突然の誘惑
この作品は、先に星空にてシリーズ読み切りした後、マグネットにて連載にし直して投稿した物です。
両方とも振るわず。
(星空はシステム上、連載が向きにくく。
マグネットは読者層と、作風が合わなかったみたいです)
その為、両方引き上げ、改めてなろうに投稿した作品です。
前ニ者から知っている方には、大変、ご迷惑を掛けた事をお詫びいたしますm(_ _)m
「はあ〜、久しぶりだなぁ〜」
「どぎゃんね、陽ちゃん。
久しぶりに見る、雲仙は」
「うん、毎回見ても雄大だよ」
僕は堤防の下に広がる海と、その先に見える山を見て、思わず呟き。
それを聞いた、隣の人物が感想を聞いてきたので。
僕は、そう答える。
「ふふ、陽ちゃんと、ここに来るとも久しぶりやもんね〜」
隣にいるのは、同じ年頃くらいの女の子で。
背は僕の頭ひとつ分低いぐらいで、スタイルが良く。
ほっそりとしているが、ガリガリと言う訳でも無く。
それどころか出るところは、アンバランスにならない位に大きく出ており。
顔も少々垂れ気味の眼が特徴的な、整った顔をした美人であり。
セミロングのボブカットが、とても似合っている。
そんな、ふんわりとした雰囲気の女の子が、黒のキャミソールとデニムのホットパンツと言う。
涼しそうだが露出が多い服装で、僕の隣に立っていた。
その隣の女の子は、遠くにそびえる、山々を眺めている僕を見て。
何だか嬉しそうにしている。
**********
僕の名前は古閑 陽太、高校一年生。
僕は今、熊本北部のとある地域に来ている。
実は、父親の海外転勤の為に。
今回、父方の伯父の家に厄介になっていたのである。
父親の赴任先が、教育環境に難がある地域らしく。
その為、僕を一緒に連れてけないと言う事になった為だ。
結局、赴任先には父親の世話と、仕事関係での社交も必要なので。
母親も同行する事になった。
そして、日本に残る僕の処遇について、色々と考えた末。
伯父さんの勧めもあり、ご厄介になることにした。
昔から、なぜか僕は伯父さんに気に入られていて。
毎回、来るたびに、良く可愛がられていたので。
今回の、この話も、喜んで受け入れて貰えたらしい。
そんな訳で、結局、一学期だけ行った学校から。
新しく、地元の高校へと編入する事になり。
二学期から、通い始めていた。
そして、僕の隣に居る人物は。
僕の従姉になる古閑 夕貴、一つ上の高校二年生である。
彼女とは、昔から仲が良く。
まるで実の姉弟のように、ここに来ると必ず一緒に居た。
だから、ここに来る時は、昔みたいに楽しく居られる思っていたが。
再会した彼女を見て、僕はとても驚く。
――久しぶりに見る彼女は、とても綺麗になっていたのだ。
しかもただ綺麗になっただけでなく、魅力的にもなっていて。
ワンピースの大きく開いた胸元や、袖なしの肩口から伸びる腕、または、ミニ丈のスカートから伸びる足から見える白い肌。
細い腰、大きなお尻、そして大きいけどバランスの良い胸。
それらを見て、僕は思わずドキドキしてしまった。
ここに来るまでは、仲が良い姉弟で居られると思っていたが。
心の中では、それだけでは満足出来なくなっていた。
そして、その思いは、日を追う毎に大きくなっていって。
視界に彼女が入ると、目で追うことが多くなった。
・・・
この日は、二学期が始まって初めての休日。
ここに来てまだ海を見ていなかったので、急遽、一緒に来ようと言う事になった。
夏休み中は、引っ越しやら、手続きやら、準備やらでユックリできなったが。
学校が始まった事で、ようやく落ち着く。
