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目を閉じれば  作者: さち
第1章 止まった時間と冷えた心
10/33

2015年2月25日 20時

あの人が帰ってきた


もうお風呂は入った

乾かしてはいないため

まだ湿っていた


「おかえり」

「あずー、ただいまー」


今日は機嫌がいいな

でもこれが逆に怖い

いつ怒りだすかわからない


「ご飯いまから作るからね」

「はーい」


とりあえず、はいと返事をしておけば良い

この家でする行動は全て

あの人の機嫌を伺いながら

そうでなければまた痣が増える








小学3年の頃、

ある日曜日のことだった

塾の宿題の意味調べが余りにも多過ぎて

もうやりたくないと言ったことがあった

普通の親なら、

「やりなさい」か

「やらないのは勝手だけど自分が怒られるんだよ」

そう言うだろう

でもこの人は

「そんな子はうちの子じゃない!

じゃあ、やらなくていいわよ!」

そう、国語辞典を投げてきた


間一髪で避けたが

後ろにあったガラスの引き戸にあたり

それが割れた

そしてその破片が自分へ降ってきたのだ

腕や肩、足からは血が出た



痛い!痛い!痛い!

なんで!なんで!

血がいっぱい出てくる

どうしよう、どうしよう!


涙が溢れて止まらなかった



その音に驚いた

祖父と祖母が近寄ってきた

母はすぐ傍で「どうしよう」と半分パニックに陥っていた

祖父は母を外へ連れていった


「あずさ、大丈夫?」

「おばあちゃん、痛いよ…」

「ガラスの破片取らなきゃね」

「うん」

「こっちおいで」


祖母は一つ一つ丁寧に

体に刺さり、散らばったガラスを取っていった


「洗っておいで」

「うん」


そのあと綺麗に拭いてくれて

ガーゼを当てられ包帯を巻かれた


母が戻ってきた


そのとき初めて母に恐怖を感じた

絶対これは当たり前じゃない!


「ごめんね」と言って抱き締められる

その腕も払い除けたかった

けどそんなことしたら

また痛い目に合わされるかもしれない

そう思ったら動けなかった






それからというもの

今までは暴言だけだったが

怒るとよく物を投げたり、背中を殴られたり

されるようになった


いつも、






痛くない、痛くない

これは現実じゃない

違う、夢の中だ


そう思うことしかできなかった



いつからか痛いと感じることもなくなっていた

されているときはただ無心になる


それでしか自分を守れなかった





学校の先生も信用できなかった

同級生も


誰もが

いじめだとわかっていても

それを止めさせる術を知らなかった


母に昔、相談したが

それが学校に伝わり

いじめている奴らにも伝わった


結果、更に状況は悪化した




そして、自分がいじめられていても

ずっと傍にいてくれた

涼は

人生で初めて好きなった人は











いじめる側へとまわった







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