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呪詛採集

つまらねー。


翌日、朝から探検者組合の掲示板とにらめっこしながら内心そう思ってしまう。


私の今の階級は『下位』、ダンジョンの上層くらいの依頼しかない。そして、上層でエンカウントする魔物だいたい弱い。ロウが異常なだけだ。


他の探検者と一緒に行くことも考えたがそれだと私の実力を抑えないといけなくなる。それは非常に不愉快だ。


またロウと戦っても良いけど……おっ?これは……。


「『時雨草』の採集ねぇ……」


時雨草は上層の一部で生える稀少な草だ。特徴は藍色の花弁でダンジョンの水辺の奥深くに生えている。使用用途は観賞用もあるが、あまり知られていないがとある病気の特効薬になる。


報酬は銅貨十枚とかなり安い。だから見向きもされてない。誰だって、命は惜しい。


けど、これなら暇潰しにはなるか。


私は掲示板から依頼状を取って受付に渡す。


受付嬢は『カード』を依頼状を受け取って少し目を丸くするがすぐに依頼を受諾した。


利益と苦労が見合わない依頼だから驚いたのかな。どうだって良いけど。


ダンジョンに入り何時も通りに道を歩んでいく。


出会ったモンスターたちは水の魔術で気づくと同時に殺している。


あの愚物どもと一緒にいたときは使ってなかったけど、私の水は索敵能力も高い。


「さて、ここら辺でいいか」


上層の片隅にある泉に着くと服も下着も脱いで『カード』に入れてから水着を取り出す。


水辺での依頼の際に買っておいた代物で、所謂ビキニと呼ばれるものらしい。水色で気に入っている。


水着に着替えると『カード』に装備を入れて水着に挟み、水の中に入る。


水辺の奥深くに生えるこの稀少な草は最低でも水の魔術が使え、術式のリアルタイム操作が出来なければ入手できない。


私は勢いよく泳ぎながら呼吸する。


水の中でも呼吸ができるように術式を改良してある。ちょっとした小手先の技だけど、使えると使えないでは大違いだ。


「シャアッ!」


邪魔。


奥から現れた水蛇を水圧を操作して押し潰す。


ここは水の中。それに魔力で満ちている。この状況は私にとっては非常に大きなアドバンテージになる。


その後も様々な魔物が襲ってきたが、全て押し潰して殺した。時雨草?さっさと回収したよ。


「ふぅ……」


水中から出すと力を抜いて水面に浮かぶ。


本来ならシルフィも連れてきても良かったけど……まあ、色々と魔術の暗黒面を知っておいた方が効率良いんだよね。


私はそういった暗黒面を嬉々として学んでいった。しかし、まだシルフィは青い。まだあの程度を悪趣味だと言って忌避している時点で青い。


私もシルフィもどちらも狂人、醜悪で邪悪な手法は好まずとも網羅していておいた方が効率が良い。


水から出て水分を渇かすと『カード』から衣服を取り出して着用する。


これで依頼は完遂できたけど……隙を見せたところで意味がないんだよね。


地面を蹴り水辺の入り口で様子を窺っていた存在を掴みあげる。


「うぐっ!?」


掴みあげたのは人間のガキだ。見た目からして十代前半くらいか。ガキにしては鍛えられた身体をしているが、その程度だ。


「それで、私に何か用か」


「み、水を汲みに来ただけです」


「そうか」


私はガキから手を離すとガキはさっさと水を汲んでどこかに行ってしまう。


殺してしまっても良かったけど……まあ、どうだって良い話だ。


私は水中で襲ってきた水蛇を湖から引き揚げると革を剥いで臓物を抜き取り、『カード』に仕舞う。


残りは水の中に入れる。水に入れると漏れでた血で汚れていく。


『カード』から黒いナイフを取り出すと泉の中に放り込む。


泉は次第に赤から黒に変色していき黒い雪のようなものが舞い始める。泉がナイフに仕込まれた呪いに汚染されているのだ。


汚染した泉に認識阻害の結界を張ると泉の水を瓶で汲みあげる。


ちょっと薄いけどまあ呪いとしては及第点かな。


「さて、それじゃあ退散しますか」


そういって私は泉を後にする。


さて、これで準備は整った。後は仕上げの道具を設置するだけだな。


内部の魔力の汚染、高レベルの探検者の死、そして設置する道具。これで厄災は引き起こされる。


あの忌々しい連中にとって、最も恐れるべきものを見せてやるよ。

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