輸送編序論
https://www.youtube.com/watch?v=JBIx4Ubdc3w
運輸省鉄道総局昭和23年作成『立ちあがる輸送』
国力とは輸送力であり、輸送力こそ国力である。前書きに添付した資料動画はそれをよく教えてくれる。いくら生産されようと消費地に輸送できなければ、そのまま腐ってゆくだけであると。(ただし公官庁が作成した動画なので少しオーバーにして予算を増やしたいという意図が見え隠れしていることは否めない)
いくら生産力が増強されようとも、それによって増えた物産は消費地に届かない限りはまったく存在しないのと同義である。そのまま朽ちてゆくか死蔵されるだけである。これではせっかく生産したものは報われず、その労力のほとんどは無駄になったといって差支えがない。
よって生産されたものは当然時適に輸送を達成されねばならない。輸送の経路は陸水空とあるが、さすがに空路は今回考慮に入れると話がまとまらないので省略する(筆者の趣味でないという点も否定はしない)。
陸運であれば、当然考慮にいれるのは馬かそれに準ずる生物である。いろいろ面倒なので馬を中心に記載する。特に記載のないときは馬とみなして良い。
まず駄載である。駄載とは鞍などに物資を縛着し運ぶのもである人は馬に乗りはしない。こういった作業に使われる馬を駄馬という。決してダメな馬という意味の単語ではない。荷車の通り得ない悪路ですら抜けられるので時と場合によってはこれ以上の手段がないこともある。ドイツ連邦軍の山岳兵なんか(ラバで)今でもやってるしこれは本当だ。馬であれば100kg前後を積載しえる。ロバやラバであればもっと積める。
次は荷車、あるいは橇である。これはより多くの物資を運びえるものだ。輓馬である。車軸のつくりや軸受にもよって積載可能重量が変わってしまうが、駄載よりは確実に多くの物資が運べるものだと認識してもらってよい。牛のほうが扱いやすいとか私は聞いたことがあるが、私は詳細を知らないのでそこは適宜調べよう。これは道の拡幅やある程度の整地を必要とする。それはそれで大工事であろう。道を作る、というだけでも話は作れるだろう。半分以上私の好んでいるサイトの『山いが』の世界になってはきまいか。それはそれで面白そうである。
これらには大きな欠点がある。どうしてもかさばる物資が必要となる。餌だ。わりかし餌はかさばるものだ。また糞害もあろう。
そして、あまり考慮にいれたものを見ないが自動車である。筆者のマイブームが『いすゞのトラック』を聞くことなのでこの章に取り入れる。
自動車はゴムのタイヤを持っているために勾配に強く、また小回りが利く。勾配としては基本的に8%までが基準である(基準を超えた道も存在し、それを走れることを鑑みればたぶんもっと登れる)。大物資を運べて便利であるが、これを安定して供給するのは高い工作精度を必要とし、高い精度の組み立て技術も必要である。内燃機であればなおさら。蒸気機関という外燃機関の場合はもう少し必要な精度は下がるが、それでも相当な技術力を要求する。
ついで鉄道である。筆者は鉄道技術者の端くれではある(見習いレベルだけど)から、これは大好きだ。鉄道には多くに利害得失がある。軌道が精度を要求するものであったり、勾配に弱かったり、何よりも大量の鉄を消費する。鉄は国家の根幹であるから、その振り分けが国家の死命を分けるといってもよい。
だが、軌道は偉大である。木製の軌条に馬車を走らせたとしても同じ馬で概ね4倍の重量は牽引できるのである。鉄製の軌条に鉄製のタイヤ(輪心は木製でも可)であれば30倍ともいわれる。木製レールは破壊著しいので鋳鉄の軌条を用いて鋳鉄のタイヤをもってすればいいようにも思う。そして馬車軌道なら結局糞害や餌の問題はなくならないがより多くの物資を運べるのであるから、それでペイしえると推測する(結局長さによるとも思うのだが)。
機関車が作れる国家であれば機関車を使用したほうが糞害も減り効率的であるのは言うまでもない(鋳鉄のレールは破壊するのでその場合鋼のレールを要する)。
次は水運である。輸送の王様である。私はこれほど高効率な輸送手段を知らないのである。千石船、好きなのである。海や川があればこれ以上の方法ない。川がないなら運河を掘ればいいのである。運河の建設残土で台場でも作れば国防力増強にもなって一石二鳥であろう。内政のおあつらえ向きな手段である。船着き場だって作れるし山だって越えようとしたら越えられる。一例としてはパナマ運河があげられ、その方式を閘門式という。筆者の知る限りよっぽどの急勾配でもなんとかなるのが運河である。あ、滝はご勘弁を。
次回からはさらに細かくそれぞれの項目を追うつもりである。畜力は沼、だ。