2015年2月23日 朝
外は暗かった
5:53
息が白く見えるこの時期は
まだ日は昇っていない
また今日も生きなきゃいけないんだ
どこで他の人と違う道に来てしまったんだろう
みんなと同じところを歩いていれば
何か希望が持てるのだろうか
ボロボロのTシャツとズボンから
制服へと着替える
母は電子レンジで弁当のおかずを温めていた
1階に降りて
顔を洗い、歯を磨き、トイレへ行く
そして食パン1枚を無理やり口に詰め込む
6:03
まだ余裕はある
弁当を持たされ外へでる
今日はあんまり寒くないな…
そういえば天気予報で
昼は20℃近くになると言っていた
ここ数年の天気はおかしいな
自転車に跨がり
左足に力を入れて踏み込む
ただ漕ぐだけでいい
なにも考えなくていい
この時間は人も車も誰も通らない
どんどん加速していく
あっという間に駐輪場に着く
2階へ自転車を押し上げる
いつもの場所に停める
顔をあげると環七の信号が青に変わるところだった
急がなくては
環七沿いの螺旋階段を
そしてそのまま横断歩道を駆け抜ける
停まっていたトラックのライトが
妙に眩しい
思わず目を細める
駅に着き改札を抜ける
ホームへ続く階段を駆け上がる
6:10
電車が来るまでまだ少しある
流石に息があがっている
同じ電車を待っている人たちが
吐き出す息は白いのに
自分から出るそれは白くない
何が違う?
自分は本当に生きてる?
本当は自分はあの日に死んでて
生きているという悪い夢を見させられているだけ?
そう考えているうちに
足は無意識にホームの外側へと向いていた
ゆっくりゆっくり
一歩ずつ一歩ずつ
━━━━━まもなく2番線に
各駅停車代々木上原行きが参ります
危ないですから黄色い線までお下がりください
はっ…
危ない…
切り替えなくては
アナウンスで現実に引き戻される
いけない
いつも通り笑顔を貼り付けて
完璧な自分を演じるのだ