気持ちの良いキス
「……はぁ……」
部屋に戻ってから僕は、大きく溜息を吐く。
「(ゆき姉ちゃんとキスしてしまった……)」
先程、柔らかい物に触れていた、自分の唇を触る。
そう、僕はゆき姉ちゃんとキスをしたのだ。
それも、お互いの気持ちを確かめないまま。
興奮して我を忘れてしまった状態で、思わずしてしまった。
でも、ゆき姉ちゃんが挑発するのも悪いんだよ……。
**********
僕の名前は古閑 陽太、高校一年生。
僕は親の海外転勤の関係で、熊本北部の伯父さんの家に夏休みから厄介になっており。
二学期が始まると同時に、地元の高校に編入した。
そして、二学期が始まってから一ヶ月経った祭りの日。
僕は、従姉の古閑 夕貴と共に行き。
彼女から焦らされた挙句、挑発に乗り。
我を忘れ、彼女とキスをしてしまった。
二人共キスをした直後は、頭がボンヤリとして途中の事を覚えてなかったが。
家に帰った途端、自分のした事を思い出し、激しく後悔する。
「(でも、柔らかかったなあ……)」
後悔すると同時に、柔らかかった、ゆき姉ちゃんの唇の感触を思い出し。
同時に、彼女の微かに甘い味も思い出していた。
もちろん、僕に取ってはファーストキスである。
話に聞く分には、ゆき姉ちゃんも多分そうだと思う。
僕は、別に彼女のキスするのが嫌な訳でなく、逆に嬉しいが。
しかし、こんな劣情に流されてするつもりは無かった。
「……このままじゃ行けないよな」
とは言え、ゆき姉ちゃんとキスをしたのは取り消せないので。
これから、どうするのかは考えないと行けない。
こうして僕は、一晩中悩み続けたのであった。
・・・
「ゆき姉ちゃん、ちょっと良い?」
「あっ! 陽ちゃん……。
ちょっと今はダメやけん、ごめん……」
結局、一晩中悩んだ結果は。
シンプルに告白すると言う物であった。
そうは言う物の、それは一番勇気がいる選択である。
でも二人の関係から、いずれはそんな事にはなるだろうから。
早いか遅いかの違いでしかない。
腹を括り、ゆき姉ちゃんに告白しようとするが。
その度ごとに、はぐらかされてしまう。
別に、二人の仲が悪くなったとか言う事は無く。
二、三日は気まずかったけど、それから先は普段どおりに戻るも。
肝心の話を切り出そうとすると、なぜか逃げられてしまう。
そんな事を繰り返して、一週間が経った。
彼女の部屋の前で待っていた今も、僕から逃げようとしているので。
僕は意を決する。
**********
(トン!)
「えっ?」
私は、意外な光景に驚く。
陽ちゃんが壁に手を付いて、私を逃げられなくした。
俗に言う、“壁ドン”の体勢である。
その状態にもだけど、“あの”陽ちゃんが、そんな事をしたのにも驚いた。
思えば、彼とキスをした時から、何かが変わった様な気がする。
私から、挑発したのにも関わらず。
その気持ち良さに、私の方が溺れてしまい。
あれから何回も、あの時の事を反芻し、時にはイケナイ事もした。
陽ちゃんもキスした翌日、それまでと打って変わり。
どうやら、私に告白しようとしている気になったみたいだ。
今までなら、私が望んだ展開に小躍りして喜んでいたどろうけど。
キスをした後は、彼の顔を見ると何だか恥ずかしくなってしまい。
思わず、逃げ出してしまう。
そんな事を繰り返して、一週間経った今。
突然、こんな状況になってしまった。
「ねえ、ゆき姉ちゃん」
「ど、どぎゃんかしたと? 陽ちゃん」
陽ちゃんが真剣な目で私を見る。
その瞳を見て、私は目を逸らすことが出来ない。
「僕ね、久しぶりに、ゆき姉ちゃんを見て驚いたよ。
