幸せ
真っ暗の中に一人だけ
地面に寝転がっていた
そこは体が凍るほど寒かった
起き上がって自分の体を見ると
左腕にあったはずの傷も
殴られたり物を投げられたりしてできた
痣や傷もなかった
何故か裸足で
真っ白なワンピースを着ていた
右を向くと
ずっと遠くに薄く光が見える
左はどこまでも真っ暗で
怖くて足がすくんだ
右の方が温かく感じて
足がそっちへ進む
「あずさちゃん!」
真っ暗で恐怖を感じた方から
葉山先生の声がした
「葉山先生…?」
「そっちは行っちゃだめだ!」
「え…?」
なんでだろう…
「そっちはだめだ!」
「なんでですか?」
「そっちはまだ行くべき場所じゃない!」
「行くべき場所…?
こっちは何があるんですか?」
「○%$*}&¥!」
何を言ってるのかわからなかった
でも気づくと抱き締められていた
それが妙に安心して目を閉じた
目を開けると
朝だった…
なんだ夢か…
変な夢だな、滅多に夢なんか見ないのに…
もちろん、左腕には傷があったし
痣もあった
それは12月に入ってすぐの頃だった
その時見た夢では何を言ってるかわからなかった部分
それは凍りついた自分の心を完全に溶かしてくれるものだった
その日の夜、
何が気に障ったかわからなかったが
暴言を吐かれながら背中を殴られていた
はぁ…
殴るのはいいけど、
この時間何にもできないことが退屈だった
お母さんは満足したのか殴るのをやめて
どこかへ行った
痛い…
痛くない…
これは夢だ
外に出れば、
幸せそうな親子やカップル
色々な人とすれ違う
自分は何が違うの?
元々立ってるところが違うのか
みんなにとっては当たり前のことが
自分にとっては羨ましかった
暴言を吐かれないことが
殴られないことが
物を投げられないことが
消えたいと考えをもたないことが
彼氏はほしいけど
こんな自分を受け入れてくれる人なんているのだろうか
それ以前の問題か
まず、その人を信じることができるのだろうか
その人に拒絶されることが怖い
自分が置かれてるこの環境を知ってしまったことで離れていかれないか
ただ怖い
こんな自分が誰かを好きになれる?
好きになってくれる人なんかいる?
ずっと一人で生きていかなきゃいけない?
幸せになれる…?
幸せになりたい
ただ、好きな人の隣にいたい
それだけで幸せなんだ
誰かを好きになりたい
誰かに好きになってもらいたい
必要としてほしい
それだけで自分がここにいることを
許される気がして
ただそれを願うことしかできなかった