表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

気持ちの良いキス



 「……はぁ……」




 部屋に戻ってから僕は、大きく溜息を()く。




 「(ゆき姉ちゃんとキスしてしまった……)」




 先程、柔らかい物に触れていた、自分の唇を触る。


 そう、僕はゆき姉ちゃんとキスをしたのだ。


 それも、お互いの気持ちを確かめないまま。

興奮して我を忘れてしまった状態で、思わずしてしまった。


 でも、ゆき姉ちゃんが挑発するのも悪いんだよ……。





  **********





 僕の名前は古閑(こが) 陽太(ようた)、高校一年生。


 僕は親の海外転勤の関係で、熊本北部の伯父さんの家に夏休みから厄介になっており。

二学期が始まると同時に、地元の高校に編入した。


 そして、二学期が始まってから一ヶ月経った祭りの日。

僕は、従姉の古閑(こが) 夕貴(ゆき)と共に行き。

彼女から()らされた挙句(あげく)、挑発に乗り。

我を忘れ、彼女とキスをしてしまった。


 二人共キスをした直後は、頭がボンヤリとして途中の事を覚えてなかったが。

家に帰った途端、自分のした事を思い出し、激しく後悔する。




 「(でも、柔らかかったなあ……)」




 後悔すると同時に、柔らかかった、ゆき姉ちゃんの唇の感触を思い出し。

同時に、彼女の(かす)かに甘い味も思い出していた。


 もちろん、僕に取ってはファーストキスである。


 話に聞く分には、ゆき姉ちゃんも多分そうだと思う。


 僕は、別に彼女のキスするのが嫌な訳でなく、逆に嬉しいが。

しかし、こんな劣情に流されてするつもりは無かった。




 「……このままじゃ行けないよな」




 とは言え、ゆき姉ちゃんとキスをしたのは取り消せないので。

これから、どうするのかは考えないと行けない。


 こうして僕は、一晩中悩み続けたのであった。




 ・・・




 「ゆき姉ちゃん、ちょっと良い?」


 「あっ! 陽ちゃん……。

 ちょっと今はダメやけん、ごめん……」




 結局、一晩中悩んだ結果は。

シンプルに告白すると言う物であった。


 そうは言う物の、それは一番勇気がいる選択である。

でも二人の関係から、いずれはそんな事にはなるだろうから。

早いか遅いかの違いでしかない。


 腹を(くく)り、ゆき姉ちゃんに告白しようとするが。

その度ごとに、はぐらかされてしまう。


 別に、二人の仲が悪くなったとか言う事は無く。

二、三日は気まずかったけど、それから先は普段どおりに戻るも。

肝心の話を切り出そうとすると、なぜか逃げられてしまう。


 そんな事を繰り返して、一週間が経った。


 彼女の部屋の前で待っていた今も、僕から逃げようとしているので。

僕は意を決する。





  **********





 (トン!)


 「えっ?」




 私は、意外な光景に驚く。


 陽ちゃんが壁に手を付いて、私を逃げられなくした。

俗に言う、“壁ドン”の体勢である。


 その状態にもだけど、“あの”陽ちゃんが、そんな事をしたのにも驚いた。


 思えば、彼とキスをした時から、何かが変わった様な気がする。


 私から、挑発したのにも関わらず。

その気持ち良さに、私の方が溺れてしまい。

あれから何回も、あの時の事を反芻(はんすう)し、時にはイケナイ事もした。


 陽ちゃんもキスした翌日、それまでと打って変わり。

どうやら、私に告白しようとしている気になったみたいだ。


 今までなら、私が望んだ展開に小躍(こおど)りして喜んでいたどろうけど。

キスをした後は、彼の顔を見ると何だか恥ずかしくなってしまい。

思わず、逃げ出してしまう。


 そんな事を繰り返して、一週間経った今。

突然、こんな状況になってしまった。




 「ねえ、ゆき姉ちゃん」


 「ど、どぎゃんかしたと? 陽ちゃん」



 陽ちゃんが真剣な目で私を見る。

その瞳を見て、私は目を()らすことが出来ない。




 「僕ね、久しぶりに、ゆき姉ちゃんを見て驚いたよ。

 とてもキレイになってたから」


 「わ、私も、陽ちゃんがこぎゃん(こんなに)大きゅう(大きく)なって驚いたと(驚いた)よ……」


 「ここに来るまで僕は、昔みたいにゆき姉ちゃんと仲良く暮らせると思っていた。

 でも、久しぶりにゆき姉ちゃんを見て一緒に暮らしている内に。

 だだの仲の良い、従姉弟じゃ居られなくなっていった」


 「それは、私も同じやけん(だから)