とてもキレイになってたから」
「わ、私も、陽ちゃんがこぎゃん、大きゅうなって驚いたとよ……」
「ここに来るまで僕は、昔みたいにゆき姉ちゃんと仲良く暮らせると思っていた。
でも、久しぶりにゆき姉ちゃんを見て一緒に暮らしている内に。
だだの仲の良い、従姉弟じゃ居られなくなっていった」
「それは、私も同じやけん。
せやけど、私からそん[その]事ば[を]言うともシャクやけん。
何とか、陽ちゃんから言わせようとしとった……」
「でも、そのゆき姉ちゃんがどうして逃げるの?」
「確かに、最初はそう思おとったとばってん。
陽ちゃんとキスしたら、陽ちゃんば見ると何でか恥ずかしくなってくると……」
「どうして恥ずかしいの?」
「陽ちゃんとのキスが気持ち良かったけん、陽ちゃんば見ると、もっと欲しくなるけんがら」
「じゃあ、ゆき姉ちゃんに、もっとあげるよ」
そう言うと、彼が一歩近づき私を抱き締める。
「ん……」
陽ちゃんと壁に挟まる形になった上。
私の頭を後ろに傾け、彼がおもむろにキスをしてきた
彼の唇の感触を感じたら、無意識の内に爪先立ちをして。
彼の感触をもっと求めた。
「ん、んんっ……」
唇の感触でも気持ち良かったのが、イキナリ彼の舌が入って来て。
私の舌を舐め始める。
陽ちゃんの舌の感触に、唇以上の快感を感じて膝の力が抜けて。
私は必死で、彼にしがみ付く。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息をするのも忘れるほど気持ち良い、キスがしばらく続き。
不意に唇が離れると、陽ちゃんにしがみ付いたまま、荒い息を吐く。
「ゆき姉ちゃん」
「な、なぁに……、陽ちゃん……」
彼が私を呼び。
それに対し、落ち着かない息のままの私が、返事をする。
「僕は、仲の良い従姉弟のままじゃ我慢が出来ない。
ゆき姉ちゃん、僕の恋人になってくれない」
「……うん、……うん。
私、陽ちゃんの恋人になってあげるけん」
私は陽ちゃんからの告白に、しがみ付いて彼の胸に顔を埋めた状態で返事をする。
ちょっと照れ臭かったから、上から目線の答えを返したが。
内心は、飛び上がらんばかりに喜んだ。
しかし、余りのキスの気持ち良さに足の力が抜けていたので、実際には出来ないけど。
(なで……、なで……)
「はぁ……、きもちいいよぉ……」
彼の胸に顔を埋めて、蕩け切った状態の私の頭を、陽ちゃんが撫でる。
追加される快感に、私はマスマス蕩けていく
こうして私は、陽ちゃんとキスをして告白された後。
しばらくの間、彼から蕩けさせられたのであった。
**********
あれから時が流れ。
「はあ、寒いね〜」
「もお〜、12月やけん。
当たり前たい」
僕の愚痴に、ゆき姉ちゃんが呆れたように言いながら僕の背中を叩いた。
学校の帰り道、彼女の提案で、海へと寄り道する事にした。
九州とは言え、流石に12月の海は寒い。
制服にジャンパー姿の僕と、制服にカーディガンと黒ストッキング姿の彼女の二人で、海へと向かう。
・・・
あの時、僕は逃げようとするゆき姉ちゃんを捕まえて、キスをして告白したのだが。
“壁ドン”をしてから、また暴走して。
キスを辺りからは、完全に記憶が飛んでいた。
後になって、その事を彼女に話したら。
ーーどおりで、オカシカて思おとった[思った]よ。
一瞬呆れたが、続いてクスクスと笑った。
“だって、ヘタレの陽ちゃんが男らしかったけんがら、何か変やて思った”と言う言葉が後から続く。
確かに、僕は臆病だけど、その言いぐさは……。
