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閑話 少年の誓い

「酷い……」


僕は屋敷の中を見て呆然とその言葉を呟く。


屋敷の中は様々な場所でメイドたちの死体が転がっていた。恐怖に歪む顔や苦しそうな顔……死んだ直後の顔がそこにあった。


領主の一人娘であるエミリアさんの凶行で昨晩領主の館にいた人たちが全員殺されてしまったのだ。


「くそっ!!」


僕は壁に拳を叩く。


拳から広がる痛みと共に掌から血が溢れる。


何で……何で、こんなことになってしまったんだ!もし、僕たちが昨日ここにいれば、彼女の凶行を止めれたかもしれないのに……!


……でも変だ。エミリアさんは騎士に憧れていた人だ、そんな人が人を殺すことを楽しむ人なのか?


「あの、リューズさん」

「何でしょうか、リュウさん」


館の浄化をやり終えたリューズさんに話しかける。


多分、僕たちの中で魔術そのものに対して一番見識があるのはリューズさんだ。なら、知っているかもしれない。


「魔術の中に……人格を歪める魔術はありますか?」


僕の問いにリューズさんは目を見開く。


エミリアさんは騎士に憧れたいた人だ。そんな人が騎士らしくない行為をする筈がない。


なら、他にも何かがある可能性が高い。


「あります。禁忌の中の禁忌ですのであまり話せませんが、実在します」

「やっぱり……!もし、それをエミリアさんに施されていたら……あり得ますか?」

「あり得ますが……証明できません」

「証明……できない?」


魔術が使われているのが分かるのに、証明ができない?


「本人の意思を表に出させたのか、人格を歪めたのか……周りや本人には分からないのです。唯一術を解除でき、仕掛けた事が分かるのは術者本人だけ……」

「何だよそれ……!」


人の心や人格を弄くっておいて、それを部外者は何も手出しできない魔術があるのかよ……!


「魔術の中にはそういった禁忌の術は多いです。そして、その多くが今現在外に流出している可能性が高いです」

「どういうことですか?」


自分でも驚くほどの怒りが籠った声で問いかける。


リューズさんは杖を手が白くなるほど強く握り締めながら答える。


「一年前、大聖堂のシスターや司祭たちが毒殺された事件があります。その事件の調査に同行したのですが……禁書庫の本や危険な魔術具、薬品が全て、失くなってました」

「なっ……!?」


リューズさんの答えに僕は絶句する。


それじゃあ、今回使われた禁忌の魔術もその毒殺犯が行った可能性がある。


いや、そもそもその犯人はその本や魔術具のためだけに多くの人を殺したのか……!?


「……悪辣かつ残虐な事ができる思考にここにいるメイドを皆殺しにできるだけの実力、更には禁忌の魔術を扱えるほどの魔術の技量……確実に相手は私たちの想像を絶する化物です」

「……ああ」


多くの人を殺し、嘲笑うように姿を掻き消し厄災だけを残す謎の犯罪者。……明確な僕の敵だ。


「リュウ!大変だ!」


俺が決意を固めていたところにジェシカがやってくる。


ジェシカは僕たちの中で最年長だ。僕たちの中でも一番冷静だ。そんなジェシカがここまで慌てるなんて……。


「どうしたのか、ジェシカ」

「やられた……!エミリアさんが閉じ込められた探検者用の牢獄が襲撃された……!」

「なっ!?」


まさか……!


「エミリアさんの姿がいなかった……!敵はエミリアさんをまだ利用するつもりだ、くそっ!!」


憤慨しているジェシカが壁を殴り付ける。


その隣で僕は愕然とする。


家族を、領民を自分の手で殺して壊れてしまったエミリアさんのこれ以上何を辱しめるつもりなんだ……!


許さない。絶対に僕が許さない!何があっても捕まえてやる……!


これ以上、犠牲者を出さないためにも、僕が必ず!

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