

「ふむ」

 私の名前を聞き、ジロジロと値踏みをするような視線を向けて来るおじいさんを見る。

 しわくちゃの顔に長い白髭とこれまた長い白髪。アニメとかに出そうな仙人みたいだ。

 年齢は……さっきの話だと大昔の英雄って話だったけど、大昔っていつだろう。外見年齢的には80代くらいに見えるけど。

 というかそれ以前に、なんで私が魔法少女だって思ったんだろう。変身もしてないのに…………あっ……。

 そう言えばギルドカードに『職業:魔法少女』って……あー…………。

「それで、貴様は何のためにこの帝都にやって来た。しかもわざわざ正門から来たと言うではないか」

「……え?」

 何のためにって……あれ? 紹介状ってそういうの書いてない物なの?

「えっと、ラグランジュでギルドマスターさんに帝都の学者さんへの紹介状を頂きまして、それでこの帝都に来たんですけど……」

「嘘を吐くな、お前は魔法少女なのだろう。ならば魔王軍の手先であるはずではないか。そんなものにギルドの長が紹介状など書く物か」

「じゃあ本人に確認を取ってもらえませんか?」

「なるほど、人質を取って脅しているから聞かれても問題ないという訳か?」

「えぇ……」

 そこまで疑われたらどうやって無実を証明したらいいのだろうか。

「ともかく、誰も貴様の無実など信じることはない。素直に、正直に。この帝都に入ろうとした目的を吐け!」

「えぇー……ただ魔法少女について調べに来ただけですけど……」

「魔法少女について? 貴様がそうなのだろうが」

「いえ、だから、この世界での魔法少女に対する認識とか、そういうのを調べたかったんです」

「なるほど、つまり魔王軍幹部である魔法少女の情報を帝国がどの程度握っているか調査に来たという訳だな」

「どうしてそうなってしまうんですか……」

 これ駄目だ。先に私が魔王側の人間っていう認識があるせいで何言っても悪い方にしか行かない気がしてきた。

「そもそも魔王軍の者じゃないですよ……っていうか魔王軍に魔法少女が居るんですか?」

「白々しいぞ小娘!! 貴様がそうなのであろうが!!」

「えぇ……」

 なんか怒鳴られてしまったけれど、そうか……魔王軍に魔法少女が居るんだ。

 それが自称なのか、本物なのかはわからないけど……だとしたらあの王都で出会った悪魔が魔法少女の事を知っていたのもおかしくないかもしれない。

 身内に本当の魔法少女、あるいは魔法少女の情報を持っていてそれを真似している自称魔法少女が居るなら……。

 でも魔法少女を騙る意味って何だろう……こういう風に魔法少女を人の敵と思わせること? それとも伝説の存在の名前を騙って敵の戦意を挫く狙い……?

「しかしだ、小娘よ、もしどうしても無実を証明したいと言うのであれば、このギド、考えがあるぞ」

「え、なんですか?」

 なんか急に掌返して来てそれが凄く不自然なんだけど、なんならちょっと怖いんだけど。でも無実を証明しないと本当にここに穴を開けて出て行かなきゃ行けなくなるし……そうなるとうっかり知らない人を知らないうちに傷つけたり……うっかり殺してしまいかねない。それは避けたい。となると従うしかないわけで……。

「ワシと戦え。剣士が己の剣で語るように、我々もまた魔術で語り合おうぞ」

「……あ、はい」

 魔術師ってもっと頭が固いと言うか、ガリ勉と言うか、言っちゃ悪いけど魔術なんて怪しい力使ってるくせに学者気取りのアレな頭の人達なんだと思ってたけど……思ったよりも精神論というか、体育会系な考え方で驚いた。その所為でついヤバい人を相手にする時の返事が出てしまったけど、まあいいよね。

「では行こうか、陛下もお待ちだ」

「え……」

 それは一体どういうことだろうか。陛下っていうと、多分あれだよね。帝国の王様だよね? そんな人が待っているって言うことは……。

「(これは……完全に嵌められたんじゃないかな……)」

 多分元からこういう話に持っていくつもりだったんだろうな……私の話を聞く気無かったみたいだし。

 そうは思いつつも、私は牢から出されて、ライデンさん達の後を付いていく。

 どうやら私に関しては魔法少女だってわかっているのに、あまり警戒はしていないみたいだ。

 その証拠に戦う場所に向かうまでの馬車にも全然護衛とかが付いてなかった。正直あんまり人がいると下手に魔術を使えないけど、これなら人に当たらないように魔術を使って逃げることも全然出来てしまうんだけど……良いんだろうか。