 せやけど(そうだけど)、私からそん[その](こつ)ば[を]言う()もシャクやけん(だから)

 何とか、陽ちゃんから言わせようとしとった(したの)……」


 「でも、そのゆき姉ちゃんがどうして逃げるの?」


 「確かに、最初はそう思おとったとばってん(思っていたんだけど)

 陽ちゃんとキスしたら、陽ちゃん()見ると何でか(なぜか)恥ずかしくなってくる()……」


 「どうして恥ずかしいの?」


 「陽ちゃんとのキスが気持ち良かったけん(から)、陽ちゃん()見ると、もっと欲しくなるけんがら(から)


 「じゃあ、ゆき姉ちゃんに、もっとあげるよ」




 そう言うと、彼が一歩近づき私を抱き締める。




 「ん……」




 陽ちゃんと壁に挟まる形になった上。

私の頭を後ろに傾け、彼がおもむろにキスをしてきた


 彼の唇の感触を感じたら、無意識の内に爪先立ちをして。

彼の感触をもっと求めた。




 「ん、んんっ……」




 唇の感触でも気持ち良かったのが、イキナリ彼の舌が入って来て。

私の舌を舐め始める。


 陽ちゃんの舌の感触に、唇以上の快感を感じて膝の力が抜けて。

私は必死で、彼にしがみ付く。




 「はぁ……はぁ……はぁ……」




 息をするのも忘れるほど気持ち良い、キスがしばらく続き。

不意に唇が離れると、陽ちゃんにしがみ付いたまま、荒い息を吐()く。




 「ゆき姉ちゃん」


 「な、なぁに……、陽ちゃん……」




 彼が私を呼び。

それに対し、落ち着かない息のままの私が、返事をする。




 「僕は、仲の良い従姉弟のままじゃ我慢が出来ない。

 ゆき姉ちゃん、僕の恋人になってくれない」


 「……うん、……うん。

 私、陽ちゃんの恋人になってあげるけん(から)




 私は陽ちゃんからの告白に、しがみ付いて彼の胸に顔を埋めた状態で返事をする。


 ちょっと照れ臭かったから、上から目線の答えを返したが。

内心は、飛び上がらんばかりに喜んだ。


 しかし、余りのキスの気持ち良さに足の力が抜けていたので、実際には出来ないけど。




 (なで……、なで……)


 「はぁ……、きもちいいよぉ……」




 彼の胸に顔を埋めて、(とろ)け切った状態の私の頭を、陽ちゃんが撫でる。


 追加される快感に、私はマスマス蕩けていく


 こうして私は、陽ちゃんとキスをして告白された後。

しばらくの間、彼から蕩けさせられたのであった。





  **********





挿絵(By みてみん)


 あれから時が流れ。




 「はあ、寒いね〜」


 「もお〜(もう)、12月やけん(だから)

 当たり前たい(だよ)