また、僕と彼女は海を見るのが好きで、ここに来たときは良く一緒に見に来ていて。
引っ越しして、まだ一緒に見ていなかった事もあり、ゆき姉ちゃんの提案で来ることになったのだ。
そんな訳で、歩いて10分ほどの所にある、海岸へとやって来た。
**********
「ねえ、陽ちゃん」
僕は堤防に腰掛けて、有明海の向こうに見える雲仙と、その北の多良岳を見ていたら。
突然、ゆき姉ちゃんが尋ねてきた。
(ふわっ……)
「えっ?」
彼女が尋ねてきたかと思ったら、急に首に何かが巻き付き。
それと同時に、後頭部が柔らかい物に覆われる。
気が付くと、僕の首にゆき姉ちゃんが抱き付いていたのだ。
昔は二人で良く、くっ付くことも多かったが。
大きくなり、魅力的になった今では、思わず別の感情を持ってしまう。
「ゆき姉ちゃん、当たってる、当たってる」
「ふふっ、ワザと当てとるとよ♪」
後頭部に当たる、柔らかい物の正体が分かった僕は、慌ててそう言うが。
当の彼女は、可笑しそうにしている。
「ねえ、陽ちゃん」
「……な、なに?」
「陽ちゃんって、良〜〔良く〕私の胸ば見とったやろ?」
(ギクッ!)
「良かよ、別に怒っとるとじゃなかけん♪
陽ちゃんも男の子やけん、オッパイが好きやもんね〜♪
どお、私のオッパイ、大きかろ〜」
図星を突かれて、僕はキョドってしまうが。
ゆき姉ちゃんは怒るどころか、むしろ楽しそうにしていた。
「もしろ、逆に嬉しかと。
私の事ば〔を〕、女の子として見とってくれるけんが」
「……」
更に、自分が思っていたことを言われたので、僕は沈黙してしまう。
「実は、私もそぎゃんとよ」
「えっ?」
「久しぶりに見た、陽ちゃんば見て、ドキドキしたもん。
いつの間にか背が高こうて、肩幅や胸も広ろうなったし。
何よりも、階段から落ちゃげようとした、私ば受け止めてくれたよね」
そう言えば、来て初日に。
妙に落ち着きが無かった彼女が、家の階段から落ちようとしたのを、受けて止めた事があったなあ。
「私ね、陽ちゃんと一緒に暮らせるって聞いて、喜んどったと。
弟んごたる子と、仲良〜〔仲良く〕出来ると思っとったとばってん。
久しぶりに会った陽ちゃんは、いつの間にか“男の子”になっとるとけん。
私、ビックリしたったい」
そう言って、僕の首に巻き付いた腕に力が入り。
その所為で僕の後頭部が、柔らかい物に更に沈んでいく。
「ねえ陽ちゃん、私とずっと一緒に居りたかね〔居たい〕?」
「……うん、居たい……」
「うふふっ、私もばい〜♪」
(すりすりすり〜)
「ちょ、ちょっと……、苦しいよ〜」
僕の答えを聞いた、ゆき姉ちゃんが。
今度は体を少し落としながら、僕の頭に頬ずりをする。
首が締まり、頭が揺れて苦しい。
とても苦しい中、ゆき姉ちゃんとの事を考える。
来るまでは、昔の様に、仲が良い従姉弟のままで居られると思っていた。
確かに、昔みたいに、仲が良いままではあった。
しかし、僕の思いと姉ちゃんの話を聞くと。
お互いの思いは、昔みたいな従姉弟のままじゃ無くなっていたのだ。
「(これから、どうしようかなぁ……)」
それに気付くと、僕はこれからの、二人の関係をどの様にするかを悩み始める。
このまま仲の良い従姉弟のままでいるか、それとも一歩踏み出すか。
「(はあ〜……)」
目の前には、広々とした有明海と、雄大な雲仙が見えるが。
その光景に集中できない。
ゆき姉ちゃんに、抱き付かれている所為もあるが。
これからどうしようかと、思い悩んでる為である。
こうして僕は、目の前の景色を上の空で見つつ。
色んな事を考えていたのだった。