“でも、陽ちゃんからシて貰いたかとなら、誘惑すれば良かとたいねぇ〜”、
などと言って、ゆき姉ちゃんが妖しい笑みを浮かべた。
その笑みを見て、僕は何となく嫌な物が背中に走る。
・・・
「はぁ〜」
そんな事を思い出しながら、二人で海への道をあるいていたら。
目的の海へと着いた。
目の前には夕日に照らされた雲仙と、丁度、多良岳に沈もうとする夕日が見える。
その光景を見て、ゆき姉ちゃんが感嘆の声を上げる。
真夏だと七時を過ぎないと沈まないが、一番日が短い今だと、五時過ぎで沈んでしまう。
寒さで空気が澄んでいる所為か、夕日がとてもキレイである。
「キレイやねぇ〜」
「うん……」
ウットリした声でゆき姉ちゃんがそう言うが、僕は夕日に照らされた彼女を見て返事をする。
「あっ……」
僕の返事の微妙な違いに気付いた彼女が、振り返り。
僕の表情を見て、小さく驚きの声を出した。
「ねえ、陽ちゃん……」
先程までのハシャイだ雰囲気と打って変わり、甘えるような視線で僕を見る。
それが何を意味するのか、何回も見てきたので直ぐにわかった。
(そおっ)
「ん……」
静かにゆき姉ちゃんに近付き、そっと抱き締めながら彼女にキスをする。
それを受けて彼女も、爪先立ちになる。
「はぁ……、気持ちん良か……」
しばらくお互いの味わった後、ユックリと離れると心底、気持ち良さそうな声を出しながら、僕の胸に顔を埋めた。
「ねえ、陽ちゃん」
「うん? なに」
「もうすぐクリスマスに、お正月だね」
「うん」
そう、もうすぐ伯父さんの家に厄介になって、初めての年越しだ。
当然、ゆき姉ちゃんとも一緒に過ごすことになる。
「でもね。
その前に、ウチの両親が一日用事があって帰えらん日があると」
「えっ?」
「だけんがら、その日やとヤれるね」
「ええっ!」
「もう私、キスだけじゃ満足できんごつなった。
それに、自分でシても不完全燃焼になるし、どうしても陽ちゃんとシたかと」
次々と、爆弾発言を行う彼女に、僕は混乱する。
「それにね、そぎゃんか事言うても、陽ちゃん。
誘惑すると暴走して、積極的になってくれるもんね〜」
おもむろに、僕が来ているジャンバーと上着の前を開け、直接カッターシャツ上から抱き着く彼女。
薄いシャツの上から僕の胸に直接、頬ずりして彼女がそんな事を言う。
「ふふふっ、もお、そん日が楽しみやね〜」
(ゾクゾクゾク〜)
妖しく笑いながら、そう言うゆき姉ちゃん。
ジャンバーどころか上着の下で、彼女の手が僕の体をまさぐっているので。
僕の体に、ゾクゾクした感触が走る。
妖しいゆき姉ちゃんに、多少引き気味になるも。
僕だって、健康な高校生男子だから、関心がないわけでは無い。
むしろ、僕もその日が楽しみになっていた。
「ふふふ〜」
相変わらず、妖しく笑う彼女が服の中で僕の体を撫で回している。
僕はそんなゆき姉ちゃんに、ジャンバーと上着を被せ完全に服の中に入れてから、その頭を撫でる。
(スリスリスリ〜)
そうすると、撫で回していた手が止まり。
今度は、猫が甘えるように僕の胸に頬ずりを再開させる。
服の中で頬ずりをする、ゆき姉ちゃんを抱き締めながら頭を撫でつつ。
僕は、その日を不安半分、期待半分の気持ちで考えたのであった。
最後まで、ご覧になった皆様。
ありがとうございます。
結局、私が"なろう"に投稿した連載作品の中では、最低の結果になりました……。
そんな作品でも、ご覧なって貰い。
作者としては、感謝しかありません。
それでは、また機会がありましたら、またご覧下さいm(_ _)m