 僕の愚痴に、ゆき姉ちゃんが呆れたように言いながら僕の背中を叩いた。


 学校の帰り道、彼女の提案で、海へと寄り道する事にした。


 九州とは言え、流石に12月の海は寒い。


 制服にジャンパー姿の僕と、制服にカーディガンと黒ストッキング姿の彼女の二人で、海へと向かう。




 ・・・




 あの時、僕は逃げようとするゆき姉ちゃんを捕まえて、キスをして告白したのだが。

“壁ドン”をしてから、また暴走して。

キスを辺りからは、完全に記憶が飛んでいた。


 後になって、その事を彼女に話したら。




 ーーどおりで、オカシカ(オカシイ)(おも)おとった[思った]よ。




 一瞬呆れたが、続いてクスクスと笑った。


 “だって、ヘタレの陽ちゃんが男らしかったけんがら(から)、何か変やて(だって)思った”と言う言葉が後から続く。


 確かに、僕は臆病だけど、その言いぐさは……。


 “でも、陽ちゃんからシて貰いたかとなら、誘惑すれば良かとたいねぇ〜”、

などと言って、ゆき姉ちゃんが妖しい笑みを浮かべた。


 その笑みを見て、僕は何となく嫌な物が背中に走る。




 ・・・




 「はぁ〜」




 そんな事を思い出しながら、二人で海への道をあるいていたら。

目的の海へと着いた。


 目の前には夕日に照らされた雲仙と、丁度、多良岳に沈もうとする夕日が見える。


 その光景を見て、ゆき姉ちゃんが感嘆の声を上げる。


 真夏だと七時を過ぎないと沈まないが、一番日が短い今だと、五時過ぎで沈んでしまう。


 寒さで空気が澄んでいる所為か、夕日がとてもキレイである。




 「キレイ()ねぇ〜」


 「うん……」



 ウットリした声でゆき姉ちゃんがそう言うが、僕は夕日に照らされた彼女を見て返事をする。




 「あっ……」




 僕の返事の微妙な違いに気付いた彼女が、振り返り。

僕の表情を見て、小さく驚きの声を出した。




 「ねえ、陽ちゃん……」




 先程までのハシャイだ雰囲気と打って変わり、甘えるような視線で僕を見る。


 それが何を意味するのか、何回も見てきたので直ぐにわかった。




 (そおっ)


 「ん……」




 静かにゆき姉ちゃんに近付き、そっと抱き締めながら彼女にキスをする。

それを受けて彼女も、爪先立ちになる。




 「はぁ……、気持ちん()良か(良い)……」




 しばらくお互いの味わった後、ユックリと離れると心底、気持ち良さそうな声を出しながら、僕の胸に顔を埋めた。




 「ねえ、陽ちゃん」


 「うん? なに」


 「もうすぐクリスマスに、お正月だね」


 「うん」




 そう、もうすぐ伯父さんの家に厄介になって、初めての年越しだ。

当然、ゆき姉ちゃんとも一緒に過ごすことになる。




 「でもね。

 その前に、ウチの両親が一日用事があって帰えらん(帰らない)日がある()


 「えっ?」


 「だけんがら(だから)、その日()とヤれるね」


 「ええっ!」


 「もう私、キスだけじゃ満足できんごつ(できなく)なった。

 それに、自分でシても不完全燃焼になるし、どうしても陽ちゃんとシたかと(シたいの)




 次々と、爆弾発言を行う彼女に、僕は混乱する。




 「それにね、そぎゃんか事言うても(そんな事言っても)、陽ちゃん。

 誘惑すると暴走して、積極的になってくれるもんね〜」




 おもむろに、僕が来ているジャンバーと上着の前を開け、直接カッターシャツ上から抱き着く彼女。


 薄いシャツの上から僕の胸に直接、頬ずりして彼女がそんな事を言う。




 「ふふふっ、もお、そん(その)日が楽しみやね〜」


 (ゾクゾクゾク〜)




 妖しく笑いながら、そう言うゆき姉ちゃん。


 ジャンバーどころか上着の下で、彼女の手が僕の体をまさぐっているので。

僕の体に、ゾクゾクした感触が走る。


 妖しいゆき姉ちゃんに、多少引き気味になるも。

僕だって、健康な高校生男子だから、関心がないわけでは無い。


 むしろ、僕もその日が楽しみになっていた。




 「ふふふ〜」



 相変わらず、妖しく笑う彼女が服の中で僕の体を撫で回している。


 僕はそんなゆき姉ちゃんに、ジャンバーと上着を被せ完全に服の中に入れてから、その頭を撫でる。




 (スリスリスリ〜)




 そうすると、撫で回していた手が止まり。

今度は、猫が甘えるように僕の胸に頬ずりを再開させる。



 服の中で頬ずりをする、ゆき姉ちゃんを抱き締めながら頭を撫でつつ。

僕は、その日を不安半分、期待半分の気持ちで考えたのであった。


最後まで、ご覧になった皆様。

ありがとうございます。


結局、私が"なろう"に投稿した連載作品の中では、最低の結果になりました……。


そんな作品でも、ご覧なってもらい。

作者としては、感謝しかありません。


それでは、また機会がありましたら、またご覧下さいm(_ _)m


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これらの作品も、熊本を舞台にした作品です。
・思い出の海と山と彼女
・熊本のお姉ちゃん

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