 そう私が思っていると、私が脱走を考えているのを悟ったのか、前に座っていたライデンさんが鼻で笑った。

「ふん! 逃げようとしても無駄だぞ。その手錠は特別製でな、掛かっている間はまともに魔術を使うことは難しいだろう。あの部屋にあった封印の術式に比べれば弱いとは言え……どうだ? 使えまい?」

 そう言ってニタニタと嗤うライデンさんの顔が……申し訳ないけどウザい。

「……うーんと。えいっ――」

 そして、ライデンさんの顔が使える物なら使ってみろと言うか、試してみて駄目でしたってなってるのを見たそうな顔だったから試しに魔光球を出そうとして見たんだけど……。

「――使えますけど……?」

「なんっ! なんじゃと?! き、ききききっ貴様!! 脱走する気か!!」

「えぇ?!」

 使える物なら使ってみろ感出てたからやっただけなのに?!

「しないですよ! ほら! 消しましたから!!」

「今の魔術を何処にやった?! 遠隔操作で攻撃する気か!!」

「違いますって!! ただ止めただけです!! っていうかその気なら最初からやってますよ!!」

「逃げ出す宣言をするとはいい度胸じゃな!!」

「どうしてそうなるの?!!」

 どうしよう、凄く面倒くさい。

「兎に角、私、今は逃げる気無いですから! 正々堂々戦うんですよね?!」

「今はじゃと?! この後正々堂々逃げる気か!」

「どうしよう話が通じない!!」

 あぁ……もう早く着かないかな……。

 そう思った矢先、馬車が減速するのを感じた。止まるのかな?

「ライデン様、到着いたしました」

「ぬう?! ……仕方あるまい、おい貴様、付いてまいれ」

「…………はい」

 もうなんか、戦う前からドッと疲れたよ……。とりあえず外の空気でも吸って落ち着こう……。

 そう思い、馬車を降りると……そこは……え、なにこれ。

「ここが我が魔導帝国の有する闘技場、コロッサスじゃ」

「……あー……」

 何というか、なるほど、これは……。もしかしなくても……公開処刑のつもりなのかな……?

 建物の見た目が思いっきりコロッセオ。これって罪人を見世物にして処刑するってことなんじゃないかと思う訳で。あー……帰りたい……。

「もう既に観客と陛下も待っている。わかるか? 対戦者であるワシが貴様を迎えに行ったのは……ワシ自らが護衛しなければ危険な強者だと判断したからよ」

 なんか急にそれっぽいこと言い出したけれど……うーん。なにこれ、どういうモチベーションで挑めばいいのだろうか……。

 まあ、一応無罪を証明するって言うのはモチベーションにならなくもないけど……これって勝ったらそれはそれで罪に問われそうで嫌だなぁ……。

 とりあえず、歩きながらでも先に何個か確認しておこうかな……。

「あの、2つ質問してもいいですか?」

「ん、なんじゃ?」

「まず、魔法は使っていいんでしょうか」

「他の国の闘技場は知らんが、ここでは魔術も使用可じゃ。その力、存分に示せ」

「え……うーん」

 それだと「魔法」を使っていいかの答えになってないのでは……。この人も魔法と魔術の区別が無い人なんだろうか。

「最後に、勝ったら無罪なんですか?」

「ふん、ワシに勝てる気か? そうじゃな、勝たずとも戦えばおのずと真実は分るが……もし勝てたのならそれを持って無罪放免としてもよい」

「おぉ……」

 なんでこのおじいちゃんそんなに自身満々なんだろう……大英雄って言われてるくらいだから相当強いのだろうか? 見た感じ魔力量的には確かに私よりは全然多いけど……。

「さて、それでは、ココが貴様の待機室じゃ。1時間後を楽しみにしておるぞ」

「あ……はい」

 なるほど。1時間後に戦うのかぁ……。

 そんなに時間を掛けて、他に何かあるんだろうか……?

 まあとりあえず、適当に勝って無実を証明しないとね…………!


ご読了ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