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目を閉じれば  作者: さち
第1章 止まった時間と冷えた心
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2015年2月22日 7時

窓から差し込む柔らかい光が

朝が訪れたことを教えてくれる。


あぁ、今日も目が覚めたんだ…

あれほど、明日こそ目が覚めませんように

そう願ったのに…

あとどれほど同じ願いをすれば

その日は訪れるだろう…



普通なら、泣きそうな顔をしながら思うようなことを

彼女は薄ら笑いを浮かべ思っていた


まだ息を吐けば、それが白く染まるような

気温の中、布団から出た彼女の服装は

ボロボロになったTシャツに体操着のズボンだった


彼女は寒がる素振りをみせず、

自分の布団の足元にあるベランダに繋がるドアを開けた

開けると一段と冷たい空気が舞い込んだ

彼女はそこでも震えなかった

それどころか、裸足のままベランダへ出た

そして、両端が腐った木でできた

寄っ掛かればすぐに音を立てて落ちてしまうような

危険な柵に彼女は近寄った

手を掛け前に押すとギシギシと不快な音が鳴る

そこに彼女はエアコンの室外機を踏み台にして腰かけた


柵は一際大きく音を立てた

それでも壊れなかった


それは彼女が痩せているからだった

身長が153cmに対し、体重は38kg程度

白い肌に栗色の髪

しかしその手足には様々な色が浮かんでいた

紫、青、黄色

新しくできたものは色が濃い

しかし薄いものもある

彼女は日常的に暴力を振るわれていた

それだけではなく

左の手首には真っ白なリストバンドがついていた

その下は幾重にも傷がつくられ

リストバンドの裏は赤黒く染まっていた


彼女の目は酷く濁っていた

空っぽな人形のような目

とても16歳の少女がするような目には思えなかった


2階建ての築50年の木造建築

高さはそれほどないが

落ちれば怪我は免れない

前に体重をかけた

しかしその瞬間

ピピピピッと彼女の母親の目覚ましが鳴った


あの人が起きる


彼女はすぐさま柵から降り

部屋へ戻りベランダの鍵をかけた


そして今日も

「おはよう」

先程とは別人のような笑顔を

母親に向けた


しかし、母親の第一声は

「あんた、なにしてたの寒いんだけど」

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