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目を閉じれば  作者: さち
第1章 止まった時間と冷えた心
11/33

それは

2007年10月25日のことだった






この日は掃除の時間が免除され

昼休みが45分間になる特別な日だった



この年、学年は1クラスになった

1,2年のときは2クラスだったが

2組に転校生が続出し、

学年が変わる頃には18人になっていた

足立区では41人以上にならなければ

クラスは分けられない決まりだった


つまり、このとき

3年生は39人の1クラスだった




学年があがってから

涼とはほとんど話さなくなっていた

最初はなんでだろう?

そう考えていた当時の自分

でもその理由はあまりにも簡単で

そして経験するには早すぎた



その日の

13時半すぎ



教室にはいじめと主犯とも言える4人と涼がいた

楽しそうに話していた




そこに、

「涼くん…」

と声をかけた

振り向いてくれなかった




だから、もう一回


「ねえ、涼くん…」




そうすると、


「うるっせーんだよ!!」


そう言われて突き飛ばされた

背中はロッカーにぶつかった

痛かった

涙が出た

目を開けるとそこには

自分に殴りかかろうとする涼がいた

自分にあたる直前、その腕は止まった

いじめの主犯だった4人が押さえ込んでいた



初めて、

怒りに満ちた、憎しみに満ちた

涼の目を見た


泣いていたら

いつも

「大丈夫だよ!僕がいるよ!」

と声をかけてくれたり

変顔をしたり

涙を拭いてくれたり


そんな優しい涼しか知らなかった



だからショックだった






涼くん、どーして…

涙が止まらなかった

そこから逃げ出した






空き教室の給食ロッカーの中に逃げ込んだ

5限の始まりを告げるチャイムがなっても

教室に戻ることはなく

ずっと泣いていた




「あずさちゃん!僕と遊ぼー!」


そう言ってきてくれた彼





「僕もね、あずさちゃんが好き」


そう児童館の受け付けに置かれていたピンクの公衆電話の机の下で言われたこと





学童のみんなで近所の公園に行ったときは

必ずブランコ2人乗りして遊んだこと





ピアノを習ってた涼が

聞かせてくれた曲



思い出せばキリがないほど

涼が話しかけてきてくれた

1年生の10月から2年生の3月まで

その1年半は涼との思い出で溢れていた

思い出の量に比例するかのように

涙も溢れて止まることはなかった




このとき

なんとなくわかっていた


もう二度とその幸せな時間は戻ってこないことを




6限が始まる前見つかり

教室に連れ戻された



6限は本来やる予定だった授業を中断して、

話し合うことになった



なにがあったのか

先生は聞いた




いじめの主犯だった4人、涼も

口を開くことはなかった





そして、先生は自分に聞いてきた

なにがあったのか

けれど、泣いていて話せなかった



すると、先生は

「泣いてばっかじゃわかんないだろ!」

そう言った



この時、

あー、どの大人も自分の思い通りにならなかったら

すぐ怒るのか…

と思ったのは覚えているが






そこで記憶はプツンと切れている

次の記憶は小5になってから

その空白の1年半

自分に何があったのか

まったく覚えていない

どんな事件があったのか、

どんな曲が流行っていたか、

自分に関係のないことなら

いくらでも思い出せるのに

自分のことになると

動悸、冷や汗が止まらない

思考が停止してそれ以上考えられなくなる



それは21歳を迎える

少し前に「解離性健忘」という

病気であることがわかった

他にもPTSD、パニック障害も発覚した




後に聞いた話だった


涼は自分と仲良くしていたとき

男子から仲間外れにされていたらしい


思い返してみると

サッカーやピアノがあり

学童に来れない日や

学校が休みの日以外は

確かにいつも涼は自分といた



それが耐えられなかったらしい




でも、涼が笑っててくれるなら

幸せなら

それでいいと思った






それが自分を壊すことになるとは

思っていなかった

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