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目を閉じれば  作者: さち
第1章 止まった時間と冷えた心
4/33

2015年2月23日 朝

外は暗かった



5:53


息が白く見えるこの時期は

まだ日は昇っていない




また今日も生きなきゃいけないんだ

どこで他の人と違う道に来てしまったんだろう

みんなと同じところを歩いていれば

何か希望が持てるのだろうか



ボロボロのTシャツとズボンから

制服へと着替える


母は電子レンジで弁当のおかずを温めていた



1階に降りて

顔を洗い、歯を磨き、トイレへ行く

そして食パン1枚を無理やり口に詰め込む



6:03


まだ余裕はある

弁当を持たされ外へでる


今日はあんまり寒くないな…

そういえば天気予報で

昼は20℃近くになると言っていた

ここ数年の天気はおかしいな


自転車に跨がり

左足に力を入れて踏み込む


ただ漕ぐだけでいい

なにも考えなくていい

この時間は人も車も誰も通らない

どんどん加速していく

あっという間に駐輪場に着く

2階へ自転車を押し上げる

いつもの場所に停める


顔をあげると環七の信号が青に変わるところだった

急がなくては

環七沿いの螺旋階段を

そしてそのまま横断歩道を駆け抜ける

停まっていたトラックのライトが

妙に眩しい

思わず目を細める


駅に着き改札を抜ける

ホームへ続く階段を駆け上がる


6:10


電車が来るまでまだ少しある


流石に息があがっている

同じ電車を待っている人たちが

吐き出す息は白いのに

自分から出るそれは白くない

何が違う?

自分は本当に生きてる?

本当は自分はあの日に死んでて

生きているという悪い夢を見させられているだけ?



そう考えているうちに

足は無意識にホームの外側へと向いていた

ゆっくりゆっくり

一歩ずつ一歩ずつ



━━━━━まもなく2番線に

各駅停車代々木上原行きが参ります

危ないですから黄色い線までお下がりください



はっ…

危ない…

切り替えなくては


アナウンスで現実に引き戻される


いけない

いつも通り笑顔を貼り付けて

完璧な自分を演じるのだ

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