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儀式

「むぐっ!?」


少女の口を布で塞ぎ首筋に毒針を差し込む。


同時に少女は意識を失い、力が抜けていく。


私は少女を担ぎ上げると天下の往来から脇道に入る。


脇道には既に多くの少女たちが寝かされマスクを着けたシルフィが少女たちを全裸にして身体を縄で縛り付けていた。


「……これで規定の人数ですか?」

「そうだ」


シルフィはジト目で私を見てくるが気にしない。

私たちは少女たちを抱えて近くの建物の中に入る。


建物に床の一部を開き階段を降りると甘ったるい匂いが漂ってくる。


地下室には中年くらいの男たちが鎖で拘束されていた。既に全身の筋肉が漲り血管が浮き出て完全に理性を無くした興奮状態だ。


「……悪趣味ですね」

「まあ、魔術の儀式なんて悪趣味なものばかりだ」


特に古い魔術であればあるほどその儀式はおぞましいものになる。魔術とは血に濡れた技術なのだから。


私とシルフィは連れてきた少女たちを床に置く。


私は壁に手をつけ魔力を流すと術式が現れる。


よし、どこも欠損していないな。これで儀式は成立させれる。


「それじゃあ、鎖を取り外して」

「分かりました」


シルフィが男たちに縛っていた鎖を取り外していく。


「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」


男たちはすぐに立ち上がると一斉に拘束された少女たちに襲いかかる。

私たちはそれを見届けると地下室から出て扉を閉じ鍵をかける。

扉の上にテーブルを置き、その上に『カード』から取り出した水晶玉を置く。


「これで儀式【邪悪収集】が完成した」


この儀式は儀式場内で発生した欲望を収集する魔術的な儀式の一種だ。

儀式の完遂まで寝る事や意識を失う事すらできず、死ぬことすらなく、永遠に交わり続ける事となる。

本来は捕虜や奴隷といった人間を使うのだけど……そうそう手に入らないからこういった方法が一番やりやすい。


「でも、流石に少女を使うのは……」

「何を言ってる。この儀式では少女を使う必要がある」


儀式の都合上どんな女性でも構わないが若い少女たちを使った方が欲望の増幅がさせやすく、収集しやすい。


「で、儀式的な魔術を手伝ってみた感想は?」

「……悪趣味極まりない」

「まあ、そうだよね。でも、他の儀式的な魔術だって結構悪趣味だよ?」


生物の血を使うものや人の死を前提とするものまで様々だからね。

特に、魔術的な適性が『魔導書』ならばこういった儀式的な魔術は必須になってくる。


「『魔導書』は生物の血をインクに溶かして書物に術式を書くことで特殊な魔術具を作成する魔術。全ての工程が儀式的な魔術であると考えた方がいい」

「はい……」


シルフィは複雑そうな顔で収集装置である水晶玉の管理を始める。無論、後学のためだ。水晶玉を使う魔術的な儀式は多いからな。

『結界魔術』や『魔導書』はかなり儀式的な魔術寄りの魔術だから覚えておいて損はないしな。


私は建物の二階に上がる。建物の二階には若い女性と幼女が拘束され鎖で猿轡されている。


中々良い家が見つからなかったから適当な家に押し入らせてもらった。両親はどちらも探検者だから居なくなってもそこまで問題視されないし、兵士もいないから探す人もいないから丁度良い。


その際に抵抗した女性の夫は『刻印魔術』で人格を変えて地下室送りに。他二人はどうしようか迷っている。


うーん……あ、良いこと考えた。

私は女性の髪を掴むとそのまま引きずって奥の部屋に放り込む。『刻印魔術』で体の自由を奪ってあるから抵抗する事はない。


とりあえず、女性の方から始めるとするか。


「お願いだ……娘だけは、娘だけは助けてくれ……!」


女性の猿轡を外すと頭を床につけた懇願してくる。


私は女性の顔を上げると微笑みかける。


「助けてあげるよ。命だけは、ね」


私は女性の腹に手を当てると同時に魔力を流し術式を刻み込む。


術式は女性の全身に刻まれていき、それと同時に女性は意識を失う。


「【パラジット・記憶改竄】」


私は鎖を解くと同時に女性が意識を取り戻し部屋を出ていく。


さて、これであの女性はこの後どうなるかは私が知ることはない。まあ、もう二度と自分の子供の前に姿を現す事はないだろう。


何せ、もう子供の記憶や夫の記憶、今までの記憶のほぼ全てが私にとって都合の良いものに変わった。『改造魔術』が使えれば新しい人間に作り替えれるけど……まあ、できないものはしょうがない。


部屋を出て少女を連れて部屋に戻る。


少女の拘束を外すと少女の瞼に指を置き【刻印】する。


眼は最も脳に近い。それを通じれば脳に直接刻み込む事ができる。そこから神経を伝い内部に【刻印】することも可能だ。

この少女には最も苦しい方法を与えよう。あの母親に出会えないよう、徹底的に。


「これで良し……と」


全身の血管、神経、臓器、骨格、魔力に刻み込むと少女を部屋に置いていく。


全ての人生が破綻していくような感覚を味わいながら死ぬこともできない。そういった呪いに等しい魔術。本当に使い勝手が良くて助かる。


私が階段から降りていき建物の扉を開ける。


「私は七日ほど地上に戻ってこないから管理は頼んだよ」

「分かりました」


私は建物の扉を閉じて大通りに出ていく。


数多の供物、数多の悲劇をもって、罪深き地獄を産み落とす。その前段階。


希望の一つも見いだせない惨劇をこの街に落とすために邪魔者は全て排除しなければならな。

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