自動車概論
自動車、これはもし導入できればまたとない力となるだろう。小回りが効いてしかもそこそこ大量の物資を運ぶことができる。大気汚染?どうせそんなものが問題になる頃には主人公は生きていまい。そんなものは考慮の外で構わない。
さて、自動車の問題点というならば高い工作精度や組みつけ精度を要求されるところである。しかも何よりその部品の数が数えきれないほど多いことである。内燃機の場合エンジンだけで恐るべき数になる。しかもシリンダやそれを支えるシリンダブロックに求められる強度がどれ程大きなものになるかというと私には想像がつかないくらいである。エンジンを吊り掛ける訳にも行くまいからエンジンと車軸を繋ぐシャフトは要るだろうし、そもそも内燃機関のトルク曲線と、実際に必要なトルクの曲線が異なるのであるから複雑な減速機構などが必要になるだろう。電気車ならその点は解決し得るか。
もとより自動車の歴史においてごく初期は蒸気駆動と電動が大勢を占めたという。概ね半々であったとの由。電気自動車が廃れた理由としてバッテリーが大重量になりすぎるという問題があったからである。その辺異世界のなぞ技術でチョイとできればよかろう。車体全体やサスペンションなどまだまだ技術的障壁がないとは言わんが、内燃機を扱うよりも格段にハードルは低くなるだろう。
蒸気駆動というとなかなか説明が難しいのだが、スタンレースチーマーという極めて近代的で優れた自動車も存在する。
そもそも蒸気自動車と聞いて多くの人が思い浮かべるであろう、蒸気機関車みたいなボイラにでっかい弾み車がついている巨大なものは、あれは本当に厳密に自動車とは言いがたい物体である。あれは原型が『ポータブルエンジン』というものである。車輪がついていてどこにでも移動させて使える蒸気機関な訳であるが、移動手段が畜力に依ったわけである。それをだれかが自走させたのがみんなが蒸気自動車と聞いて多くの人が思い浮かべるであろう『トラクションエンジン』なのである。あれは自走するし牽引機材としても使えるし弾み車から車軸に伝わるベルトを外して外部の別のものに接続することで動力を取り出せると言うもので、『自走する汎用蒸気機関』とでも定義するべきものだ。
それに対し、小型な機関を搭載し走れる車両もいて、たぶん普及させたいのはこちらだ。見た目としてはかなりモダンな自動車といってもよい。ボンネットに小型の立型ボイラを据え、燃料はガソリンだったという。ぶっちゃけ熱量が確保できれば燃料はなんでもいいと思うのだが。座席の下は水か燃料のタンクであったそうで、そこそこ使い勝手の良い車両であったそうだ。
蒸気機関の動力特性は電動機に近く、車両の要求する性能に近いものが出せる。よって減速機などは最初から必要としていない。まあ、内燃機関ほどではないが工作精度を要求するのが難点だ。
前項の畜力、今回の自動車にせよ、道の整備が主題になるだろう。道の整備に関しては時適に解説したい。本稿はあくまで自動車概論であるので、ここで筆をおくものとする。