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「久しぶりって…。本当にユキくんなの!?」
そんなことあるわけない。
ユキくんは同い歳のはずだから、今は17歳のはず。
だけど目の前の少年は、あの頃から時を止めたままの姿であった。
「あっ、もしかしてイトコとかかな?ぼうやは一人??家族の人はどこにいる?」
甘い声を出せば、少年は不機嫌そうに顔を歪めた。
「なに言ってんだよ。俺だよ。佐原ユキトだよ」
「…ほ、本当に」
「そうだよ。飛鳥もすっかり女っぽくなったんだな。その制服、県立第一?」
「うん。なんとか受かったんだ」
「よかったな。ガキの頃、ブレザーが可愛いとか言ってたもんな」
ふざけて笑う感じとか、まるで。
年下の小学生と話しているのではなく、クラスの男子と話してるみたいだ。
「本当に本物のユキくんなんだね…。」
確信していくと、会えた喜びがじわじわと胸に込み上げてきた。
目の前がゆらゆらと揺れ始めて、目のふちに涙がたまっていく。
「突然いなくなっちゃったから、すっごく寂しかったんだよ」
「悪かったよ…。飛鳥にだけは言いたかったんだけど、色々あったんだ」
「うん…。でも会えて嬉しい」
こらえきれずに流れた涙を制服の片袖でぬぐう。
「泣くなって!おれも飛鳥に会えて嬉しかった」
ニコっと笑った顔は、幼さが残る愛くるしいものだ。
「またこっちに戻ってきたんだよね?お母さんたちも?」
その一言にユキくんの表情は一瞬にして冷たくなった。
「……いや、おれ一人だよ。事情があって戻ってきたんだ」
急な変化になにか触れてはいけない空気がひしひしと伝わってくる。
そ、そうなんだ、とあたしは勇気を振り出し切り出した。
「ユキくん、悪の組織とかに薬とか飲まされちゃったんでしょ……?」
見た目は子供、頭脳は大人。あたしの頭の中には某国民的アニメの眼鏡の少年が浮かんでいる。
「は?」
ユキくんはきょとんとした顔をした後、一気に吹き出し声を上げて笑い出した。
「なっ…あははは…相変わらず面白いこと言うな〜」
あんまり笑うからなんだか恥ずかしくなって頰がほてり出す。だって、そう思うじゃん?!
「笑いすぎてしょ!だってユキくん全然変わってないんだもん!」
背も伸びてカッコよくなった幼馴染との再会、は夢に終わり、まさか誰がそのままの姿で会うことになると思うだろう。
「……おれはさ」
ひとしきり笑い終えて、目頭に溜まった水を指で擦ってからユキくんはあたしを、まっすぐに見上げた。
「復讐しに戻って来たんだ」