望むのは常磐色のレクイエム
気がついたら吸血鬼になっていた。
「な、どうしてこんな所に魔王が……!?」
気がついたら怠惰の魔王と呼ばれていた。
「貴女、私のモノに成りなさい」
気がついたら邪神の配下だった。
「嘘でしょ……なんで、吸血鬼として在り続けられるの……?」
気がついたら直接日光を浴びても弱体化しなくなり、吸血しなくても生きられるようになっていた。
「へぇ、あんたが最古の吸血鬼かい?」
気がついたら私以外の生物が滅んでいて、新しく生き物が生まれていた。
「どうか、私たちをお助けください!」
気がついたら神と崇められていた。
「あなたの、名前、は……?」
そうして、君に出会った。
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「んー……」
ぶんやりと微睡み、部屋の三分の一は占領しているベッドへ深く沈み、布団を掴んで丸まり込む。私の体温で暖かくなった寝具が心地好い。
ぐっすりと眠るのも、うとうとと微睡むのも好きだ。今では睡眠以上に好きなことができたけど。
「リーア、起きて」
聞き慣れた声が耳に届き、布団を捲り上げられる。
ゆっくりと瞼を上げ、青銀の瞳に吸血鬼の原始にして真祖の証たる黄金の瞳が映り込んだ。
存分近い所でニコニコと柔らかな笑いを浮かべている紅髪の男の整った顔をぼんやりと眺め、意識が覚醒するのを待つ。
「……おはよう、紫宛」
「おはよう」
ふぁ、と欠伸を零した後、むくりと起き上がり、這い這いの体勢でベッドの上に座っている紫宛の脚の間へ移動して、後頭部を紫宛の方に向けてから、ぺたりと座り込む。
紫宛がぼさぼさな長い金髪を解かすのを感じ、日課と言えることが果たされたことで、どうしようもなく安堵する自分に、随分と変わったなあ、と考え、まあ良いか、と自己完結した。
「はい、終わったよ」
「ん…ありがとう」
「どういたしまして」
紫宛に抱きつき、抱きしめられ、ふふ、と笑みが零れた。
「リーア、どうしたの」
「私、今とっても幸せだよ」
返事は無いけれど、愛おしげに頭を撫でられた。
安息を。安寧を。安眠を。平穏を。そして、なによりも心地良く、落ち着ける紫苑の傍に在ることを。
私が望むのは、それだけだ。




