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資料整理

「よいっしょ……と」


書類の入った木箱を持ち上げて台車に乗せて押していく。


不必要な書類は記録用の魔術具に保存した後燃やす取り決めらしい。棚や箱に分別していたのはこのためだ。


まあ、新人ということで地味で大変な作業ばかりだし、あの二人は姫様の見張りをしているしで結局私がやることなってしまう。


まあ、単純作業している方が気が楽だけれど。監視の目が届かないし。


フロアの一番奥にある部屋に到着するとドアを開けて台車と共に部屋に入る。部屋は薄暗く幾つもの藍色の結晶な入った箱が置かれ、部屋の奥に木の椅子と机が置かれている。


うわっ、魔力がかなり淀んでいる。換気くらいしろよ、全く……。まあ、買いだめられた魔術具があるから良しとしよう。


資料が詰め込まれた木箱を持ち上げて奥の机に置いて木箱の中の結晶を取り出す。


これは魔術具『メモリースターズ』か。材料はこの街近辺にあるダンジョン『星おちる岩屋』内部に現れる結晶のモンスターの身体。それと幾つものモンスターを血、ブレンドした同ダンジョンに自生する植物。これら三つを一定の量と数で鍋に入れて混ぜ合わせ、『刻印魔術』の一つ『インデックス』を刻んで作成される。


『刻印魔術』専門の魔術師の数はそこまで多くないのに、よくここまで所有できるな。何人か抱き込んでいるのだろうか。


木箱に蓋をして『メモリースターズ』を蓋の上に置く。魔術具は藍色から血のような赤色に変色する。


木箱に入っている情報は約一年分。それだけの量の情報量を一時間程度で精査し記録できるのは非常に優秀だ。だが、使ってみて分かったが、この魔術具には欠点があるな。


さて、一時間暇だし……とりあえず。


手に水を纏い木箱の隙間に向けて小型の玉を放つ。


「がっ!?」


影から呻き声と共に男が現れて倒れ込む。


殺す程度の出力では放っていないが、宮殿の外縁部にくださ自生していた植物から作った毒薬を水の中に混ぜてある。動けない筈だ。


私は男に近づくと両腕を氷で地面にくっつける。


おおよそ、他国の密偵か。魔力の気配は感じなかったし、連合の東側にある武術か。特定のモンスターを食すことで常人ではありえない動きができるというが、ほんの数ミリの隙間に入る事が出来るのか。


……まあ、その絡繰は理解できるけどね。


「何者だ?」

「はっ……言うと思ったか?」

「知ってるよ」


私からしたら、どうでも良いけどね。


目的は役人を捕まえて尋問して内部気密を入手することだろう。まあ、他国の密偵ならそれくらいはできるか。


さて、ここで殺しても良いが死体の処分が大変だからな、どうするべきか。


……まあ、どうでもいいか。


氷の剣を手早く作り出して男の首を切り飛ばす。切断面は凍りついて出血せず、何が起こったのか理解できない表情で男は絶命した。


さて、と。これで後は……。


「見事な手際ですわ」


そういってドアから入ってくるソプラを私は睨みつける。


ソプラは当たり前のように男の死体を蹴り飛ばし、頭を踏み潰すと私に向けて笑顔を浮かべる。


「この豚は宮殿内に忍び込んだ不届き者。姫様の命を狙った曲者。私が子飼いにしていたのだけど、処分ありがとうございますわ」

「子飼い、ですか。そうなりますと、何人か今も捕らえているのですか?」

「ええ。人間をペットのようにするのは楽しいわよ?特に、プライドが高い人のプライドを踏みにじるのは快感すら覚えるわ」

「メイドは副業で、本業は拷問官ですか」

「お兄様やお姫様には秘密にしているのだけどね」


拷問官……見た感じ、私と同じ他者に危害を加えることに快感を覚えるタイプか。拷問官はかなり人を選ぶ職業だと聞いたことがあるが、適性があるとこんな感じになるのか。


「それで、これは何の真似ですか?」

「うーん……まあ、趣味ですわね。私のペットに無能はいりませんもの」


顎に人差し指を当てながら話す少女に僅かに嫌悪感を覚える。


ヌルい。あまりにもヌル過ぎる。やるのならもっとやり方があるだろうに。やり方があまりにも甘すぎる。


「それで、私に何か用ですか?」

「ええ。貴女、拷問官にならない?」


ソプラは可憐な容姿に似合う笑みと共に手を差し伸べてくる。


「貴女、普通の世界では生きにくい人種なのでしょ?だから、そんな仮面をつけている。なら、幾らでも侵入してくる密偵や捕まえた盗賊たちを拷問すれば良いのよ。とっても楽しいわよ」

「……生憎と、今の私に貴女の手は取れません」


何せ、興味がないから。誰かに言われて拷問するなんて、ナンセンスも良いところだ。一般人だろうと犯罪者だろうと、私にとっては対象なのだから。


「そうですか。なら、先程の話は忘れて貰っても良いですわ」


そういってソプラは部屋を出ていく。


ルビアのヤツの味方はどうにも一癖ありそうな連中ばかりだな。だが、どうにでもなる。


あの手の人間は明確な欠点が存在するのだから。そこを突いてあげれば簡単に冷静さを失う。


「……それで、何時までそんな身体になっているんだ?」

「おや、バレていましたか」


男の死体が液体状に変わり美しいエルフの美丈夫の姿に変貌する。男は立ち上がり、私に近づいてくる。


「液体化、ね。取り込んだモンスターはスライムのようなものか」

「ええ。これは非常に使い勝手が良いんですよ。何せ、死体に変身すれば相手はまず警戒しないので。まあ、貴方は始めから気づいていたのでしょうけど」

「ああ」


だから物理的な攻撃ではなく水による弾丸、拘束の際には氷を使い、首を切り落とす際には氷の剣を使ったのだから。


流体と流転を司る【水属性魔術師】の前だ液体化はあまりにも傲慢だと思うのだが。


「でも、氷の攻撃は流石に冷や汗でしたよ。私が頭と首のリンクを切っていなければ死んでいましたよ」

「ふん、お前なら死なないと分かっていたからやったんだ。……で、私に何か用か?」

「まあ、それは後ほど」


そういって男は液体に戻り部屋の隙間から何処かに行ってしまう。


やれやれ……まあ、良いだろう。あいつが動いているということはこの宮殿には何か大きな秘密が隠されているのだろう。



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