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第一章 プロローグ

 現在、この世界は平和である。今までは人族、魔族、獣族と三種類の人種で争っていた。しかし、魔族の頂点である魔王が新しい代に変わると、その戦いにも終止符が打たれた。


 今まで実現不可能とまで言われた、『三種族友好同盟』が実現されたのであった。しかし、この同盟を結ぶ理由は、ただ戦争をやめたいという理由だけではなかった。



「ねぇねぇ、セオン?」


「なーに?」


「私ね、セオンと結婚する!!」


「ぶぅうううううううーー!!!!」


 急なことで飲んでいた水を噴き出してしまった。


 俺の名前はセオン=リファスト、このペポット村の領主であり、また領主にしては珍しい冒険者である。冒険者のほうは、幼馴染のシルドと一緒にやっている。Dランクであり、下から二番目に位置する。


 この小さい少女はエドリナ、見ての通り、角や黒い翼が生えている。いわゆる、魔族である。人族と魔族は敵対関係であるがため、人族は魔族を嫌っている。家族が殺されたとか、家を失ったなどの理由だけで嫌っている。なら、考えてみよう。魔族側にも家族や家、恋人などはいるのだ。それを奪っているのは人族なのだ。


 俺は魔族を嫌ったりはしない。少しだけ容姿は違うが、エドリナは可愛すぎる........。俺とエドリナの出会いは1年前、いつも通り、王都のギルドに行くため1人で森を歩いていると、1人の少女が倒れていた。一瞬で魔族だと理解できたが、助けない理由などは存在しない。


 数日でエドリナは目を覚ました。最初の方は警戒や嫌悪を示していた。しかし、俺の懸命な努力でその溝は埋まった。今では、結婚という言葉を向けてくるようにもなった。


「そ、そういうのは、本当に好きな人に言う言葉だよ?」


「好きだもん!」


「で、でも—————————————」


「やだ......?」


「いや、そういうわけでは........」


「じゃあ、する!!」


 エドリナはいつものようにセオンに抱き着いた。エドリナはまるでマーキングかのようにセオンにべったりとくっついていた。


 セオン自身この時間が何よりの幸せと感じていた。しかし、この時間はあっさりと失われてしまった。セオンは幼馴染のシルドに裏切られたのだ。シルドはセオンの家に魔族が住んでいることは知っていたが、親友だからと言わないでくれた。


 しかし、最近になって【加護】というものを教会から信託してもらってから、性格が急変してしまったのだ。お金遣いが荒くなったり、女遊びが激しくなったりと、昔のシルドを知っているセオンからしてみれば、別人に見えてしまった。


 そして、ついに幼馴染であり親友でもあるセオンを王国に売ったのだ。魔族の情報を売ることは相当な額の金が入るため売ったのだ。


 国法では魔族を匿うことは重罪であり、ほとんどの場合、奴隷堕ちになり、鉱山で探鉱+ギルドのモンスター処理または荷物持ちが普通である。ギルドの荷物持ちなどは、普通の冒険者でもするが、お金が発生するのだ。しかし、奴隷の場合は違う。すべてタダであり、何日も拘束することが可能なのだ。


 セオンはシルドが王国に情報を売ったということを既に耳にしていた。セオンは自分が奴隷の身分に堕ちるのは確定であると判断したため、エドリナだけを逃がすと判断した。


「やーーーーだ!!!!」


「エドリナだけでも、逃げなさい。エドリナはきっと殺されてしまう」


「セオンと離れるのだけは嫌だ!!」


 ずっとセオンに引っ付いて離れないエドリナを無理やり引きはがし、信用がある従者へと引き渡した。エドリナは離れたくないと大声を出しており、周囲から見たら恋人の生き別れみたいであった。


「頼むぞ、ソンフォ」


「お任せください! 必ず魔族の国までエドリナ様をお送りします」


「巻き込んですまないな」


「いえ、私はリファスト家に救っていただいたこの命は、セオン様に使うと決めておりますので」


「ありがとう」


 この間にも小さい体を精一杯使い、ソンフォの束縛から離れようと必死にもがいていた。その目には大粒の涙。


「ばなれたく.....ない!」


 嗚咽交じりの声でセオンに懇願している。それでもセオンは動じない。ここで離れなかったらエドリナは確実に死刑なのだ。それだけは絶対にさせるつもりはなかった。


 ‶コンコンコン!″


 玄関の扉が叩かれる音がした。国家


「行け!!!」


 その言葉とともに従者のソンフォとエドリナは屋敷を抜け出すため、地下通路へと入った。


「この通路はシルドは知らないはずだ」


 そして、玄関の扉は強制的に開けられ、セオンは魔族を匿っている罪で逮捕された。しかし、どんなに中を探しても魔族の姿は確認されなかった。だが、魔族というものは角を切って整えることをしているため、その破片がでてきたことにより、セオンは領主から奴隷へと堕ちた。


 それと相対して、王国に情報を売ったお金で、シルドは王国内に自分の商業ギルドを建て、大繁盛。6年経った今では、王国最大の商業ギルドになっており、王族の次に権力を持っている。


 そして、セオンは6年の間、鉱山に探鉱に行かされたり、ギルドに死体の処理をしたり、荷物運びをしたりとひどい扱いをされてきた。何度もセオンは逃げようとしたが、それをすべて阻むのが今、セオンの首に付いている首輪だ。これは命令を拒否したり、逃げたりしようとすると電気が流れ、身動きができなくなる。


 こんな生活を続けて、6年。セオンの精神は崩壊寸前であった。しかし、これまで崩壊せずに済んだのはエドリナのおかげであった。エドリナの笑顔を思い出すだけでセオンは元気になれるのだ。


 そして、セオンが奴隷になって7年目のある日、魔族と獣族と人族の休戦協定、『三種族友好同盟』が結ばれた。これには多くの国民の反感を買ったが、国王は一切曲げなかった。


 正直、人族は魔王が新しく変わった途端、魔族との戦いは大敗しかなかった。この間は王国の総戦力で魔族との対戦を望んだのだが、魔族側はたった10人に王国の総戦力は負けたのだ。


 そんな絶望的な状況の中で、魔族側が同盟を求めてきたものだから、国王はよろこんでその手を取るしかない。


「もしかしたら、またエドリナに会えるかもな」


 いつも寝泊りしている馬小屋でそんなことを言っていると、


 ‶ガラガラガラガラ″


 不意に馬小屋の扉が開いた。いつものように馬小屋の店主に殴られるのかなと予想していたセオンであったが、予想とは遥かに違っていた結果になった。


 そこには絶世の美女が立っていた。


「あ、あのー、俺に何か用ですか?」


(俺、こんな美女に何かしちゃったっけ? まさか、訴えにきたとか!?)


「セオン!!!!!!」


 美女はセオンの抱き着き、名前を連呼していた。


「セオンセオンセオンセオンセオンセオン!!!」


「あ、あの、なんで俺の名前を?」


 絶世の美女は満面の笑みを浮かべた。そして、


「エドリナだよ! お迎えに来たよ、私の旦那様♡」


「え........」


 この出会いが世界を大きく変えることになることは、まだ誰も知らない。


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